さてと
誤字脱字の指摘、大変助かっております。
エルフの王城の中俺は神馬を連れ、クリスと厩があると言う方向へ歩いていた。
アグラは右肩の定位置だ。
「神馬でこの城の中を走るなんてバカよ」
所々床石が割れ、蹄の形に抉れている。
クレイに任せれば直りそうだが、まあいっか。
「『急がないと』って思ってな……つまりお前に早く会いたかったんだよ」
俺はポリポリと鼻を掻く。
クリスはそれを聞くと俺の腕に抱きついてきた。
「ニヒヒヒヒ」
誰かの笑い声? が聞こえる。
ん、誰だ?
声のほうを見ると俺を見降ろす神馬。
お熱いねぇ……って?
たまにはいいじゃねぇか。
厩に着くと、クリスの神馬の隣に繋いだ。
「マスター、私はお邪魔だと思いますので神馬様たちと一緒にここに居ますね。ごゆっくりどうぞ」
俺の肩から神馬の背へ移動しニヤリと笑うアグラ。
そして二頭の神馬もニヤニヤしている。
へいへい……。
その後クリスのオヤジさんとの食事を行う。
その食事の間に結婚後のクリスの処遇を教えられた。
やはりクリスは王族ではなくなるようだ。
そして子ができたとしても王位は継げない。
理由は例の「エルフの純血」って奴だ。
混じり物はダメって事らしい。
まあ、俺は気にせんがね。
あと、精霊を返してほしいと言われたが、「俺が呼んだ訳じゃない」と言って突っぱねた。精霊とちゃんと付き合わない精霊騎士が悪い。
夕食を食べたあと、オヤジさんから俺の部屋を準備していると言われてたのだが、
「俺の部屋は?」
とクリスに聞くと
「あなたの部屋なんて準備してないわよ。だってあなたは私の夫になる人でしょ? 一緒の部屋じゃなきゃ」
とサラリと返してきた。
「そう」
内心焦っていはいたが、平生を装って答える。
オヤジさんも変な気を遣いやがって
「じゃあ、お前の部屋に連れて行ってくれよ」
「うっ、うん」
急に緊張し始めるクリス。
俺の手を引きクリスは歩きだした。
やめろ、こっちが緊張する。
そして、赤い扉の部屋に着くと、
「ここ」
と言ってクリスが戸を開けた。
天蓋付きのベッドは基本だな。しばらく使っていなかったはずなのに手入れはされている。なんだかんだ、あのオヤジさんクリスがいつでも帰れるように気にはしていたようだ。
クリスは魔光燈に灯を点ける。
ぼうっと薄明るく部屋が照らされた。
他にも魔光燈はあるのでもっと明るくできるだろうに……。
ふと、俺の背中に重みを感じた。
「どうかしたのか?」
「やっと、一緒になれる」
「そうだなぁ。色々あったなぁ。あれから一年も経ってないや」
もうなのか、まだなのかわからない……。
「だって、私が一番にあなたに出会って、私が一番にあなたを好きになったんだもん。抱いてもらうのも一番だと思ったら、結局手を出しもしない」
「ヘタレですまんね。でもあの頃は元妻のことを引きずってたからなぁ。まあ、それが終わっても、みんなの親にもちゃんと許可を貰いたかった」
そういう点で、もう俺に縛りは無いな。まあ、勝手に縛りを作っていただけだが……。
「もう縛りはないんでしょ? だから……」
「ああ、遠慮しないよ。さあ、精霊たち、覗き見は無しだ。しばらくこの部屋から出ててくれ」
そう言うと、
「僕はちょっと見たかったかな」
「私は興味あったんですぅ」
「見たい」
「わっ私は全然見たくないから」
と言って外へ飛び出す。
続いて精霊騎士からもぎ取った精霊たちも飛び出していった。というか、あいつら契約してないのに俺の所来てどうする。
俺は振り向くとクリスを抱き上げた。
「あっ」
ベッドに降ろすとドレスを脱がす、クリスの大事なところを隠すだけの姿……綺麗だった。
恥ずかしいのかクリスは備え付けの大きな枕で前を隠す。
俺は装備を外しベッドに潜り込み、
「おいで」
とクリスを呼ぶと、クリスが俺に抱きついてきた。
クリスも性奴隷として教育されていたということで、どうすればいいか色々知っていたようだが、俺のほうが良く知っていたようだ。
明るくなるころには疲れ果てたクリスが俺に抱きついて寝ていた。
二十二歳って若いなぁ。
俺、クリス、そしてベッドを洗浄魔法で綺麗にした。
王宮のメイドに「昨夜はお楽しみでしたね」って言われてもいかんしね。
まあ、クリスの声がデカかったからバレてるだろうなあ。
馬もフクロウも耳がいいからまたからかわれそうだ。
広いベッドで二人で寝るってのは今までになかったこと。
スースーと言う寝息を立てながら寝ているクリスを見ていた。洗浄魔法をかけているので、クリスの髪の毛はサラサラで朝日を浴びキラキラ輝いている。
今更だが美人だよなぁ。
クリスの寝姿を眺める。
暇なので尖った耳をツンツンと突っついた。
「うっ、うーん」
うっすらと目を開け、俺を確認すると。抱きついてくる。
そして手が息子を触る。
「だめ?」
「ああ、ダメだ」
「ケチ!」
「面倒だ。とりあえずこれで我慢してくれ」
俺はクリスに口づけをする。
するとクリスは俺の首に腕を回してきた。
俺とクリスはベッドを降り帰る準備をしようとするが、クリスの腰が立たない。
「お前、がっつき過ぎだよ」
俺は腰に手を当て治療魔法を使う。
「あっ、力が入る」
トントンと足を踏ん張るクリス。
「私が一番だから、ちょっと嬉しかった」
「はいはい」
まあ、俺も「クリスと一番にできればなあ」とは思っていた訳だが……。
準備を終わらせ朝食を食べ精霊を纏うとクリスのオヤジさんの所へ行く。すると、
「クリスティーナ、もう帰るのか?」
と聞いてきた。
「お父様、私の居る場所はここではありません。ですから居るべき場所に帰ります」
「お主も帰るのか?」
「ああ、俺も帰るよ」
「では、二人に報酬を渡さねばならんな」
「要らない。俺はクリスを貰った」
ふと思い出す。
「クリス、お前の母親はどこだ?」
「それは……。もうこの世には居ないの。病気でね……」
「そうか、悪いこと聞いたな」
「いいえ、いいの。もう心の整理はできてる」
「オヤジさん、フォランカの途中で古い貴族の別荘を見つけた。そこにはクリスにそっくりな顔をした女性の絵があったんだ。俺が持ってても意味がないから、オヤジさんに渡しておきたいんだが」
俺は収納カバンから館にかかっていたデカい絵を取り出した。
「そっそれは……」
「そう、お母様」
クリスが言う。
「ちょっと痛んではいるが、まだなんとかなるだろう。クリスへの報酬としてこの絵を修復してまたちゃんと飾っておいてもらえないか? クリスもそのほうが喜ぶだろうから」
俺は柱に絵を立てかける。
「それじゃ、俺は帰るよ。クリス行くぞ」
「はい」
俺たちは絵を押し付けオヤジさんの前を離れた。
「クリス、すまなかったな。勝手に報酬を決めた」
「いいの、あの絵があれば、ここに来る理由ぐらいにはなるでしょ? ありがと」
厩の前に行くと、
「「ウヒヒヒヒ」」
と神馬達が笑う。
「やっぱり昨夜はお楽しみでしたね」
とニヤリとするアグラ。
「良く知ってるな、昨夜一晩クリスを十分楽しんだぞ」
と笑って平然と言い返してやった。
神馬達とアグラが唖然とする。
俺のこういうリアクションを予想していなかったようだ。
にしてもクリスは真っ赤だ。
こういう時は割り切るに限る。
「もういいか? お前ら帰るぞ」
俺はデカい扉を出し皆で家に帰るのだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




