アイナの事?
誤字脱字の指摘、助かっております。
「ところで、その子は何者だ? 神々しい雰囲気があるのだが」
国王が俺に聞いてきた。
「ああ、ドロアーテで一緒になったんだ。路上生活してたんだけどなついてね」
「私はマサヨシの妻になる」
アイナが無い胸を張る。
「そうか、マサヨシの妻になるのか!」
国王が笑っていた。
ふと思う。
「なぜ急にアイナを?」
「いやな、昔、聖女と呼ばれた女性の面影があってな……」
「そうなんですか」
「その聖女の名は?」
「結構有名だったと思うんだが、お前知らんのか?」
国王は不思議そうに俺を見る。
「事情があって知らないんですよ」
事情は言ってないからな。
「フェリシアと言う名だったぞ?」
「なぜ、聖女などと?」
「平民出でな、神聖魔法の使い手だった。高位の神官を超える能力を持っていた。だからだろうな、『聖女』として祭り上げられた。聖女の話題が出始めた頃、マティアス……ああ、人族の王マティアス・オースプリングが大病を患って、どんな治癒魔法使いもその病気を治せなかった。最後の望みと聖女に声がかり、キュアーで見事に病を治したんだ。そして、マティアスと聖女は仲が良くなった。しかし、その後どうなったのかはわからん。あいつにはすでに正室が居たからな。それでもどこかの貴族の養子にして側室にはすると思っていたんだが……」
「この子が仲間になったときには既に隷属の紋章がついていたんだ。高貴な子供を隷屬化して町に親無し子として放り込むことがあると聞いたことがある。何か事情があるのかもしれないな」
「何かあって、子供が殺せなかったのかもしれん。こちらで調べてみよう。何かわかるかもな」
「ありがとうございます」
俺が国王に礼を言うと、
「ありがとう」
と、アイナも頭を下げた。
「いや、気にするな。調べたら何か出てきそうだしな。その時は交渉のネタにでもさせてもらうさ」
何か考えだす国王だった。
そういえば、ラウラのオヤジさんに証拠持って行かなきゃいけなかったんだよな。
「もうあの手紙は要らないだろ? もらっていいか?」
「あの手紙?」
国王が首を傾げる。
「ノルデン侯爵の罪の証拠だよ」
「ああ、あれはもう要らぬ」
国王がベルを鳴らすと文官が来た。国王が耳の元で何かを話すと。文官は部屋の外へ出ていった。
「しばらく待って居れば、ここに届く」
「ありがたい」
「で、何に使う?」
「ああ、人族のオークレーン侯爵を潰そうと思ってね」
「なぜだ?」
「オークレーン侯爵にボロボロにされた奴隷……メイドなんだがね、それを買った訳だ。今は仲良くやってる。オークレーン侯爵が居たら俺と奴隷と一緒に王都を楽しんで歩けない。だから潰す。まあ証拠を見ての通り碌な奴じゃなさそうだし」
「たったそれだけ?」
国王が驚く。
「いいや、俺にはそれで十分」
「バカだな」
「バカで結構。もしイングリッドが泣くようなことをする権力があったら、俺は潰す。俺の身内に手を出す奴は徹底的にやる。それだけだ」
「身内の中に、儂は入っているのか?」
「一応入っているかな? ああ、ウルフも入ってるぞ。そこはイングリッドへの対応次第。無いとは思うがオッサンやウルフがイングリッドを悲しませるようなことをしたら、それ相応のことをする。オークレーン侯爵はマールに傷をつけた。体にも心にも……だからマールが安心して笑えるようにするんだ」
「オークレーン侯爵は大層なものに目をつけられたな」
国王はヤレヤレと言った感じだ。
「まだ、オウルにはノルデン侯爵の自害の情報は行ってないだろう。対策を立てられる前に証拠を使いたい」
そんな話をしていると、文官が俺に手紙の束を持ってきた。よく見ると手紙には添え書きが……。
「私、フィリップ・ノルデンはこの証拠の通りのことを行いました」
と書かれ、フィリップのサインと押印があった。
そして、もう一枚紙が……それには、
「後見人になってくれたお礼だ。イングリッド殿下から聞いた。好きに使ってくれ」
と書いてあった。
あいつめ……味なことを……。
俺はイングリッドへ
「イングリッド、ありがとう。これでオークレーン侯爵を追い詰めることができる」
と素直に礼を言った。
「いいえ、夫のために動くのも妻の仕事です」
イングリッドはある胸を張るので、さらに大きくなる。
それを見て胸を押え
「十年後……」
ぼそりと言うアイナ。
「はっはっは、もう夫と言うのか。気が早いの」
国王がイングリッドをからかった。
「いいえ、出遅れています。ノーラはマサヨシさんのことを『あなた』と呼んでいます。翼も見せていました」
真剣に返すイングリッド。
「えっ、もう手を付けたのか? マサヨシは手が早いの」
ニヤニヤする国王。
「イングリッドという者がありながら、ノルデン侯爵に先に手を出すとは!」
怒るウルフ。
あー、面倒……。
「俺はなんもしてないぞ? 色仕掛けも断った。イングリッドは覗いていたから知ってるだろ?」
「イングリッド、覗いていたのか?」
「えっ、まあ、気になるじゃないですか」
イングリッドはもじもじする。
「イングリッドはニヤニヤしながら鍵穴から覗いていた」
アイナ爆弾投下。
「アイナちゃん! もう!」
赤くなるイングリッド。
「まあ何もなく、翼だけ見せてもらったと言う事だ」
俺は言った。
「さあ、そろそろ移動するよ。証拠を人側に渡しておきたい」
「わかった、またな。イングリッドも元気でな。まあ、マサヨシの魔道具なら明日にでもここに居そうだが」
「うん、帰ってくるね。お父様、お兄様さようなら」
「おじさんたち、さようなら」
イングリッドとアイナが挨拶をした。
「なっ、俺はまだおじさんと呼ばれる歳ではない」
と言っていたが、
「お前もそういう歳なんだ。早く身を固めろ!」
と国王に言われるウルフ。
それを見てニヤニヤしながら、
「じゃ、またな」
俺は扉を出す。そしてラウラの家の鍛錬の場所に繋ぎ移動するのだった。
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