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ケーキを作ろう

誤字脱字の指摘、大変助かっております。

 次の日、朝からサラとドロアーテに行く。

「美味しいお菓子を作ってやるから待ってろ」

 そう言って、付いて行きたがる女性陣を抑えた。


「マサヨシ様と買い物に行くのは初めてですね」

 大きな買い物かごを持ったサラが居た。

「そういやそうだなぁ。扉のテストで木漏れ日亭までは行ったことがあったけど、そこから外にはいかなかったな」

 木漏れ日亭行きの扉を開ける。

 庭に出るとルーザさん。

「あら、お久しぶり」

 ニコニコ顔だ。

「こちらこそ」

「お買い物?」

「甘酸っぱい果実が欲しいと思いまして」

「また何か作るのかしら? また料理を教えてもらえると助かるわ」

 木漏れ日亭はオムレツで大繁盛している。もう一品ってところなんだろうな。

「それはまた今度。それじゃ行ってきます」

「おば様行ってきますね」

 俺とサラは市場に行った。


 市場に行く道すがら、サラに質問してみた。

「サラ、お前『ニャ』って言わないけど、猫の獣人じゃないの?」

「ああ、よく間違われますが、私は獅子族ですね」

「獅子族?」「猫の獣人の上位と言われています。似ているんですけど尻尾の先に房のような物が付いているのです」

 尻尾をフリフリさせ、その先にある房のような毛の玉を俺に見せた。

「ふーん、ミケとは違うわけだな」

「そういうことになります」


 ちょうど店に着いたので、

「爺さん、お久しぶり」

 と俺は食材売りの爺さんに声をかけた。

「おお、嬢ちゃんと一緒に来た若いのか……ひさしぶりじゃのう。ありゃ、その子とも知り合いか?」

 腕組みで仁王立ちの爺さん。

 サラもここで買っているのかな?

「ああ、俺が主人ってことになっている」

「ほう、それで儂の店に何か用か?」

「デザートに使えるような甘酸っぱい果実が欲しいんだ」

「果実かぁ」

 顎に手を当て考える爺さん。並んである商品を漁ると、

「これなんてどうだ? ウンシュと言う果物だ」

 と俺に見せてきた。

 見た目はミカン。オレンジ? 

「試食させてもらっても?」

「ああ、食ってみろ」

 ウンシュの実を剥くと、そのままミカンだった。一房食べると甘酸っぱい。

「美味いねコレ、十個ほど貰おうか。他にないかい?」

「これはフィコン」

 おお、イチジクっぽい。試食させてもらうとそのものだ。美味い。

「これも貰うよ」

「十個で良いか?」

「ああ、それでよろしく」

 ありゃ、これって……イチゴだよな。

「これは?」

 爺さんに聞いてみると、

「ゴッペって言う実だなぁ。これも甘酸っぱいと言えば甘酸っぱいんだが、酸っぱいほうが強い。今は旬でな量が採れすぎて困ってるんだ。それに日持ちがせずにすぐに痛んでしまう。知り合いが買ってくれと言って安く仕入れたものだ」

 と困った顔で答えた。

 見た目イチゴが大きな箱一杯。試食しても味はイチゴ。ちょっと小ぶりだな。

「爺さん、それ全部くれよ」

 売り場一杯のイチゴを売ってくれと言われて焦る爺さん。

 売れると思っていなかったんだろうなぁ

「何に使うんだ? こんなに一杯」

「内緒だよ。全部でいくら?」

「銀貨一枚だな」

 爺さんは言い切る。

「そんなに安いのか?」

「そりゃそうだ、ただの果物だけだぞ? これ以上高くてどうする。儂としてはゴッペの在庫処理できてよかったよ」

 俺は爺さんに銀貨一枚を渡すと箱を収納カバンに入れた。

「ありがとう、これで帰るよ」

「こちらこそ助かったよ」

 俺とサラは爺さんの店を離れる。


 俺は扉を出し家と繋ぎ調理場へ帰った。

「マサヨシ様、何でゴッペの実なんかを。確かに甘いものもあるのですが、酸っぱいもののほうが多いんです」

 心配げにサラが聞いてきた。

「果物が甘くないといけないわけじゃないんだ。もう砂糖が手に入ったから、甘いものは準備できるだろ? だから甘いものと相性がいいモノを探したんだ」

「だから、わざと酸っぱいものを?」

「んー、欲を言えば甘酸っぱいほうがいいけどね。さて、お菓子を作ろう」


 俺はスポンジケーキを取り出そうと棚を開ける。

 あれ? 五つあったはずなのに四つしかない。

「朝にはあったよな……」

「どうかしたのですか?」

「んー、五つあったのに四つしかない」 

 ふと見ると、フィナとマールとクリスとアイナ、リードラにイングリッド、そして、ミケも居る。

 ばつの悪そうな顔……。

「紅茶のお茶うけにしました」

 マールが言う。

「これ食い過ぎると太るやつだからな」

 まあ何食ったって太るもんは太るんだが。

「「「「「「えっ(にゃ)」」」」」」

 焦る女性陣。

「まあいいけど、ほどほどに」

「「「「「「はい(にゃ)」」」」」」

 ホッとする女性陣。


 スポンジケーキのうち二つを収納カバンに入れる。

 残り二つで製作開始。

「サラ、フィコンの皮を剥いててくれ、できたら薄切りにしておいてくれないか」

「はい、マサヨシ様」

 フィコン(イチジク)の下処理を始めるサラ。

 俺は、ウンシュ(ミカン)の皮を剥き中の薄皮も外す。シロップとかに漬けたいけどそんなもの無いから今回はしない。

 俺はゴッペのヘタを外し実だけにする。そのままの物と薄くスライスした物に分ける。


「サラ、準備はできたか?」

「はい!」

 スライスされたフィコンが現れる。

 スポンジケーキを横に二分割し、ホイップクリームをたっぷり塗った後、その間にフィコン、ウンシュ、ゴッペを挟んだ。

 あとはゴッペで上面を埋める。

「白地に赤が映えます」

「綺麗だろ?」

「はい」

 結局ホイップクリームのゴッペケーキを二つ作った。

 振り返ると……スプーンを持った七人。

「まあ、俺も食ってみたいし仕方ないな」

 ウンウンと頷く七人。

「じゃあ、切るか」

 俺を除いて八等分して皿に乗せ皆の前に置いた。

 俺は横から摘まめばいい。


「じゃあ食べてみて」

 俺がそういうよりも先に、スプーンでケーキを食べ始める女性陣。

 無言である。ただ皆のスプーンは進む。

 結局俺は摘み食いさせてもらえなかった……残念。

 そして、食べ終わった後の一言は皆、

「おいしー!」

 だった。

「イングリッド、これ売れるかな?」

 俺は聞いてみた。

「売れるも何も、王宮で独占したい位です。これだけで外交のカードになるかも」

「そりゃないでしょう?」

「いえ、国の外交を担う人は男性が多いけど、連れ合いや娘を連れてくることが多いのです。その女性たちへのカードとしては最強でしょうね」

「こんなのもあるのだが」

 プリンも出す。今回はクリスとリードラとイングリッドだけだ。

 ホイップクリームを乗せさらにその上にゴッペを乗せる。

「甘くてプルンとして美味しい。ゴッペがアクセントになって、何なんです?これって」

「まあ落ち着け、イングリッド」

「これも売りたいのですか?」

「売れるのなら問題ない。俺が稼がなくてもこの家が動くのが理想だからなぁ」

「生産量はどのくらいでしょうか?」

「どのくらいだろう、キングの群れと、牛乳……ああグランドキャトルの乳な……この量次第じゃないかな。砂糖の量も関係するね。だから、シュガーアントにも頑張ってもらわないと。まあ、材料さえそろえばどちらも作るのは簡単だからな。材料は俺の所にしかないけど……」

「少量生産で付加価値をつけるといいですね。売るのはオセーレとセリュックぐらい?」

 興奮冷めやらぬイングリッド。

 その間黙々とプリンを食べるクリスとリードラ。

「まあ、そのくらいで良いんじゃない? 今のところ数も作れないし……知名度もないし」

「価格はどうしましょう?」

「その辺はわからないなぁ」

「任せておいてください、お父様と相談してみます。このお菓子でここが自立できるぐらいの利益を上げてみせましょう」

 そう言って、オセーレ行きの扉へ歩いていくイングリッドだった。


「そんなにすごいの?」

 クリスに聞いてみる。

「マサヨシ、このお菓子を手に入れることができるのは、魔族の国の王宮かノルデン侯爵の領都か、あとはバストル家が手を回して何とかってところでしょ?」

「まあ、今の流れだとそうなるな」

「今までにないお菓子がそこでしか手に入らないとなるとどうする?」

「伝手を使って買う?」

「そう、伝手を使うって事は弱みができること。外交の鍵にさえなりうるの。最悪ここに襲ってくるかも。まあ、ここに居る魔物も人間も過剰戦力だから襲われる心配は無いわね」

「そりゃ面倒だね。ただ食いたかったから作っただけなのに」

「イングリッドが言ってたでしょ。お父さんは妻や娘に弱いの」

 俺と一緒か……。


「さて、サラ、ゴッペのジャムを作るぞ」

「ジャム?」

「これも甘味。そうだねパンとかに塗ると美味しい。酢ってあったっけ?」

「はい、ありますけど」

「だったらいけると思う。サラ、ヘタ取るの手伝ってくれ。お前らもケーキ食ったんだから手伝えよ」

「「「「「「はーい(にゃ)」」」」」」

 さすがに八人でやれば早い。すぐにヘタは取り終わった。

 とりあえず程々のゴッペを鍋に入れ、その半分程度の砂糖を入れる。

 そして鍋の中で軽く潰しゴッペ果汁を出した。。

 過熱を始め暫くすると沸騰してくるので、酢を入れる。これはワインビネガーっぽいな。いける? 

「サラ、焦げ付かさないようにな」

「はい!」

 言わなくても火加減を調整するサラ。

 俺はコップに水を入れ、ジャムをそこに滴下させる。

 ん、問題ない。ジャムになったね。

 俺は鍋からジャムを小皿に取り、パンに付けて皆に食べさせた。

「美味いだろ?」

 女性陣がコクリと頷いた。

 俺は一部を小瓶に取り、残りを大きめの瓶に詰め収納カバンに入れる。

 背中に気配を感じた。

「お前ら……ジャムは単体で食べる物じゃないからな」

 俺は振り返らずにスプーンを持って小皿と小瓶へ向かおうとする女性陣に注意するのだった。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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