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買い出し1(調理器具を買おう)

誤字脱字の指摘、大変助かっております

 後ろからイングリッドの声がかかる。

「マサヨシさん、料理人を呼んでありますけど、どうします? 先に会いますか?」

 そう言えば、料理人と会う約束もしていたんだっけ? イングリッドの様子が衝撃的すぎて忘れていた。

 鍋とかフライパンとか料理道具とかも要るなら、俺んちに来てくれる料理人も一緒に行ってもらってもいいだろう。

「そうだな、先に会うよ、いろいろ聞きたいこともあるし」

「では私についてきてください」

 料理人に会うため先に行くイングリッドを追い、付いていった先は城の調理場だった。

 イングリッドが近くに居た料理人に声をかける。

「イングリッド殿下、呼んでいただければその場に参りましたのに」

 そこには、背が高くスラッとした魔族の男性が居た。長く伸びた髪を後ろに結び、白い調理服を着ている。

「この人が私の婚約者で孤児院を作ろうとしているマサヨシさん」

 イングリッドが俺を紹介し終わると、

「はじめまして、マサヨシと言います」

 と言って頭を下げた。

「この人が、この王宮の副料理長のエーリク。十九才って若さなのに腕がいいって有名なのよ。でも、『マサヨシさんが料理人を探してる』って言ったら、自分から手を挙げて志願したの」

「はじめまして、エーリクと申します」

 そんな偉いさんがなぜ俺んちに? 

「ところで、何で俺んちの孤児院の料理人なんかに志願したんだ? 王宮の料理長を目指せばいいだろう?」

 早速エーリクに聞いてみると、

「イングリッド殿下が城に戻られないからです。用事で城にいらっしゃるときも、食事を召し上がってあまり美味しそうにされないのです。イングリッド殿下にその原因をお尋ねしたとき、『サラの料理が美味しいから』とおっしゃいましたので」

 ということだった。

 サラの料理ってこんなところまで影響与えてるんだな。

「イングリッド、そんなこと言ったのか」

「だってサラの料理は美味しいんですから仕方ないでしょう?」

「比較対象は王宮の料理だろ?」

「でも、サラの料理のほうが美味しいの!」

 サラの腕は知らん間に王宮の料理長より美味いものを作れるようになったようだ。

「私は料理長より美味しいものを作る人物の元で修行がしたくなったのです」

 技術を求めている訳ね。

「サラは十二歳以下だぞ? 成人してないからな」

 あいついくつなんだろ。今度聞いてみるか。

「成人していなくてもいい! 美味しいものを作る方法を教えてもらえるなら、私はその人の下で働く!」

 エーリクは言い切った。

 まあ、そんだけやる気ならいいんじゃないか?

「じゃあ、エーリク。引越しはすぐできる?」

「その辺はイングリッド殿下に前もって言われていましたので、すぐにでも可能です。荷物もまとめてありますから」

「じゃあ、明日引越しって事で頼むよ。あと、向こうに行ったら五十人ほどの食事を作ってもらうことになるけど、どんなものが要る?」

「包丁は自分のものがあるので、フライパンと鍋のような調理器具があればなんとかなると思います。あと、強火力で火力調整の出来るコンロがあれば助かりますね」

 強火力のコンロなんて寄宿舎の方にあったっけな? 

「今から、イングリッドと孤児院用の買い物に行くんだ、ついてくるか?」

「いいんですか? なんかお二人の邪魔にならないか心配です。心なしかイングリッド殿下の視線がお厳しい……」

 イングリッドの目が据わり、エーリクに向かって「邪魔するな」オーラを出していた。

「そんなに気になるなら、調理用具の買い出しが終われば俺たちと離れればいいだろうに」

 俺たちが行くところ全てへエーリクがついてくる必要はない。

「それでいいか?」

 と聞いてみると、イングリッドは

「それならいいです。我慢します」

 ニッコリと笑って言った。しかし「邪魔するな」オーラは消えない。


 イングリッドは俺の腕を抱くようにして掴まり、一緒に歩いている。

 何なら鼻歌交じりである。

 後ろからエーリク。

「この辺が調理器具を専門に売っている通りですね」

 イングリッドが説明する。

 合羽橋みたいなところかな? 

 確かに専門店が多いようで、食器、包丁、鍋、フライパンのように何かに特化した店が多かった。

「まずは調理器具だな。エーリク、好きな物を選んでいいぞ」

 俺がそういう前に、エーリクは店に入る。

「マサヨシ様、この寸胴鍋はスープを作るのに便利です。えっ、このフライパン、ミスリルですか! 熱伝導率が高いんです。軽くて使いやすく焼きムラができない。いいですねぇ。憧れます。ただ高いんですよ」

 値札には二万リルの値段が書いてあった。金貨二枚か……。

 ダンジョンバブルな俺には問題ない値段だ。

 成金と言われても仕方ないところだな。

「エーリク、買っていいぞ?」

 其れを聞いたエーリクは驚く。

「えっ、いいんですか? こんな高価なフライパン。王宮でしか使いませんよ? ミスリルですよ? 魔法金属ですよ?」

「サイズ違いも必要なら買ってもいいぞ? 俺は料理が美味いならそれでいい」

 驚くエーリクに追い打ちをかけた。

「いいんですね! 買いますよ! 買いますからね! あとから文句言わないでくださいよ」

 確認がしつこいな。

「俺が許すから勝手に買え」

 俺はエーリクにそう言った。

するとエーリクはフライパンの品定めを始める。

「結局欲しかったんだろ?」

「はい、欲しかったんです。でもこのフライパン高くて手が出なくて……」

 エーリクはフライパンを持ち手になじむか確認しながら答えた。

「遠慮せずに買うといい。でも買ったからには子供たちに美味いものを食わせてやってくれ。あと他にも必要なものがあれば買っていいぞ?」

 俺が言が言うと、

「はい、了解しました」

 と言ってエーリクの目の色が変わり再び道具を漁り始めた。


 イングリッドが会話に入れなくて機嫌が悪い。

 俺がイングリッドをチラリとみると、俺の目線に気付いたようだ。

 ちょっと拗ねた顔をする。

「そうだなぁ、これをサラへの土産にするか? そうすればサラの料理がさらに美味しくなるかもしれない」

 と言うと、

「サラの料理がもっと美味しくなるなんて」

 イングリッドは料理を想像しているのか空を見る。

 イングリッドさんヨダレ出てますよ? 

 そして現実に戻り

「いいですね、今より美味しくなるなら道具は必要です。ぜひ買いましょう」

 イングリッドは涎を拭って言った。


 エーリクは道具を揃えたようで、結構な量の道具がこんもりと置いてある。

「マサヨシ様、これだけあれば何でも作れます。任せてください」

 エーリクが胸を張っていた。

 んー何でも必要な物を、とは言ったが、ここまで要るのか? 

「エーリク、これで全部?」

「はい、コレで全部です。一流品で揃えました。あっ、ミスリルはフライパンと寸胴鍋、片手鍋に両手鍋、火にかけるものはミスリルにしてあります」

 俺は、フライパンだけの事で言ったつもりだったんだけどな。

 エーリクはそうは思っていなかったのか、わざとなのか、ミスリル製で揃えたようだ。

 チラチラ確認しているからわざとだな。

 今更、「替えろ」とも言うわけにもいかず、払うことに決める。

「代金は誰に払えばいいんだ?」

 と、エーリクに聞くと、

「この三人に払っていただけますか」

 と、店主らしきオッサンたちのほうを見て言うと、それぞれの合計金額が書いたメモを渡された。

 結構な値段するな……。

 おっと、店側も結構な収入になるためか、皆揉み手だねぇ。

 何も言わず俺が代金を払うと、皆ホクホク顔である。

 去り際に

「年商ぐらい売れたぞ」

「お前のところもか?」

「今日は飲みに行くか?」

 という店主たちの喜びの声が聞こえてくるのだった。


 そういえば道具の中にコンロ無いよね。

「強火力のコンロはどうすればいい?」

 俺はエーリクに聞いてみた。

「それは、なかなか手に入らないと思います」

 さらっと言うねえ

「えっ、なかなか手に入らないものを欲しがったのか?」

「マサヨシ様、使えるならいいものを求めるのが常では? 王宮のコンロには火の精霊を住まわせているので火力が思いのままなんですよ。そこまでは要求しませんが、強火力のコンロは欲しいです」

「ちなみに強火力のコンロってどうやって手に入れる?」

「ドワーフの大工に言えば作ってくれると思います。でもドワーフの大工というのは偏屈ものが多く。なかなか依頼を受けてくれないのです。ちなみに精霊を手に入れる方法は知りません」

 ドワーフってベンヤミンの事だよな。

「ドワーフの大工、居るぞ? 頼めばいいんだよな?」

 エーリクは驚いた顔をすると

「はっ、はい、頼んでいただければ問題ないです」


 あとは精霊だな。

「火の精霊ってどこに居るんだ?」

 エンに聞いてみると

「そこら辺に居ますよ? 私が呼べば来ると思います」

 と言うことらしかった。

「ちょっと呼んで『コンロに住んでもいい』って言う奴を探してもらえない? 料理終わって火が必要なくなったら、家の周りでゆっくりしていいから」

 エンは俺に理解できないような言葉で声をかけると、光が集まってきた。

 色も大きさもまちまち? 

「この子とこの子が『行っていい』って言ってます。この中ではこの子たちの能力が高いですね。家用と孤児院用でちょうどいいですね」

 小さいが、青い炎を持った精霊。

 温度が高い火ほど青くなるで良かったかな? 

「とりあえず俺に纏わりついてもらおうか」

 エンが精霊に何か言うと。青い炎が俺のぜい肉に溶け込んだ。

「エン、どうすればコンロに住んでもらえるかな」

「ここに居て欲しいとマサヨシ様が言えば、居てくれますよ?」

「わかった、コンロができてから依頼してみるよ」

「そうしてください」

 精霊確保完了。


「エーリク、コンロは何とかなりそうだ。あと何か要るものあるか?」

「いえ、これだけあれば料理店が開けます」

店開く規模?

「お言葉に甘え多くの道具を買いましたが、どうやって家まで持って帰るのですか?」

「ん? 俺の魔道具で運ぶ」

 俺は肩にかけた収納カバンを開けると無造作に道具を放り込む。

「ほい、これで完了」

「はっ、はあ、凄いですね」

 圧倒されたのか返事が適当なエーリク。

 あれ? 何となく、再びイングリッドのオーラを感じる。

 細かいことは今じゃなくてもいいでしょ、さっさと部屋に帰りなさい! って感じかな?

 エーリクもそのオーラに気付き、

「マッ、マサヨシ様、イングリッド殿下、私はそろそろ部屋に戻りますね」

と言って王宮に帰る選択をしたようだ。

「おう、明日にでも迎えに行くよ。調理場に行けば居るだろ?」

 部屋に居てもマップに表示させればそれで問題ないか。

「はい、それでお願いします。それでは城に戻ります」

 エーリクは何度か後ろを振り返りながら駆け足で城へと去って行った。

 そして、イングリッドの「邪魔するな」オーラが消えるのだった。


二百部投稿できました。ここまで頑張れたのも皆様のお陰です。

本当にありがとうございました。


2019.3.6

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