三姉妹
「はあ、やっと私の番」
クリスが割り込むようにフィナとの間に入ってきた。
「はいはい、やらせていただきますよ。お嬢様」
そんなに楽しみかね。
俺は温風を出しながら、クリスの髪をブラシで漉く。こいつの髪が一番長いか……。
「なっ、なにこれ! こんなの初めて! 気持ちいい!」
クリスが、身もだえながら言う。
「クリスさん、マサヨシ様は凄いでしょう?」
コクコク
アイナも同意して頷いた。
「お前ら、外から聞いたら、怪しいことしてるように聞こえるからやめろ! 恥ずかしい。しかし、そんなに喜ばれても適当にブラシをかけているだけなんだがなぁ」
俺は困って頭を掻く。
「あっ、忘れてた、そこのコップに冷水入れておいたからフィナ飲んで。風呂上がりだから、気持ちいいだろう?」
「私が一番にもらった」
アイナがボソリと言う。
「次は俺だな。コップは使い回しだから、汚いと思ったら洗ってな!」
俺がそう言うと、
「いいえ、マサヨシ様の後なんてご褒美です。洗わずにいただきます」
フィナはコップを見てニコリと笑い、そしてコクコクと喉鳴らしながら飲み始めた。
「お水がこんなに美味しいなんて!」
「だろ? 風呂上がりだからな。余計に気持ちよく感じるんだ」
「いいえ、マサヨシ様が飲んだ後だからです」
フィナは言い切った。
大丈夫か? フィナ。
クリスはブラシに撃沈しているのか、俺にもたれてぼーっとしている。うーんチラチラと見ちゃいかん物が見える。
「おい、見えてるぞ」
髪を漉きながら言う。
「んっ、うーん」
クリスは下着の隙間が見えるように動く。
ああ、こいつ見せてるな。
「アイナ、そこのタオル取ってクリスの胸にかけて」
「んっ」
さっとアイナが動き、クリスの胸にタオルをかけた。
「アイナ、ありがとう」
精神年齢が45歳とはいえ反応したらシャレにならん。
「ちぇっ、わざと見せてたのに」
やはりね。
「わざと見せるなら、やめるぞ?」
俺がそう言うと、
「えっ、ダメ、ごめんなさい」
クリスは謝ってきた。
「クリス、謝るなら余計なことするな」
俺は、クリスを叱った。
クリスの髪は長く、細く、時間がかかったが、何とか乾いた。温風でもゴワゴワにならず、しっとりとした髪のままだ。
「ふう、よし、乾いたかな? はい、クリス、これ飲んで」
冷水をコップに入れてクリスに渡す。
「ああ冷たい。これ美味しいわね」
「風呂上がりの冷たいものは、何でも美味しいのだ!」
俺は胸を張って言った。
俺は「そういえば」と思い出し、ゴソゴソと収納カバンから、バレッタを取り出した。
「はい、二人に髪飾り。クリスは黄色、フィナは銀色ね。これがあると纏めやすいと思うから使ってみて。俺はアイナにしたようなポニーテールしか知らんので、他のやり方は自分で考えてみればいい」
「あっ、ありがとう。私もポニーテールにしてくれる?」
「私もしてほしいです」
俺は、クリスの髪を梳き、後ろに引っ張ってバレッタで止める。
おっと、クリスは髪が長いから異国の剣士みたいだな。
フィナも髪を梳きバレッタで止めた。
フィナは普通のポニーテールか。でも、バレッタが銀髪に合う。
「よく似合ってるよ、アイナと一緒で三姉妹みたいだ」
「私が長女ね?」
「だったら私が次女です」
「私が三女」
種族が違う三姉妹か……。
「俺は、何だろう?」
ふと口に出てしまった。
「お父さん、後、夫」
アイナがぼそりと言う。
「おお、アイナ言い得てるわね。今はお父さんって感じ」
「そうです。お父さんです」
アイナの言葉に同意するクリスとフィナ。
「なら、お前らのお父さんで行こう」
アイナ、ナイスだ! 面倒臭くなくて良さそう。
「私の夫に一番になってね」
「私が一番です」
「一番、私」
三人が口々に言う。
いや、やっぱ面倒臭そうだ。はあ……。




