家に帰ると
誤字脱字の指摘、大変助かっております。
神馬を厩に繋ぎ、俺とクリス、そしてアグラで家に戻った。
既に朝と言うには遅い時間かな。
ん? リビングに全員集合。
「ただいま」
俺がリビングに居るみんなに挨拶すると、皆から、
「お帰り」
という声があった。そのあとカリーネが、
「あらクリス。手を出してもらったのね」
と、声をかける。
なぜわかるカリーネ。というか、経験者だからわかるのか?
カリーネの言葉が出た瞬間、ピキンと空気が張り詰める感じがした。
嫌な気配を感じたのか、アグラが俺の肩から飛び立ち、二階の手すりに止まる。
そしてクリスは焦っているのか、ぎこちない動きをする。
まあ、顔も赤くなっているから、バレバレなんだけどね。
「クリス、それじゃ肯定しているようなもんじゃない」
カリーネが笑う。
更に赤くなるクリス。
「で、どうなのマサヨシ」
「ああ、手を出した」
嘘を言っても仕方ない、割り切って言った。
「その辺のことを聞かせてほしいんだけど」
ジロリと俺を見るカリーネ。
周りが何も言わないのは、カリーネに全て任せているのかなと……。
「クリスのオヤジさんには許可を貰えた。『部屋を準備してある』と言われて準備してあった場所がクリスの部屋だったわけだ。まあ、そのあとは流れだな。俺がどんな感じだったかはクリスに聞いてくれ、女性の感覚は俺にはわからない」
そう言って、リビングを離れた。
要は逃げた。
俺が離れたあと、色々な情報共有のため、皆がクリスに群がる。
頑張れクリス。
骨は拾ってやる。
庭に出て周りを見回す。グランドキャトルの世話をする子達が見えた。コカトリスたちは牧場内で餌をついばんでいる。
それを覗いているとアクセルが駆け寄ってきた。
「おう、アクセル。授業は?」
「ヘルゲ様の授業が終わったところです。マサヨシさんはどうしたのですか?」
「家から逃げ出してきた」
「逃げてきた? なぜです?」
「いろいろ聞かれそうだったからな。面倒だから逃げてきた」
クリスという人身御供は置いてきたが。
「ズルいですね」
「そうだな、ズルいな」
「ズルいってわかっててなぜ?」
アクセルは不思議そうに聞いてきた。
「ズルいってわかってても面倒なものは面倒。あの女性陣相手に言い勝つ自信はないよ。負ける勝負に挑む気はない」
「マサヨシさんは強いじゃないですか」
「強いって言うのも色々あってな、俺の場合は肉体が強いの。口は弱いから女性陣に負けちゃうわけだ」
「情けないですね」
おっと、アクセルに言われちゃった。
「ああ、情けないな」
「でも、目指すならマサヨシさんのような男になれとヘルゲ様がいっていました」
ヘルゲ様なぜに俺?
「目指すならヘルゲ様みたいな人を見習った方がいいかもな。文武両道完璧超人」
「完璧超人」辺りで首をかしげるアクセル。
「俺は手を抜くのが好きだから、見習わない方がいい」
「でも、マサヨシさんの『程々に手を抜く』のは重要だとヘルゲ様が言っていました『あいつは動くときには動く。アクセルも目の前で見ただろう』とも……」
「多分メリハリがハッキリしてるってことだろう……。そこでも見習ってみて」
「ハイわかりました」
素直だねぇ、アクセル君。
結局俺が原因な訳だが、
「アクセル、母ちゃんに会いたいか?」
と聞いてみた。
「もう二度と会えないだろうと母上には言われました。だから諦めています」
唇を噛み下を見るアクセル。
「……でも、会えるなら会いたい!」
アクセルは確かアイナより一つ下だから、七歳か八歳かそんなところか。
母ちゃん恋しいだろうなぁ……。
「手紙を書いたりはできるのか?」
「それもダメだと聞いています」
「ふむ、母ちゃんの誕生日はいつだ?」
「5月7日です」
「あと三週間ぐらいか……。プレゼント作っとけ。その日に会いに行こう」
「できるんですか?」
期待した目で俺を見る。
「ああ何とかする。ただこれは非公式だ。見つかったら怒られるだろうなぁ。だから『しーっ』だぞ」
俺はアクセルの前で人差し指を立て「しーっ」のポーズをした。
まあ、ヘルゲ様には言っておくか。あの人を巻き込んだ方が楽な気がする。
「はい、わかりました。準備しておきます。あっ次の授業はイングリッド殿下です」
そう言ってアクセルは走っていった。
イングリッド、お前もクリスに群がった口だが、授業の時間には間に合うように行ってくれよ。
そう思う俺であった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




