隷属の紋章
クリスとフィナが風呂から出てくる。
「下着はやめろ、小さな子が居るんだ」
タンクトップのような下着の脇から、クリスの胸が見える。フィナに至っては、見えてはいけないものがちらちら見えている。
「アイナの体は全部見たんでしょ?」
「俺は幼児の体に興味は無い。それに、『娘が居たら、こんな感じかなあ』とか思った程度だよ」
あれ? アイナの機嫌が悪くなった。何で?
アイナが俺をじっと見る。
「だって、俺精神年齢45だぞ?」
「えっ!」
「??」
フィナとアイナが驚いていた。
「フィナは言ってなかったっけ? アイナは初めてだな。俺この世界の住人じゃない。別の世界から来た。それも今日。元々は45歳だった。嫁も居たんだぞ? 死別したがね。身体能力が上がって冒険者ギルドで22歳って出た時は本当に驚いたんだから」
「だから、手を出さないって言うのよ。どう思う?」
クリスが二人に聞く。
「フィナは、手を出してほしいです」
コクコク頷くアイナ。
「まあ、アイナはもっと大きくなってからだろうけど、私とフィナはねぇ……」
クリスはジト目で俺を見る。
「だから、嫁の顔がちらつくんだわ。今はそういうの、考えられないって」
俺はこの雰囲気から逃げようと必死だ。あっ、そういえば。
「クリスちょっといいか? アイナにも隷属の紋章がついているんだ。どういうことだろう」
一番詳しそうなクリスに聞いてみた。
「わからないわ。今度ガントさんにでも訊いてみたら?」
「そうだな、近くに行ったら訊いてみるか」
「でも、ついでにアイナも所有したら。あなたなら上書きできるでしょ?」
それもそうか、クリスのように制約があっては面倒だ。
「アイナ、俺が所有してもいいか?」
コクリ
アイナは大きく頷く。
「じゃ、上書きするかな」
2回目になったので手慣れたものである。紋章に魔力を流す。徐々に紋章の色が黒から赤に変わった。
「フィナ、このことは内緒だぞ?」
「わかりました」
「おし、完了。俺の奴隷になった二人にも言ったことなんだが、俺の奴隷にならなくてもいいからな。アイナがアイナらしく居ればいい」
アイナが抱き着いてきた。
おっと、アイナの勢いがアップした。やっぱり引き上げてしまったんだろうな。
「さて、クリスとフィナどっちから髪を乾かせばいいんだ?」
「私は髪の毛が長いから、時間がかかる。フィナからしてもらえば?」
「はい、マサヨシ様お願いします」
フィナが近寄ってきた。
「じゃ、俺の前に座って」
左手にヘアドライヤーをイメージ、フィナの頭をブラシで漉く。
「あーん、気持ちいいですぅ」
フィナも気に入ったようだ。
「ところで、今後はどうする? 俺は冒険者としてランクを上げたい」
「私はそれでいいわよ?」
「あぁ、私もそれでいいです」
コクコク
三人とも問題ないらしい。
「そこでだ、俺はアイナもパーティーに入れようと思う。今後は一緒に行動するだろうし、宿屋に一人置いていくのも忍びない。多分俺によるステータスの引き上げで、訓練さえすれば戦える。どうだ、アイナ?」
「私も戦う」
「わかった。そこで、明日は冒険者ギルドへ行って、アイナを冒険者登録しようと思う。何に適性があるのかも知りたいしね」
「この温かい風が、あーん、気持ちいいですぅ。髪の毛がこんなにふんわりするなんて、初めてですぅ」
「マ、マサヨシ。まだ?」
クリスは早く乾かして欲しくてウズウズしているようだ。
「ギルドの件はわかった?」
「クリスさん、まだですぅ。私には尻尾もあるので……」
「あー、譲るんじゃなかった」
「へへっですぅ」
二人とも聞いちゃいない。
アイナはニコニコとクリスとフィナの二人を見ていた。




