拉致
誤字脱字の指摘、大変助かっております
やはり少し眠いので、自分の部屋で横になった。睡眠不足なのかすんなり意識がなくなる。
アグラもベッドボードで就寝だ。俺より早かったんじゃないかな?
何時間寝たんだろう。
布団が吹っ飛んで目が覚めた。
目を開けるとフウの姿。
「マサヨシ、ラウラが捕まった。起きて! ラウラを助けて!」
フウの焦った声が聞こえる。
俺はベッドを出ると無言のまま素早く着替えると扉を出し、バストル家の庭へ向かう。
レーダーにラウラを表示させその場所へ走る。
結構デカい屋敷が見えた。
屋敷の壁も高いのだが、俺には関係ない。
無視して屋敷の壁を飛び越えた。
「悪い、皆、俺から外れて家の人を無力化してもらえないか?」
そう言うと、精霊たちは俺の体から離れた。エン、スイ、フウは素早く散る。
クレイは無力化する術が思いつかず自信なさそうにする。
「今回は気絶させなくてもいいから、土に埋めるなりすればいい」
と俺が言うと、
「フッ、フン、わかってるわ」
そう言って離れていった。
迷路のような館の中を迷わずラウラの元へ走る。これマップが無きゃ大変だな……。
出会った人間を当身で気絶させながらすすむと地下の一室にたどり着いた。
扉は鉄で作られ鉄格子が付いており、そこから声が聞こえる。
「お前は、触れてはならんものに触れたんだ。知らぬぞ、お前がどうなっても……」
ありゃ、ヘルゲ様の声ヘルゲ様も捕まってたのね。
「何を言っている、お前たちを助けに来るものなどどこにいる?」
おっと、これがオークレーン? いや、息子の方か?
「ふっはははは、あれが鬼のヘルゲか?タダのジジイじゃないか。ほら、自分の娘の裸を見てやれ、しばらくは見ていないのだろう?」
「くっ」
ヘルゲ様の声……。
やめてくれ、おっさんの「くっころ」は聞きたくない。
やっぱ、「くっころ」はラウラのような女騎士だよなぁ。
ラウラは沈黙を通しているようだ。
まあ、どっちにしろこの男が嫌な奴なのは確定だね。
「隊長、鋼鉄の処女どうします?」
「その時は俺がやる。こんなにいい女だったとはな……」
カチャカチャと音がし始めた。
ズボンを脱ぎ始めたようだ……こりゃいかんね。
俺は鉄の扉を蝶番ごと引き抜く。
「はいはい、こんばんわ。お待たせしました」
俺はあいさつしながら入る。
「マサヨシ殿」
「マサヨシ」
ラウラとヘルゲ様は俺を見た。
ラウラは磔になっている。
ヘルゲ様は縛られ転がされていた。
そのちょうど真ん中に数人の騎士のような男……、
おっとあの顔見たことある?ああ、あのときか……。
あとは……俺よりちょっと年上な男。結構いい服を着ている。こいつが息子か……。ズボンをずらす寸前の間抜けな恰好……。
男たちが俺を見て固まった。
俺は異質な存在なんだろうなぁ。
館の中に何人もの兵士が居て、ここにたどり着く者など居ない。
あとは、ラウラを蹂躙すればことが終わる。
ごめんね、そうはいかないんだ。
「ちょっくらごめんよ」
右手を拝むように出し、その手を振りながら、男たちの前を素通りしラウラに近づいた。
「いい趣味じゃないね」
俺がそのままラウラに近づき「バキ」という音をさせ金具を強引に外すと男たちはそれを見て驚く。
「悪いな、ちょっと遅くなった」
俺はラウラを開放するとホワイトドラゴンのローブを肩にかける
「いいえ、マサヨシ殿が来るのはわかっていましたから……。私は何もできませんでした。すみません」
顔を伏せ泣きだすラウラ。
そういや家訓があったなぁ……。
「すまん、俺のせいだ……。精霊をラウラにつけてはいたんだが、俺に連絡するようにしか言っていなかったんだ」
俺の胸で泣き続けるラウラ。
「おい、取り込み中申しわけないのだが、儂はどうなる?」
溜息と共に男たちの向こう側からヘルゲ様の声が聞こえた。
「ああ、すみません。忘れていました」
俺は頭を掻きながら答えた。
まあ、忘れてはいなかったが、まずはラウラだろ?
「忘れられるとは……」
ヘルゲ様は再びため息をつく。
「ヘルゲ様はついでなんですからね?本当は居るはずが無かったんですから」
俺もヤレヤレだ。
突然入ってきた俺が好き勝手な行動する。
それを見ていた男が気に入らなかったのか、
「俺を無視するなぁ!」
と言って激怒する。
「ちょっと待て、こっちの用事もある」
男の言葉を無視して俺はラウラを連れヘルゲ様の所へ行くと、ヘルゲ様を縛っていた紐を引きちぎった。
「お前も強引だな」
苦笑いなヘルゲ様。
俺はカバンの中から適当な剣を出し、ヘルゲ様とラウラに渡しながら、
「はい、このほうが早いので」
ヘルゲ様に言った。
キョトンとする男。
「ヘルゲ様、この男殺っちゃっていいんですかね?」
俺はヘルゲ様に聞いてみた。
「それは困るな、色々証言ももらいたい」
「そうですか。なら、嫌がらせは?」
「嫌がらせならいいんじゃないか?」
拘束もされてない状態で、俺とヘルゲ様は男の処分の仕方の話を始める。
顔を真っ赤にして、
「バカにするなぁ!」
と男は剣を抜き叫びながら俺に切りつけてきた。
この程度なら……。
俺は腕を出し剣を受け止める。
俺を殺せたと思ったんだろう。男がニヤリと笑うが。
「ドス」という音とともに、剣が止まる。
んー、さすがマジックワームのクロースアーマー。
俺は、右腕を掴みぞうきんを絞るように絞め込んだ。
「バキバキバキバキ……」骨が細かく折れる音がすると
「カラン」と男の手から剣が落ちた。
うわっ、痛そう……。
「…………っ、あーーー!」
腕が痛いのだろう、声にならない声を上げる。
腕は腫れ始め、みるみるうちにシオマネキのようになる。
あっ、ラウラとヘルゲ様が引いてるね。
その腕に程度の低い治癒魔法を使う。
腫れは引いていくが、変形した腕は戻らない。骨が変にくっついたのだろう。
「あっ、痛みが……」
痛みが引いたのか、男が不思議そうにするが……
「うっ腕がぁーー! 腕が動かないーー!」
次は右腕が動かない事で叫び始める。
俺は頭を掻きながら、
「うるさいなぁ、人の婚約者を裸に剥いて殺されないんだから良しじゃないか? フルヒールが使える神官にでも金を積んで治してもらえばいいじゃない……。あっ悪い、お前このまま拷問行きだわ。色々吐かされそうになると思うけど、頑張って!」
そう嫌みを言ったあと、男に当て身を入れ気絶させた。
「ある意味酷くないか?」
ヘルゲ様が心配げに言うが
「心が折れたほうがいいんでしょ? それに拷問されればもっと酷くなると聞いたことがありますが」
「うむ、それはそうだが……」
「んー『あか〇ンボの歌』から『ゴキの足を取ったら……』の刑にしようと思ったのに、まだこれなら五体あるだけマシですよ」
まあ、そこまでするつもりはなかったが、やってもいいかなとも思っていた。
更に引くヘルゲ様。
「あっ『あかトン〇の歌』とは何だ?」
「ああ、俺の知ってる歌ですね……気にしないでください」
「つまりは、お前を怒らせないほうがいいということだな?」
「そうしてください、俺の仲間や家族に何かあったら、この国でも滅ぼします。あっ頭だけ変えますってのが正しいですね。国は混乱するでしょうが……」
話に集中していると思い、逃げ出そうとする騎士たち。
「ああ、貴方たちは俺とラウラが街で楽しんでいたのを邪魔した人たちじゃないですか」
ビクリとして立ち止まる騎士。
「隊長を置いてお逃げになるので? まあ、逃がしませんが……。ただ、正直に色々話すというならばあの男のようにはならないかと……」
俺は腕を折られ気絶している男を指差した。
「「「話します!」」」
「いい返事です。わかりました。まあ、騎士籍を剥奪されて拷問の流れは変わらないでしょうがね……」
「「「えっ……」」」
俺は、フウに命令し反論しようとする騎士たちを気絶させた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




