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箔をつけるものの回収

誤字脱字の指摘、助かっております。

 リードラを連れ家に帰ると、

「まだ、アイナが拗ねてるのです」

 フィナが心配そうに言った。

(われ)と一緒に寝たのが気に入らなかったようじゃの? 『アイナも甘やかす』と言っておったしな。(われ)が弁解に行っても気に入るまい。(ぬし)に任せる」

 俺に丸投げ……ですよね……。

「アイナはどこ?」

「部屋なんです」


 俺はアイナの部屋の扉を開けた。

「コンコン」壁を叩きノックする。

「アイナ、居るか?」

「さあ、知らない」

 プンスカですか……。

 んー、拗ねてるっぽいね

「アイナ、お前、祝福って使える?」

「使えるようになった」

「すごいな、いつ?」

「ゴブリン退治のあと」

「頼みがあるんだけど聞いてくれるか?」

「まだ甘えてない」

 ああ、やっぱりそれが出るか……。

「今から用事があってな、三カ所ほど行くところがある。デートじゃないからお前が甘えられるかどうかわからないが一緒に行くか?」

「一緒に行くの、私だけ?」

「そう、アイナと俺の二人っきりだ」

 アイナがピクリと動く。

「俺的にはアイナと一緒に行きたいんだがなぁ……」

 ちらっとアイナを見た。

「一緒に行って欲しいの?」

「ああ、アイナと一緒に行きたい」

 じーっと俺を見て考えるアイナ。

「騙されてあげる」

 アイナは強敵だった。


 扉を出しゼファードの冒険者ギルドへ向かう。

 今日はカリーネへの挨拶は無しだ。直接解体場へ行った。

「マサヨシさん、お久しぶりです。ジャイアントポイズンスパイダーのメスの解体は終わりました。コックロの内部からの魔石の回収も終わっております。こちらへどうぞ……」

 俺とアイナは担当者に連れられ倉庫に向かった。

「必要な物をお取りください。残りはギルドで販売します」

 俺は、ジャイアントポイズンスパイダーのメスの魔石と数本の牙、毛がついた甲殻、毒線、コックロの魔石が入った袋を取り収納カバンに入れた。

「あとは販売でお願い。解体費はそこから引いてくれると助かる。足りなければカリーネ経由で言ってもらえれば持ってくるから」

「ここまでの出物は少ないですから、足りないということはないでしょう。販売結果が出ましたら、カリーネ様経由でお知らせします」

「ありがとう。助かる」

 俺とアイナは解体場をあとにした。


 次はドロアーテの冒険者ギルドだ。

 扉を使い移動する。

 定番の両開きの扉を開け中に入った。

「おっと子連れの冒険者が来たぜ」

「親はデブだあんなので冒険できるのかよ」

 二人の冒険者が俺にヤジを飛ばす。

 アイナが威圧しそうだったが手で制す。。

 俺はさっさと解体用のカウンターへ向かい、暇そうにしているバートさんに声をかけた。

「バートさん、サイクロプスの解体は終わった?」

「おう、お前か! できてるぞ。俺の一世一代の仕事を見てくれ!」

 周囲から

「えっ、サイクロプス?」

「サイクロプスだって? まさか」

「あのデブが?」

「デブ」は余計なのだが、冒険者たちの驚きささやく声が聞こえる。

 アイナは、その声に満足したようだった。

 俺とアイナは倉庫のほうへ連れて行かれる。

 そこにはきれいに畳まれた皮。目、牙、指の爪。角すべての部位が丁寧に並べられている。それを全て収納カバンに入れた。

「便利だなそれ」

「俺専用の魔道具、結構重宝するんだ。それで肉は?」

「肉はこっちだ」

 俺とアイナはひんやりとした部屋に連れて行かれた。

「通常、サイクロプスのような大きな魔力を持つ魔物は腐食が遅い。多分常温で一ヶ月たっても食べられる。それでも冷暗室には置いておかないとな」

 バートさんはいくつもの肉のブロックを取り出した。

 俺はそのブロックを片っ端から収納カバンに入れる。

「解体料は?」

「いい、お陰で俺に箔がついたんだ。威張れる」

 ニヤリと笑うバートさん。

「それじゃ、これを」

 サイクロプスの肉のブロックをバートさん差し出した。

 一キロは下らないんじゃないだろうか。

「いいのか? 解体料より高いぞ?」

「記念にどうぞ、グレッグさんとでも食べてください」

「わかったありがとう」

 バートさんは、肉のブロックを受け取るのだった。


 最後はフォランカ。

 扉で移動し、冒険者ギルドへ入った。

 ギルドマスターを見つけると、

「ピートさん、ワイバーンの解体終わってる?」

 と聞いてみた。

「ああ、終わってる。素材と肉は倉庫にあるから引き取ってくれ。あと解体料は金貨一枚」

 俺は金貨一枚をピートさんに渡す。

「毎度あり。じゃあ付いてきてくれ」

 ピートさんと俺とアイナは倉庫へと向かい、素材を回収した。


 俺とアイナは冒険者ギルドの外に出る。

「これで肉類の回収完了」

「マサヨシ、ゼファードは間違えたでしょ」

「バレたか、オーククイーンとプリンセスはすでに持ってたんだ。」

「当然、気づく」

 胸を張るアイナ。

「さてどうする? ちょっとだけ王都行くか? 俺に付いて回るだけだったからな」

「うん。王都に行ってみたい」

 俺とアイナは扉で王都に向かう。

 アイナは王都の喧騒にビックリしたようだった。

 出店を見て回ると、

「そこのダンナ、娘さんにどうだい?」とか、「嬢ちゃん、これ似合うよ。お父さんに買ってもらいな」とか、俺とアイナが親子設定で話しかけられる。

 みるみるうちにアイナの機嫌が悪くなった。


 それでも人混みのなかを歩いていると、アイナにわざとぶつかる男。

「いたたたた……」

 それに巻き込まれアイナも倒れる。

 俺はアイナを抱き上げた。

 連れの男がやってきて

「嬢ちゃん、これ骨が折れてるぜ。どう落とし前つける?」

 と脅していた。まあ、俺のこともアイナの太った父親としか見てないのだろう。

「お前が父親か? 銀貨一枚でどうだ? それで万事収まる」

 そう言って、金をゆすってくるのだった。


「悪い、俺とこの子は親子じゃないんだ。ちなみに兄妹でもない」

「ならなんだ?」

「俺の婚約者」

 アイナは俺を見ると、パッと明るい顔になる。

「…………」

 沈黙のあと、

「ぶわっはっはっは! こいつ真性のロリコンだぜ。初めて見た。だからって関係ないだろ、早く銀貨一枚出せ!」

 アイナの表情が陰る。

「いや、出さない。出す気もない。それに好きな子にはいいところを見せないとな」

 そう言って俺はアイナを片手で抱くと、空いた手でゆすってきた男の腕を折った。悶絶して転がる。

「アイナ」

 そう言うとアイナはヒールをかけ骨折を治す。

 キョトンとしている男に近づくと、再び腕を踏み折った。

 再び悶絶する男。

「アイナ頼む」

 再びヒールをかけるアイナ。

 更に腕を踏み折る。

 そして悶絶。

 それを見ていた骨折したふりの男が腰を抜かし震え出す。

「アイナ、もうヒール使えないんじゃなかったっけ?」

 悶絶しながらも「えっ」という顔をする男。

 アイナは、俺に合わせ、コクりと頷いた。

男が恐怖で震えだす。

俺はそれを見てニヤリとすると、わざとらしく男に聞いた。

「お前、俺とこの子が婚約してるように見えないか?」

「みっ見えます」

 苦悶の表情で答える男。

「俺とこの子はお似合いだろ?」

「はっはい。お似合いです」

「そうか、お似合いか。良かったなアイナ。俺もそう思ってたんだ」

「ん、当然」

 そうアイナが返したが、ちょっと頬が赤い。

「じゃあ、アイナ治してやってくれ」

 アイナはフルヒールを唱え、男を完全回復させる。

「今日はこの辺にしておいてやる。さっさと去れ」

 俺が言うと二人の男は泣きながら人混みに消えていった。

 再び人混みを歩くと、出店からは「お似合いのカップルだよ!」とか「いい彼氏を持って幸せだね」とか声をかけられた。

 商売人というのは現金なものだ。

 まあ、アイナの機嫌が良くなったから良しとしよう。

 そして、ノルデン侯爵の家に戻るのだった。


 その後しばらくチンピラの間では「デブで黒い服を着たロリコンカップルには近づくな」という噂が流れたという。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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