冒険者ギルドへ行こう……再び
次の日になり、俺たちは、宿で朝食を食べた。別メニューで弁当を作ってもらい、冒険者ギルドへ向かった。
両開きのスイングドアを開け、中に入る。おー湧いてる。受付には人・人・人。依頼を受けて動き出すのが朝なんだろうな。
「すごっ、エルフだぜ」
「銀狼族、こいつも上玉だ」
「ちっこいのもいいねぇ……ハアハア」
ああ、美女いじりは鉄板なのね。おっとアイナにまで……。ガチのロリコンが居たか。うーん、なんかイラっとする。俺は薄めの殺気を全体に飛ばした。喧騒が急に静かになる。剣を構えるものまでいた。
クリスがこっちを見て嬉しそうに苦笑いする。フィナとアイナは「にー」って笑って、俺を見上げる。ちと照れる。だから、フィナとアイナの頭をワシワシと撫でた。
「とりあえず、受付しないとな……」
クリスとフィナには適当なところで待っていてもらい、アイナと受付に近づく。殺気の中心である俺が動くと、見事に進路から冒険者が俺を中心に分かれた。十戒か?
俺とアイナが椅子に座ると、俺は殺気を消した。
「この子を冒険者登録したいんだが、年齢制限とかは無い?」
リムルさんは平然と業務を行う。
「あなたは昨日のマサヨシ様ですね。冒険者登録には年齢制限はありません。しかしソロで動くには、12歳以上という年齢制限があります。あと、パーティーを組んで依頼を受ける場合にもリーダーは成人でなければいけません」
「説明ありがとう。それではこの子の冒険者登録をお願いします」
「それではお名前を」
俺が代筆する。そしてカードを返した。
「アイナ様ですね。この水晶に手をかざしてください」
アイナが、水晶に手をかざす。水晶が輝きだす。明るすぎて目が開けられない。
「ピシっ」
ピシ? またか? 徐々に輝きは陰り元の水晶に戻った? あっ、真ん中に一筋のヒビが。
「はい、これがアイナ様のギルドカードになります。これは、街に入る時など、身分証明になります。ギルドカードの発行は初回のみ無料で、再発行には銀貨3枚が必要になりますから、大事にしてくださいね。あと、あなたのランクはFとなります。依頼をこなせばF、E、D、C、B、A、S、と上がります。あとは、マサヨシ様にお聞きください」
あっ、大幅に端折りやがった。
「ところで、受付嬢さん、パーティーってどうやって組む?」
俺は疑問をぶつけてみた。
「それは、パーティーになる者同士で行動していれば、自動的になります」
ほう、オートなのね。
「ありがとう。勉強になりました」
そう言うとカウンターを離れた。
クリスとフィナに合流して、早速アイナのステータスを見せてもらう。
「ステータスオープン」
アイナの小さな声
アイナ 女性 8歳
HP:7837
MP:2438
STR:A
INT:S
AGI:B
VIT:A
職業:姫(聖女)
所有者:マサヨシ
冒険者ランク:F
「8歳でINT:Sってすごいんだろ? それで、水晶にひびが入ったか」
水晶はS以上でひびが入るようだ。何か、ガチャのエフェクトっぽいな。
「この歳でSは居ないんじゃない?」
クリスはヤレヤレって感じだ。
「マサヨシ様に引っ張られたのが大きいです」
「フィナが言う通りだろうなぁ。上書きした後、抱き着かれたとき結構強かったから」
「そこよりも姫って何? 聖女って何?」
「クリス、俺は知らんよ。俺と同じ固有職業だろ? 下手に人には見せられないな。面倒の元」
「「そう(です)ね」」
コクリ
アイナは、ステータスは出さない、職業は見せない……だね。
ん? 魔法は?
「アイナ、何か魔法使えるようになった?」
コクリ
「威圧、ヒール、ミドルヒール、ハイヒール、フルヒール、キュアー、プロテクション、ターンアンデッド、リザレクション、多分使える。呪文が思い浮かぶから」
小さな声で言う。
「姫な部分が威圧? で、聖女な部分が回復系かな?
蘇生魔法が使えるなんてすごいぞ!」
興奮しながら俺は言った。でも、クリスがアイナを撫でながら言いだした。
「マサヨシ、誉めるのは良いけど、蘇生魔法なんて使ったら聖女ってばれるわよ? それこそ厄介ごと。私たちが姉妹じゃ居られなくなる」
「そんなこと私は嫌です!」
珍しくフィナが声を荒らげる。
「だから、アイナ。下手に魔法を使っちゃだめ。私たちとパーティーを組んでいる時ならいいけど、他の人が居る時は、よく考えて。もしマサヨシか私、フィナが居たら、確認してから使うのよ?」
アイナがコクリと頷く。
さすがファンタジー、蘇生魔法があるのか……。興奮していたんだろうな、色々見えなくなっていた。クリスに感謝だ。修正、ステータスは出さない、職業は見せない、魔法も見せない……だね。
「でもアイナ、いつ使えるようになったんだ?」
「隷属の紋章書き換えしたとき、何かが出そうになって、冒険者登録して頭がすっきりして魔法が浮き出てきた」
ん? 隷属の紋章に、制限がかかっていたのか? 職業を使えないように強制? 元々の主人が誰なのかわからないが、あまりいい性格じゃないねぇ。とりあえずは、紋章の上書きで制限や強制はなくなったみたいだからヨシだね。いつか接触があるだろうけど、それまでは様子見るしかないんだろうな。




