ケーキの材料を作ろう
誤字脱字の指摘、大変助かっております。
グランドキャトルからの搾乳量が増え、過剰な状態になりつつある。
ボリスさんと子供たちの技術が上がったって言うのもあるのだろう。
うちのグランドキャトルは魔力をよく吸った草を食べているので魔力が乳にも内包されているらしい。「魔力が高いものは腐り辛い」ということで、何とかもっている状況である。
グランドキャトルの乳……もう牛乳だな……の入った容器(銀製)を眺め、生クリームの製造を決意した。
蓋を開けると既に脂肪が浮いている。こいつを掬い取れば生クリームになるとうろ覚えではあるが覚えていた。
遠心分離機を作れば効率は上がるらしいが、どうすればいいのかまではわからない。
更に生クリームを攪拌して脂肪分を固めればバター。
残った水分は水分を抜けばスキムミルクだったっけ。
そのまま加工してチーズも欲しい、酒のつまみにピザ……。
残った水分がホエーだったっけ? 飼料に混ぜると家畜にいいとか。
うん、広がる広がる。
俺は浮いたクリームを掬い別の容器に入れた。
「おぉ、結構あるねぇ」
牛乳容器一本分、約二十リッターぐらいかな?
俺は収納カバンに入れた。
牛乳容器に残ったものは、
「スイ、容器の中から水分だけ分離できる?」
「簡単ですぅ」
スイの返事と共に容器から水球が飛び出した。
「これはどうしますぅ?」
「池にでも捨てておいてくれ」
「了解ですぅ」
水球は池の方へ飛んでいく。
容器の中には粉体が残っていた。これがスキムミルクなのだろう。
牛乳容器の一つにそれ集め、これも収納カバンに回収しておく。
家に戻り収納カバンから生クリームの入った牛乳容器を出すと、サラが寄ってきた。
「マサヨシ様、これは何ですか?」
「ん? これはな、生クリーム。舐めてみる?」
俺は容器の蓋を開けた。
「いいんですか」
「ああ、舐めてみろ」
サラはスプーンで掬い舐める。
「あっ、凄い。乳の風味が濃いです」
「もう一加工するとバターが出来上がる。この二つを使うと、美味しいお菓子ができるわけだ」
サラの耳がピクリと動く。「お菓子」に反応したようだ。
「作ってみる?」
「はい、作ります」
サラは即答した。
俺は生クリームの容器から三分の一ほどを空の牛乳用の容器に移し、その容器を振った。しばらくすると手ごたえが変わる。固形物と液体に分かれた感じ。
中の水分を抜き、出来上がった固形物。つまりバターを出す。
「菓子を作る」と言って、いきなり容器を振り出した俺にびっくりするサラ。
「これが必要なんだ」
黄色い塊のバター。
「サラ、オーブンを予熱しておいてくれ」
「はい!」
俺は、卵に砂糖を入れ攪拌する。
無駄にステータスを駆使し攪拌する。一応飛び散らないように気を付けて……。
すこし温めたほうが良かったはずなので、エンにすこし温めてもらう。
人肌程度?
薄力粉はわからんので、家にある小麦粉を混ぜる。
更に温めて液化したバターと混ぜる。これはヘラを使ってね。
ケーキ皿などない、だから深めのスープ皿に紙を敷きそこに生地を入れる。
オーブンペーパーなどないから紙を代用だな。
トントンと軽く何度か落とし中の空気を抜く。
「サラ、焼くぞ」
サラは俺から皿を受け取ると焼き始める。
火加減は俺よりサラのほうが良く知っているだろう。
なんせ、火の精霊付きである。
暫くすると中から膨らんだスポンジケーキが現れた。
卵の大きさが大きさだけに、出来上がるスポンジケーキの量も多い。一個で作ったのだが、「卵液を分けておけばよかった」とチト反省。結構デカめ五枚分のスポンジケーキができた。
スープ皿からスポンジケーキを取り出し、別の皿に置いておく。
「このまま食べるのですか?」
「いや、食べるのは明日だな。冷やしてからになると思う」
俺は調理室の棚にスポンジケーキを仕舞った。
次はホイップクリームだな。
生クリームに砂糖を入れ、再び攪拌。スイに頼んで容器を冷やしてもらう。
今回もステータスをフル活用で角が立つほどに攪拌した。
今回は早いね。
「サラ、食べてみるか?」
「はい、ぜひ」
俺は先日作ったプリンを二個出し、その上に生クリームを乗せる。
「ほい、食ってみろ」
サラが口に入れた瞬間。
「あっ、凄い、前より美味しい!」
「だろう? プリンにホイップクリームは合うんだ。残りは明日使うから収納カバンに入れておく……な……」
振り向くと既にスプーンを咥えた、フィナ、ミケ、マール、そしてアイナにエリス。
ああ、甘い匂いに集まってきたか。
「フィナ、ミケ、マールは三人で一つな。アイナとエリスは一つづつ」
「「えっ!」」
「ニャッ!」
お前ら先に食ってるだろ?
「サラは前に食べています!」
フィナが食いついてくるが、
「サラに不味いプリンを作ってもらうつもりか? 俺よりも美味いものを作るぞ? だから、色んな味を知っておいてもらわないとな」
「うぅ」
フィナはぐうの音も出ないようだ。
アイナとエリスの前には一つ、三人の前にも一つプリンを出し、適当にホイップクリームを乗せる。
「マサヨシ、美味しい」
「お父さん美味しいですぅ」
と、ニコニコ食べる組と、
「ご主人様、美味しい」
「美味しいのニャ」
「美味しいのです」
「「「でも、少ない(のニャ)!」」」
泣きながら食べる組に分かれた。
満足な二人と、食べ足りない三人。
俺は一個食うけどね。
プリンが少なくなったから後で作ろう。
「サラ、すっぱ甘いような果実ってある?」
「いくつかありますが……」
「お菓子の材料として必要だ、あとで買いに行こう」
「はい!」
嬉しそうに飛び跳ねるサラであった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。




