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変な職人へ報告

誤字脱字の指摘、大変助かっております。

 家に帰ると、マールから館の掃除がほぼ終わったと報告があった。

 そろそろドワーフの職人に来てもらう必要がある。

 前もってドランさんとベンヤミンさんには声をかけておいたほうが良さそうかな? 

 そう思い扉を使ってドランさんの店に行く。

 日も暮れた時間だったため開いているか気にはなっていたが、ちょうど店を閉めようとしているところだったようだ。

「こんばんは、ちょっと遅いですが大丈夫ですか?」

 メルさんを見つけ声をかける。

「あんたかい? ああ、引っ越しの件だね」

「はい、土地の処理も終わってドランさんとメルさんの受け入れの準備ができました。まずはその報告です」

「私達はいつでもいいよ、荷物もそのままでいいと聞いてるから、今からだって大丈夫」

 ドンと胸を叩くメルさん。

「では明日の朝でどうでしょう?」

「わかったよ、明日の朝二人で待っているようにするよ」

「ドランさんは?」

「あんたが渡したワイバーンの皮で鎧を作ってるよ。珍しい素材を見つけたらそれしか目に入らなくなるんだ。声をかけても駄目さ。まあ、私もあの真剣な顔に惚れたんだがねぇ」

 んー、最後のは惚気だよな。

 メルさんは思い出したように

「そういやあんた、言っとくけどワイバーンの皮なんてめったに手に入るもんじゃない。私はいいんだが誰に売るつもりだい? そこら辺の冒険者じゃ買えないよ? それこそ高ランクの冒険者や貴族様ぐらいじゃないかねぇ。サイズも適当に作ってるから、最後に大きさ調整の魔法をかけないといけない」

 と俺に忠告してきた。

「ああ、大きさ調整の魔法なら俺が使えますから、多分大丈夫です。人、魔族、エルフの王都で売ってもいいですしね」

「何言ってるんだい! 王都でなんか私たちが商売できるはずないだろ?」

 メルさんは驚いている。

「ああ、何とかなると思いますが、とりあえず今は無理ですね。今後そういう事があるかもしれないと思っておいてください。じゃあ、ベンヤミンさんのところに行くので失礼します。ドランさんによろしく言っておいてください」

「王都なんて怖いこと言ってるねぇ……。ああ、夫には言っておくよ」

 俺はメルさんに見送られ店を出るのだった。


 ベンヤミンさんの家の前に行くと酒臭い。

「ベンヤミンさん居ます?」

 恐る恐るのぞき込むと、ドワーフが四人ばかし飲んでいた。

「おー、マサヨシの旦那じゃねえか。手付の酒いただいてるぜ」

 ベンヤミンさんが家の奥から登場。

「現場の受け入れ準備ができたんで報告に来たんですが……今いるのはベンヤミンさんのお仲間?」

「そうだ、俺の弟子だ、ほら、お前らも挨拶しろ! この酒を渡してくれたマサヨシの旦那だ」

「「「「ういっす」」」」

 四人のドワーフたちが軽く会釈してきた。

「で、俺たちの受け入れ準備ができたって事だな。木材とかはあるか?」

 酔ってるのに質問が鋭いベンヤミンさん。

 酒を飲んでるほうがしっかりしてるとか?

「製材してないものならありますね。無ければこちらで手に入れてきます」

「大工は製材するところから始める。だから問題ない。ただ、あとでいいからどんな木か見せてもらえるか? 使えないようなら旦那が言ったように工面してもらわなければならない」

 ベンヤミンさんは話しをしながらグイグイ火酒を飲む。

「工具はこっちから持っていく。住み込みか? それとも通いか?」

「こっちは一時的に住み込みでやってもらうつもりで飯場を準備しています」

「飯は?」

「俺らが食っているのと一緒なものでよければ」

 五人分の食事が増えるのだ、サラとマールに負担がかかりそうだな……。

「おう、それで十分だ。まあ、弟子たちも結婚している奴は居ねえから、泊まり込みで問題あるまい」

「ベンヤミンさんは?」

「俺も一人だ、問題ない」

「それじゃ、明日からでも?」

「もう手付ももらってある。見ての通りの飲んだくればかりだ、明日からでも文句はないぞ」

 ベンヤミンさんはニッと笑って問題ないことをアピールする。

「報酬はどのようにすれば?」

「仕事を見てからでいい、必要経費は貰うが報酬の上乗せは旦那に任せる」

「わかりました。それでは明日の朝迎えに来ますね」

 俺はそう言って立ち去ろうとした。


 しかし、

「おう、で、マサヨシの旦那は酒が飲めるのか?」

 とベンヤミンさんから声がかかる。

「人並みには……」

 と、答えたが嘘である……。ステータスが上がって人よりは強くなっていることを実感している。ほろ酔いにはなるが、酩酊、泥酔になることは無い。

「人並み? だったら俺たちと飲もう。旦那がどんな人なのか知りたい」

 ドワーフは酒が強いことで有名だ。

 五人とも俺を見ながらニヤニヤしている。 

 何となく人族である俺が舐められているような気がした。

「わかりました。じゃあここにあるだけじゃ足りないですね。なくなったらもう一樽出しましょう」

 そう言って、ドワーフたちを煽る。

 驚くベンヤミンさんとその弟子。

「だっ旦那。この樽でさえ、まだ半分以上残ってるんだぞ?」

「ベンヤミンさん、ドワーフと飲むということは潰れるまで飲むということではないんですか?」

 ベンヤミンさんはそれを聞いて「ガハハハッ」と笑った。

「気に入った。今日は勝負だ。あとのことを考えていないってのがいい。勝ったら呼び捨てってのでどうだ?」

「わかりました。ベンヤミンと呼ばせてもらいます」

 俺もニヤリと笑う。

「旦那は勝ったと思ってやがる。ドワーフを舐めちゃいけねぇぜ! おい! お前らの誰かが一番になっても俺や旦那を呼び捨てにできるから気合い入れて飲めよ!」

「「「「へい!」」」」


 数時間後、夜中近くになると、先に出していた樽がほぼ空いていた。

 ベンヤミンさんの家で酔いつぶれて転がる師匠と弟子たち……。

「これで呼び捨て確定です。それじゃ明日の朝迎えに来ますね」

 そう言って、ベンヤミンの家を出る。

 その後ろから、震えるような声で

「だっ旦那は化け物だ……」

 というベンヤミンの小さな声が聞こえるのだった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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