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オッサン三人

誤字脱字の指摘、大変助かっております。

 オッサン三人で酒を飲む。

 貴族のオッサンと、沙汰待ちのオッサン、隠れオッサンの三人である。

「やはり、儂は死ななければいかんかね」

 沙汰待ちのオッサンは貴族のオッサンに聞いていた。

 ストレートだね、沙汰待ちのオッサン。

「そうだろうな。お主は王殺しを目論んだ。やってはいかん事をやったんだ。仕方あるまい? お主が死なねば今後王殺しを目論んだ者の罪をどうすればいい?」

 貴族のオッサンがグラスを傾けた。

「今更だが、我が欲を操り切れなかったのが悔やまれるな。まあ、息子もあんな風にしてしまった。オークレーン侯爵の息子が何だと言うのか。親の威を借り振舞っておるのは知っておった。『次代のあいつに任せるよりは、儂がやってやろう』などと考えたのがいけなかったのだろうな」

 沙汰待ちのオッサンが持ったグラスがカランと鳴った。


「今代だろうが次代だろうが、やってしまえばオークレーン侯爵家など潰されていたよ」

 ニヤニヤしている貴族のオッサン。

「誰にだ?」

 おっと急に貴族のオッサンが俺の方を向くと、

「そこに居るだろ?」

 と、沙汰待ちのオッサンに言った。

「こいつか?」

「俺は手を出しませんよ? 今回はマールの事もあったしアイナの事もあった。それにイングリッドも殺されかけたでしょ? ああ、ラウラも拉致された。ヘルゲ様はついでだけど。だから手を出したんです。それでも証拠集めぐらいじゃないですか? 俺がやったの」

「儂がついでなのは余計だ! 今、国がお前の仲間に手を出したならどうする?」

 貴族のオッサンが聞いた。

「ああ、それなら潰しますね。国の機能を麻痺させるなら王様と数人の大臣辺りを殺せばどうにでもなるんじゃないですか? あと、成人して能力が高そうな後継ぎを殺せば、後継ぎ問題とかでボロボロになると思いますよ? それこそオークレーン侯爵様みたいな貴族が出張ってきて掻きまわすでしょ? で、いろんなところで跡継ぎ立てて内戦になるかな? この国がバラバラになるかもしれませんね」

 俺がそう言うと、沙汰待ちのオッサンは驚いて俺を見た。

「な? こいつが一番怖いんだよ。こういう考えができる奴に手を出したのが間違いだったんだ。無欲な強者に知らずとはいえ、手を出したお主が悪い」

 オッサンたち「こいつ、こいつ」とうるさいなぁ。

「儂は目の前の物に目がくらみ、ドラゴンの尻尾を踏んだのか」

「そういうことになるな」


「しかし、こいつ一人で国を相手にできるのか?」

 沙汰待ちのオッサンが聞く。

「できるだろうな、こいつの周りに居る奴隷はSランク冒険者より強い。ラウラなど比にならないぞ。その奴隷を統べるということは、それより強いということだ。あと、こいつはドラゴンを使役している。つまりドラゴンライダーだ。それこそ一軍に相当する。聞いておるのだろ? ゴブリンの大発生の始末をしたの者のことを……あれもマサヨシだ」

「ドラゴンライダーなど物語の話だと思っていたが……報告書にはあった」

「ついでに言うと容量無限の収納カバンを持ち、限定ながら瞬間移動も使える。知っているだけでこれだけある。要は欲のないバケモノなんだよ」

 バケモノ発言いただきました。

「俺も欲は有るよ? じゃないとこんなところで土地の開拓なんてしない。主に美味いものを食べたいって欲だけどね。あと、手の届く範囲が幸せになってくれるといいかなぁ。孤児院なんて言ってるけど、体のいい労働力確保だからね」

「マサヨシよ、それは迷惑が掛からない欲だろうに」

 貴族のオッサンが言う。

「そうだなぁ、極力迷惑をかけないようにはしているけどね」

「まあ、こんな感じで下手に手を出さなければ無害なんだよ」

 貴族のオッサンが沙汰待ちのオッサンに言った。

「結局儂はこの者一人に潰されたというわけか」

 寂しそうに酒を煽る沙汰待ちのオッサン。

「そうだな。そういうことだ」

 そう言って貴族のオッサンが酒を煽った。


「儂は王子に責任を取るところを、いくら権力があろうが間違ったものが辿る末路を見せねばいかんな」

 沙汰待ちのオッサンが言った。

「あの子が今後王子として生きていけるかわからないが、見せておいたほうがいいだろう。お主ができる最後の教えじゃないか?」

 貴族のオッサンが言う。

「教えか……。そうだな潔くしないとな」


「しかし残念だ。生き急がなければこいつに普通に出会い、ここで生きていけたのかもしれない」

「残念そうだな、俺はそのうちここに住むぞ。羨ましいか?」

「ああ、羨ましい。しかしお主も死ぬ前の男を苛めて楽しいか?」

「ああ、楽しいな。お主には何度も苦汁を舐めさせられたから余計だ」

「儂こそお主には苦汁を舐めさせられたぞ」

そして俺の方を向くと

「そこのお前にもな。今がその最たる例だ」

「俺ですか?そんなこと言われてもな」

「『苦汁を飲まされた』と言うわりには笑っておるな、オークレーン侯爵」

「ああ、酒が美味いと苦さが流れていく」

「ただの現実逃避でしょ?」

 と、俺がつぶやくと、

「痛いところをつくな。ヘルゲよ、こいつは性格が悪い」

 クククと笑う沙汰待ちのオッサン。

「儂の娘婿だが、確かにいい性格じゃないな」

 貴族のオッサンも便乗してきたが、

「お主もだろ?」

 と沙汰待ちのオッサンが返す。

「お主だってそうだ」

 そして貴族のオッサンも返した。

 結局同類なのかもしれない。

 二人がフフフと笑うと、過去にあった俺の知らないことを話し始める。笑いながら、時には怒りながら、あーだこーだと楽しそうに。

そして朝になる。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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