俺の魔法考察
誤字脱字の指摘、大変助かっております。
柵からコカトリスを見ていると、キングがやってきた。
「クエェ」
と言って頭を差し出してきたので、頭を撫でる。
キングは気持ちよさそうに目を瞑った。
「クエッ(じゃあ)」
とキングが去る。
ただ、撫でられたかっただけのようだ。
キングの体格が良くなっている感じがするんだが……。
キングが去り、ドランさんの槌の音とベンヤミンの怒号が聞こえる中、ボーっとしていた。
「マスター、どうしたのですか?」
心配したのかアグラが聞いてくる。
「ん? 時間が空いたかなぁと……。最近いろいろ忙しかったからねぇ」
アグラのほうを見て答えた。
「昼に夜に大忙しでしたからね」
気遣ってくれているようだ。
「そういえば、魔法の事を教えてくれるって言ってたよな」
「はい、この前言いましたね」
「じゃあさ、ちょっと教えてくれるか?」
「はい、マスター」
そう言うと、アグラが牧場の柵に止まり、俺を見上げた。
畏まったのかな?
「それじゃ早速、時間を遡ったり、逆に時間を進めるような魔法は有るのか?」
「無いですね」
「エイジングの薬はあるのに?」
「ああ、あれは薬効です。色々な薬草を混ぜて作ったエキスですね。作り方は知りませんが、体を老化させるものです。アンチエイジングの薬はその逆になります。あぁ、ダンジョンコアの私ならボスから出る宝箱の中身も変えることができます。ちなみにリッチを倒した時の金の宝箱にエイジングの薬が入っていた理由は、ただの嫌がらせです」
ニヤリと笑うアグラ。
確かにハズレだと言われたな。
「今日、俺、高速移動って呼んでるんだが、浮いて移動していただろ? 俺がイメージして作った魔法。これは?」
「マスターの魔法は複合魔法です。風の魔法で浮き更に後方に噴き出すことで推進力にしていたようですね。ですから、あのように動けたのだと考えられます。
「俺の扉は?」
「前も言いましたが、転移魔法ですね。元々ある魔法です。この魔法は膨大な魔力が必要になります。マスターは扉を触媒にすることで、少ない魔力で正確に転移できるようにしているのですね。よく考えられていると思います」
「たまたま扉を使っただけなんだが……」
いい方向に勘違いしているようだ。
本当に「たまたま」なので褒められるとこそばゆい。
「マスターが使っているカバンも、空間魔法でカバンの中の空間が拡張されているようです。この魔法も発動には膨大な魔力を使います。更に同じ空間を使い続けるというのも難しいのです。カバンを触媒として使うことでカバンの中の空間を拡張し固定する。そして常時使用。これこそマスターの職業の恩恵です」
自分を納得させるように頷きながら解説するアグラ。
ふと思う、イメージだけで成立しないものもあるとか?
「俺の世界の空想の中に、ビームライフルとかビームサーベルとか言うのがあるのだが……」
「『ビーム』とは? そのような言葉は聞いたことがありませんね。マスターの言う『ビーム』が世界の魔法として存在しているのであれば、イメージし使ってみればマスターの職業の恩恵で形になると思います。逆に『ビーム』というものが存在しないのであれば複合魔法でないと形になりません」
俺はビームライフルをイメージして荒れ地を撃ってみたが何も出なかった。ビームサーベルも同様に何も起こらなかった。魔力は減った感じがしたから創魔士としては何かしたんだろうが……。
ヒートホークはどうだろう……。斧をカバンから出してイメージしてみた、刃の部分だけが火の魔法を纏いで赤熱する。俺自身が熱い。
しばらくすると刃が溶け柄が燃え出した。
高温過ぎたようだ。
ヒートホークは温度調節と素材の選定をすればできそうだが、魔法が付与されている武器もあるから、差がないような気がする。
「『ビーム』はダメみたいだ」
アグラは俺に言った。
「ちなみに『ビーム』というものをどうやって作り出すのかマスターは知っていますか?」
「えーっと……。忘れた……」
確か、光とかの波長を揃えたりするんだったと聞いたことがある。
レーザーもビームの一種だと聞いたことがあるが、レーザーの作り方なんてな。
ビームじゃないけど思い浮かぶのは太陽光をレンズで集めて紙を燃やすことぐらいか……。
「魔法が無い状態で『ビーム』をマスターが思う形で発動させるには、既存の魔法を組み合わせる必要があります、これが『高速移動』で使っていた複合魔法です。それにはマスターが『ビーム』というものを知っていても、どのように作ればいいのか理解していないと魔法として発動させることができないと思われます」
アグラの話を聞くに、創魔士はイメージに合った魔法を探すか、それを具現させる複合魔法を即座に作ってくれる職業らしい。そのためには創魔士である俺のイメージへの知識も重要なようだ。〇ムをイメージした高速移動は、ホバーでジェット推進という風を利用すれば簡単なものだったんだろうが、ビームはちょっとな……。
「要は、俺がイメージしても、この世界にその魔法が無ければ、根本なところから知識として持っていないと形にできないってことか?」
「はい、マスター、そうなります」
「今更ながら勉強不足が悔やまれるな。いざという時イメージして使えないんじゃ困るんだが……」
「まあ、マスター自体が規格外に強いですし、桁違いな精霊も伴侶候補方もいらっしゃいますから、『いざという時』が有るかどうかも分かりませんけどね」
「『いざという時』が起こらないのが一番いいんだけどねぇ。また何かあれば教えてくれよ」
「はい、マスター」
パタパタと飛び上がるとアグラは俺の肩に止まる。
アグラの喉のあたりを指で掻いてやると、目を細め気持ちよさそうにした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




