ドワーフたちがやってくる
誤字脱字の指摘、大変助かっております。
ドワーフの大工たちを轟沈させほろ酔いで家に帰ると、
「お父さんおかえりー」
とエリスがやってくる。パジャマっぽいのを着て狐の耳をピンと立て大きな尻尾をフリフリだ。
子供の出迎えか……こういうのもいいな。
気になったので、
「エリスただいま。どうした?こんな時間まで……」
と聞いてみたが、
「臭い……お父さん何これ」
俺の質問よりも酒臭さが優先されたようだ……。
「ああ、酒の匂いだな。ドワーフの大工たちに誘われて飲んできた」
「そういや、お母様もこういう臭いの時がある。お父さんはあまりこの臭いしないんだけど……」
「エリス、私のことはいいのよ……」
ちょっと赤くなるカリーネ。
他の皆はニヤニヤしていた。
その中で悩んでいるのが一人……アイナだ。
近寄りたいが近寄ると大人っぽくないかなと悩んでいるようだ。
大人っぽく振舞いたいのかなっと……。
「アイナ、おいで」
そう言うとアイナがモジモジしながらやってきた。
「どうした、こんな時間まで」
エリスには質問をして流されてしまったが、
「エリスが『お父さんを待つ』って起きてた」
と答えてくれた。
「アイナは?」
「私は『夫』を待つため」
俺を見ながら言ってくる。
「おっ……おう」
アイナに「夫」と言われると思っていなかったので、焦ってしまった。
言い方が変わると雰囲気が変わるけど、今変えなくても……
「俺としてはもうしばらく『マサヨシ』と言って欲しいかな」
「なぜ?」
首を傾げて聞くアイナ。
「子供に『夫』と言われるのに慣れていない」とは言えないか……。
アイナに『子供』と言うのは禁句だ。多分拗ねる。
「そうだなぁ、成人して結婚したときに呼んで欲しいから」
「うーん、まだちょっと早いって事?」
「そうだな、そういうことだ」
「わかった」
何とか誤魔化せたようだ。
「はいはい、エリス、そろそろ寝なさい。アイナちゃん一緒に寝てやってくれる」
カリーネが未成年組に寝るように促すと、
「はい、じゃあ、お父さんおやすみ」
「マサヨシ、おやすみ」
そう言って二人はアイナは部屋へと上がっていった。
未成年組が居なくなると、
「で、何でこんな時間? 女でもできた?」
クリスが聞いてくる。
「俺ってそんなに信用無いかね」
俺が皆に聞くと。
「私は信用してるわよ?」
「我も信用してるのじゃ」
「私もご主人様を信用しています」
「マサヨシ様を信用していますよ?」
「当然あなたの事は信用しています」
「私も信用していますよ、マサヨシ殿」
一人だけ悪者にされるクリス。
おっと、困ってるね。
「えっ、あなた達も気にしていたじゃない」
「クリス、面と向かって言うか言わないかでやっぱり違うんじゃない?」
カリーネに言われ何も言えないクリス。
まあ、言っていいタイミングってのは有るよな。
「でも、皆俺が何をしてきたのか気になるんだろ?クリスだけ悪者ってのもな……」
俺がそうフォローすると、クリス以外は目線を逸らす。
クリスは俺の袖を持ち、「ありがと……」と上目遣いで言った。
ちょっとモジモジだな。
「まあ、俺が酒を飲んできた理由だが……女……ではなく、ドワーフの職人たちと飲んで来たんだ」
「女」と言った瞬間、なんとも言えない緊張感が広がったが、「ドワーフと飲んだ」と言った後はすぐにおさまった。
「いちいち、余計なことを言わない!」
ピシャリとカリーネに忠告される。
「まあ、そういうことで、クリスの母ちゃんの館を修理してもらうためにドワーフの大工が来ます。まあ、その話をしている時に、『酒を飲めるか?』という話になって、ちょっと人族だってことで舐められてたみたいだったから、軽くドワーフを捻ってきたわけだ」
「えっ、マサヨシ殿はドワーフよりもお酒が強いのですか?」
ラウラが驚く。
「潰れることは無いんじゃないかな?」
「あなたは私より強いんじゃないでしょうか?」
リードラよりも強いノーラも驚いていた。
ドワーフって何者?酒が燃料って言っても問題ないのかね?
「まあ、お陰で大工の棟梁を『ベンヤミン』と呼び捨てにする権利を得たわけだ。ああミウラ武器店のドランさんとメルさんも来るから……。ドランさんとメルさんは移住って事で……知っての通り孤児院が動き出したら子供へ技術を教えてもらいます。マールの鎧も完成させてもらわないとな」
「覚えていてくれたのですね」
マールが喜ぶ。
マールの鎧はミスリル製だがドレスアーマーとしては未完成のものだった。ドランさんが「ダンジョンを攻略したら完成させるから持ってきてくれ」と言っていたが、マールから預かり持って行くのを忘れていた。
「でだ、マール。ドワーフたちの食事を準備してもらわないといけない。悪いんだがサラと一緒に五人分ぐらい余計に作ってもらえるか?」
そのうち飯場のお手伝いおばちゃんみたいなのも必要かもなあ。ガントさん辺りに聞いてみるか。
「わかりました、ドワーフの食事の準備はお任せください」
そう言って胸を張るマール。
これで、大工たちの食事の心配はなくなったな。
大工と言えばイングリッドは代替の建物を探すことができたのだろうか。まだ一日目だが気になる。
そんなことを考えていると、
「マサヨシ殿、父上が遅くてもよいので来て欲しいと言っておりました」
と、ラウラが俺に言う。
「もう、日が変わりそうだが大丈夫か?」
「『遅くてもよい』と言っておりますから、問題ありません」
「そう、じゃあ、行ってくるかな」
俺は扉を出すと、
「あら、忙しいのね」
クリスが皮肉っぽく言う。
「多分今日の未明のことなんだろうけど。マールやアイナのこともあるかもしれない。行っておいた方がいいだろう」
「そうね、二人の事があるなら仕方ないか……早く帰ってこれるといいわね」
「善処してみます。クリスも早く寝ろよ」
「大丈夫、無理しない程度に飲んで寝ます」
えっ、飲むんだ。
グラスと酒を準備し始める女性陣。
ドワーフと同じじゃないか……。
「はあ、酒はほどほどで寝ろよ」
俺はため息をついてヘルゲ様の部屋の前に行くのだった。
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