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証拠固め

誤字脱字の指摘、大変助かっております。

 ヘルゲ様(オヤジさん)の扉をノックし「マサヨシです」と言うと、

「ああ、入ってくれ」

 というヘルゲ様(オヤジさん)の声が聞こえ、

 中に入ると、ヘルゲ様(オヤジさん)は机に座っていた。

 早速

「今朝は助かった」

 と、礼を言われる。

「儂も酔い潰れるとは思わなかったんでな」

「私も襲撃時にここに居て良かったです。ヘルゲ様を助けることができましたから。その後何か分かりましたか?」

「うむ、侵入者は口を割らんな。監視者についてもそうだ」

「なぜ、襲撃されたのでしょう?」

「オークレーンに『儂が証拠を持っておるかもしれん』と思われたのかもな」

「にしても早いですね。魔族側でノルデン侯爵が自害してから一週間も経っていません」

「ワイバーンライダーを使ったのかもしれんな」

「ワイバーンライダー?」

 ドラゴンライダーの劣化版? 

「ワイバーンを使役する者だな。数は多くないのだが空を飛び素早く移動できる利点がある。街道を通らず直接王都同士を繋げば一週間もかかるまい」

 俺がやってることと一緒か……。

「ということは急ぐ必要があると」

「そういうことだな、向こうは証拠が儂の手に渡ったと思っておる。そして、その奪回に失敗している。次は何をしてくるかわからん」

 深刻な顔をするヘルゲ様(オヤジさん)


「そういえば、証拠にはならないかもしれませんが、監視者が逃げ込もうとしていた館の場所は知っています」

 そこまでは密偵から聞いていなかったのか、驚いた顔をして

「ちょっと待ってろ」

 そう言うと、ヘルゲ様(オヤジさん)は机の後ろにある戸棚から、長い筒を取り出す。中には王都オウルの地図が入っていた。

 地図を広げ、

「儂の館がここだ」

 そう指差したところにはバストル家と表示されていた」

「監視者が逃げ込もうとしていたのはどこになる」

「この路地を通って、こう行ってこうだから。ここですね」

 俺が指差した先には『レンノ子爵』と書かれていた。

 ヘルゲ様(オヤジさん)はしばらく腕を組んで考え……そして俺を見て言った。

「ふむ、レンノ子爵か……。裏の仕事をしているところは、トラブルも多いと聞く。そこで痩せた男が襲ったりはせんかな?」

「痩せた男ですか?」

「そう、滅多に現れない痩せた男だ」

 チラチラと俺を見る。偽装を外してレンノ子爵の館を襲えってことなんだろうな。

「その男が『今からですか』と聞いていますが?」

「早ければ早いほうがいい」

 今日も寝れないの確定だな……。

「どの程度のことをすれば?」

「好きにすればいい……が、あまり派手なのもな……」

 このオヤジさん面倒なことを言う……。

「でしたら、レンノ子爵だけ木に裸で庭に括っておきましょうか。あとの使用人や護衛は気絶ということで」

「それは逆に派手だぞ? まあ、恐怖を与えることはできそうだが」

 ニヤニヤしているヘルゲ様(オヤジさん)。楽しそうだ。

「レンノ子爵も襲撃の話は館の中だけに収めようとするでしょうが、その襲撃をヘルゲ様が知ってる。というのもレンノ子爵にとって恐怖でしょうね」

 俺もニヤニヤしてしまう。

 悪代官と越後屋っぽい? 

「なにか書類が子爵の館から盗まれてしまうのもいいのう」

 オーダーが増えたぞ? 

「それは見つかったらの話ですね」

「痩せた男なら何か見つけるだろうて……」

「その男に言っておきます」

「お前も早く痩せた男の所へ行ってきてくれ」

 はあ、舅が厳しいな。使えるとわかったらとことん使うタイプみたいだ。

「わかりました行ってきます」


 夜の闇を俺は走り、俺はレンノ子爵の館を見下ろせる屋根の上に立つ。

 ホワイトドラゴンのローブはとりあえず収納カバンに仕舞った。

 白は目立つからね。

「さて、みんな。手伝って欲しいんだけど……」

 俺に纏わりついていた精霊たちが俺の周りに立つ。

「スイとフウは家に居る者を各自窒息させていって欲しい」

 コクリと頷くスイとフウ。

「門番は置いておいてね。俺の顔覚えさせないといけないから。じゃあ、行ってくれる」

 そう言うと、スイとフウはすっと居なくなった。


 ワクワクしているエン。

 出番を期待しているのだろうか? 

「エンは人を無力化する方法って持ってるの?」

「炎で催眠術が使えます」

 何かの漫画でそんなのあったなぁ。

「お前もそんな技術あったんだな」

「酷いです。この前は悲しかったんですから」

「だったら、その時言って欲しかった」っていうのは言わないほうがいいな。火に油だ。

「じゃあエン、それで人を眠らせられる?」

「はい大丈夫です」

 おぉ、自信満々。

「だったら、門番残して館に居る人見つけて眠らせてもらおうか」

「わかりました」

 エンも消える。


 俺は視線を感じる。それがクレイというのも分かっている。

「クレイ、お前は俺と一緒に来てくれる?」

「何で私だけあなたと?」

「お前が一番人を拘束するのが上手そうだから一緒に来て欲しいんだ」

「私が一番……だったら仕方ないわね」

 おぉ、納得してくれた。

「じゃあ付いて来て、レンノ子爵を捕まえに行くから。」

 俺は屋根から移動した。


 門に近づく。

 この深夜に門番をするのも大変だろうに……。

「おいお前、何の用だ!」

「ここはレンノ子爵の館、用事が無ければ帰れ!」

 二人の門番に高圧的に言われるが、俺は気にせず門番に近づいた。

「これ以上近づくな」

 と、槍で威嚇されるが、軽くかわして定番の当身。

 門番の装備していた皮鎧に俺の拳の跡がつく。

 顔を覚えてもらって気絶してもらった。

「これで変なやつが来たと思われるだろう」

 門の横にある通用門を開けてみたがすんなり開く。

 レンノ子爵をレーダー表示にすると家の中には確かにレンノ子爵が表示された。

「おっと、居たねぇ」

 俺は館の玄関を壊しクレイと一緒に館の中に入るが、結構大きな音がしたはずなのにだれも来ない。

 ロビーのようなところには鎧を着た男たちが倒れていた。

「んー仕事が早い」

 俺は普通にレンノ子爵に向かって歩く。

「私の出番が無いんだけど……」

 クレイが愚痴った。

「君の出番は最後だから、もうちょっと待って。真打は最後に登場するって言うじゃない!」

「真打ちって何よ!」

「最高の人、一番の人って意味」

「えっ、私が最高?」

 表情が明るく変わる。

 持ち上げ過ぎたかな? 

「まあ、そういうことでクレイ、もうちょっと我慢な」

 そう言いながらレンノ子爵の所へ歩く。

「えっ、ええ……わたしが最高……最高だから最後……なのよね」

 と言いながら、クレイは俺についてきた。


 レンノ子爵の部屋に入ると、ベッドの上にオッサンと若い女の子。

『今晩はお楽しみでしたね』ってところかな? 余裕ですな。

 証拠がないから何も起らないと思っているのかもしれない。手下が口を割るとも思っていないのか? 

 俺は「悪事の証拠」という曖昧な条件でマップ表示を変えると、俺の居る場所に光点が現れた。

「ここにあるらしいな」

 とりあえず寝室を漁る。色々やったんだろう、破れた服や大人のおもちゃっぽいものが転がる。

「いい趣味してるよ……」

 とりあえず無視をして光点の位置を探る。

 部屋の壁? 

 戸棚の分厚い本を押していると仕掛戸棚が現れた。

 最悪、仕掛戸棚を壊すことも考えたら簡単に開いてよかった。

 中には書類が乱雑に入っている。んー、オークレーンとか書いてあるから間違いないんだろう。

 俺は中にある書類をすべて収納カバンに入れた。

「あとはレンノ子爵の処分かな?」

 気絶している裸のレンノ子爵を俺は担ぎ庭に出た。

 男の裸を見ても嬉しくない。

 予定では木に縛り付けるんだが、木が全然無かった。

 首だけ出して埋めておこうか……。クレイも使わないと拗ねそうだし……。

「クレイ、出番だ! この男が埋まる程度の穴を掘ってくれ」

 そう言うと、ボコッと地面が凹む。深さはちょうどいい感じ? 

「じゃあ、こいつ地面に入れるから埋めちゃって」

 俺がレンノ子爵を首から上が出る程度に入れると、クレイが周囲を埋めた。

 自分の出番があって嬉しそうなクレイ。

 自分じゃ出られないだろうな。掘ったら全裸だし……これなら屈辱的かな? あとでヘルゲ様(オヤジさん)に教えておこう。

「終わったよ」

「終わったのですぅ」

「終わった」

 エン、スイ、フウが戻ってきた。

 精霊たちも揃い仕事が終わったのでさっさとバストル家に帰る。

 その途中で精霊たちを纏わせ元のメタボな姿に戻った。


「ただいま帰りました。痩せた男からの土産です」

 収納カバンから取り出した書類の束をヘルゲ様(オヤジさん)に渡す。

「お前、これは嫌がらせ? これは暗殺の依頼だぞ? ん? これは……国王に使う毒薬? 病気にかかったように死ぬ薬? 最近国王の具合が悪いのはそのせいか」

 驚いたあと渋い顔をするヘルゲ様(オヤジさん)

「あと、今、レンノ子爵は庭で首から上だけ出して埋まってます」

「ほう、楽しそうなことをしたな」

 本当に楽しそうな顔をするヘルゲ様(オヤジさん)

「まあ、レンノ子爵と会う事があれば、ネタとして使ってみてください。とりあえず痩せた男の出番はこんな感じでいいですか?」

「十分すぎる。痩せた男に『ご苦労』と言っておいてくれ」

「畏まりました」

 まあ、俺なんだけど……。

「それじゃ、家に帰りますね」

 ああ、また夜更かしだ……。

「ありがとう。これでオークレーンを追い込める」

 俺はヘルゲ様(オヤジさん)からの声を聞きながら扉を出し、家に帰るのだった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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