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アイナへの依頼

誤字脱字の指摘、大変助かっております。

 部屋を出た俺は外に出る。

「お前ら今日も頑張るぞ!」

「「「「へい!」」」」

 飯場の近くで、ベンヤミンと弟子たちの声が聞こえる。

「おーいベンヤミン」

 俺がベンヤミンに声をかけると、

「ああ、旦那、おはようございます」

「「「「うっス」」」」

 と挨拶が帰ってきた。

「孤児院用の建物が手に入ってな、まずはこれを修理してもらいたい」

 ベンヤミンの顔が歪む。

 きょうは館をやる気満々だったかな? 

「だっ旦那、もう手に入れてきたのかい?」

「早く作って住まわせたいからね」

 そう言って俺の家の近くに寄宿舎を置いた。

 その横に校舎を置く。

 クレイに依頼して寄宿舎と校舎の位置調整をしてもらう。

「あれが孤児院の宿舎と校舎になるところ。あれがきっちり出来上がれば、アウグストの館をやっていいよ」

「本当か?」

 おっと、ベンヤミンがやる気になったかな? 

「そこに乾燥した木を置いてあるだろ? 補修材としてはそれでいいかな?」

 腕を組んで考えるベンヤミン

「本来は板や角材にしてから乾燥するんだがな。まあ、使えるだろう。もう少しちゃんと説明しておけばよかったな。すまん」

 ベンヤミンが頭を掻きながら言う。

「俺も無知だったな。木はかなりあるから使えなかったり足りなくなったら言ってくれ」

「ああ、わかった」

 ベンヤミンが俺から離れ。

「お前ら、あの建物の補修するぞ! あれが終わったら待望のアウグストの館だ!」

 弟子たちに声をかける。

「「「「へい!」」」」

 弟子たちは倉庫に向かい道具を取りに行った。


 家に戻り食事を終えるとアイナを探す。

 んー、まだ寝てる? 

 アイナの部屋をノックをして

「俺だけど居るか?」

 と声をかける。

 扉の向こうからトタトタと音がすると、アイナが扉を開けた。

「なに?」

「ああ、ちょっと用事があってな」

「入って」

 アイナが俺を部屋に入れた。

 特に可愛い物がある訳でなく殺風景な部屋。

 アイナはベッドに座るとトントンとアイナの右横を手のひらで叩く。

「そこに座ればいいのか?」

「うん」

 俺はアイナの右横に座った。

「で、何?」

 アイナが用件を聞いてくる。

「ああ、マティアス王を非公式で治療したいんだ、そこでアイナのキュアーをかけて欲しい」

「ん、わかった」

 アイナはそっけなく了承した。

「えっ、結構危険かもしれないぞ?」

「マサヨシなら、危険は排除してあるはず」

「よくお分かりで……。行ったついでにオヤジさんに会ってみてもいいしな。体が治ってすぐ話ができるかどうかもわからないが……」

 そう俺が言うと。

「私はどっちでもいい、お父さんなんて知らなかったから。」

「まあヘルゲ様に言った手前、王への治療はするから今晩一緒に行ってもらうぞ?」

「ん、了解」

 再びアイナがそっけない返事をする。

「それじゃ、夜迎えに来るから」

 そう言って俺が立ち上がろうとすると、アイナが俺の手を掴んだ。


 じっと俺を見上げるアイナ。

 まだ一年経っていないが少し背が高くなった気がする。その分大人っぽくなったかな? 

「二人っきりは久しぶり」

 アイナがぼそりと呟いた。

「そうか?」

 俺が再びベッドに座ると。

 アイナは体をコテンと倒し、俺の太ももを枕にして横になる。

「私はここに居ていいの?」

 と不安げな顔をして言う。

「居ればいいだろ?」

「王様の娘でも?」

「王様の娘は関係なくないか? 俺の方があの屋台の横に居たアイナを先に見つけたんだ。だから、俺のもの。一応俺の奴隷設定だしなぁ」

 まあ今更だが奴隷をどう扱えばいいのかはわからない……。

 俺は奴隷の主人としてはどうなんだろう。

「そう、私はマサヨシの奴隷。私はマサヨシのもの。ここが私の居場所」

「今更アイナを手放すつもりは無い。一緒に居てくれ」

「マサヨシが『居て欲しい』って言ってくれる……嬉しい」

 俺を見上げながら、目に涙を浮かべるアイナ。


 そして、小さな声で言い始めた。

「やっぱりエイジングの薬を飲んで大きくなりたい。」

「どうして?」

「前言ったように私は小さいから。私を女と見ない」

「お前が大きくなった時、お前が一番若いと言っただろ?」

「それでも……大きくなりたい」

 言い辛そうにアイナが言った。

「どうだろ、小さいときは小さいなりの経験をすればいいんじゃないかな。お前は俺に出会うまで苦労してる。それでも色々経験して、お前の周りに居る姉たちのいい所を取り込んで大人になればいいと思う。多分その頃にはアイナがすっげー美人になっているだろ? 改めて『結婚してください』って言うからさ」

「周りの人を見て『いい女になれ』って事?」

「そんな感じ。アイナは今でもいい女だが、もっといい女になれるんじゃない?」

「今のはお世辞」

 アイナがちょっと膨れる。

 よく気が付くな……。

「バレたか……」

 苦笑いの俺。

「んー、『結婚してください』って言ってくれたら許してあげる」

 アイナの策略に嵌ったかな? 

「大きくなったら言ってくれるんでしょ? だったら今でも……」

「仕方ないな」

 そう言いながら、俺はアイナをちゃんと座らせ両肩を持ち、

「今すぐじゃないけど、俺と結婚してくれるか?」

 と告白した。するとアイナは、

「『今すぐじゃないけど』は余計。でも私の答えはいつも『はい』だから」

 と返事をして、嬉しそうに抱きついてくるのだった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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