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王城

誤字脱字の指摘、助かっております。

 偉いさん専用の入口なのだろう、衛兵らしき魔族が槍を持って立っていた。

「王よ一人で出られては困ります。どれだけ探したか!」

 十名ほどの馬に乗った部隊が現れる。

 近衛兵? ひと際体が大きく黒く輝く鎧を着た魔族の男が現れた。

「おう、息子よすまんかったな。でも楽しめたぞ。このような強者を二人見つけることができた」

「何者で?」

「はて? 冒険者だったかの?」

 国王(オッサン)は「お前何者?」って感じで俺を見た。

「オッサン……あっ国王、俺は旅の冒険者ですね。旅で知り合った魔族の女性から聞いて、魔族の王都を見たくてここに来たんだ」

 俺が「オッサン」と言った瞬間にイングリッドの兄貴(かな? 兄貴にしておこう)は俺に剣を向ける。

「国王であるわが父に向かって『オッサン』だと!父上、このような男をどうするつもりで?」

 イングリッドの兄貴は声を大にして聞いている。

「儂の客人として泊める。儂の小遣いを増やしてくれたのでな」

「なっ、このような者を我が王城へ……」

「儂の客人を切るのか?」

「王を『オッサン』と言ったのですよ?」

「まあ、儂は『オッサン』と呼ばれてもいい歳だからな」

「なぜかばうのです」

「そうだな、儂の勘がこいつを敵にしないほうがいいと言うておる。さっきも勘が当たった。儂の勘は信用できる」

「勘? 勘なんてものを信じるのですか!」

 王様(オッサン)に食い下がるイングリッドの兄貴。

「面倒臭そうだから、適当に宿を探して泊まろうか? 

 まあ、俺も王城に泊まれないなら別の場所に泊まるしな。」

「息子よ儂の顔を潰すつもりか?」

「そっそれは……」

「儂がこの者たちを客人としてもてなすと言うたのじゃ。国王が言うたことを覆せというのか?」

「……。くっ、わかりました。ただ、この者たちが何か問題を起こしたのなら、即刻王城から追い出します」

 イングリッドの兄貴は俺に剣をつきだしながら言った。

 おっと、睨まれてる。こりゃ、仲良くなるのは難しそうだ。


 王城に入り部屋を与えられた。

 おっと風呂付きいいねぇ。

 ただ、部屋の出口には近衛兵。

 えーっと、敵対表示? 赤ランプ点灯ですか……。

 動くなって事なのかね。メイドを呼ぶベルもあるから呼べば来るんだろうけど……まあ、しばらく出番はないな。


 白い光点なのだが俺の真横に見える。天井裏だろうな。客人とはいえ何者かわからない者。屋根裏に部屋を覗く場所があってもおかしくないか……。

「さて、天井に居るのが鬱陶しそうだな」

「そうじゃな、聞き耳を立てている者がおる」

 カタリ……音がした。

 光点が離れていった。

「逃げて行ったね」

「そうじゃな」

 周囲に誰も居ないのを確認すると扉を出しリビングに繋いだ。

「おーい、イングリッド」

「はい?」

 ああ、扉の裏に居たのね。

「王城に入れたぞ?」

「えっ、なぜ?」

 イングリッドはきょとんとしていた。

「まあ、お前の方が王城は詳しいだろ? こっちに来いよ」

「はっはあ……」

「私も行きたい!」

「クリス居たのか?」

「居たのかは無いでしょ!」

 おっと拗ねた。

「拗ねたクリスは置いておいて、私も行く」

 アイナ登場。

「バカ言わないで、私も行くわよ!」

 クリスプンプンって? 

「私は、この家を守っております。妻と言うのはそういうものです」

 マールはそう言って妻を強調した。

「私は行きたいのです。王城って言うのを見てみたいのです」

 フィナも行きたいようだ。

「私も家に残ります。イングリッド様を守れませんでしたから」

 ラウラが言った。

「お前はちゃんとイングリッドを守ったぞ? だから今生きている」

「でも、残ります。心の整理が……」

「だったら、私はラウラ姉ちゃんと居る。私足手まといだし」

「エリス、ありがとな。そうそうイングリッド、早くラウラの護衛終了の書類を書いてやってくれよ? じゃないとラウラが騎士団に帰れないからな」

「あっ、すっすみません」

 忘れてたか。えーと、あとカリーネは仕事か……。

「それじゃ、クリス、フィナ、アイナそしてイングリッドだな。行くぞ」

 扉で魔族の王城へ戻った。


「おやおや、大勢で来たのう」

 リードラがニヤニヤしている。

「イングリッドだけの予定だったが、行きたがったのが居てな」

 チラリと三人を見た

「だって魔族の王城なんてなかなか行けないでしょ?」

「なんか、堅苦しそうです」

「ん、確かに」

 フィナはスンスンと匂いを嗅ぐと、

「私、家に帰るのです。家のほうが美味しいものがあるのです」

 扉を通って戻っていった。

 食べ物で判断するフィナ……どうなのそれ?

「帰る。フィナの鼻は信用できる。綺麗な部屋なら見飽きた」

 お前も飯絡み? 

 アイナも戻るらしい。

「えー、私だけ? あー私だけが我儘みたいじゃない」

「いや、クリス、お前、大概我儘だろ?」

「どうしよ……私は大人。我儘じゃないから帰る」

 クリスも戻っていった。お前ら漫才しに来たのか? 

 おっと、イングリッドが固まっている。

 さて、扉を仕舞ってと。


「おーい、久々の王城はどうだ?」

 イングリッドに声をかけた。

「あっはい、懐かしいですね、半年以上たっていますから」

「で、一応着替えるか? ゴブリンに襲われたときの服は洗って持ってるが?」

「そうですね、着替えます」

 俺のカバンからドレスを出すとイングリッドに渡した。

「んしょ、んしょ」って感じで着替え始める。

「ん? なぜここで?」

「夫になる人の前です。別に問題ありません」

「いやいや、今扉が開いたら困るから……。まだ認められてないし」

 あっ、光点が近づいてきた。

「客人、居るか?」

 ノックなしでバンと扉が開く。

 ノック位しようよ。

 イングリッドの兄貴が登場し、イングリッドを見て固まった。

 俺はイングリッドの兄貴の意識を当身で刈り取り、即座に扉を閉める。

 外の監視には気づかれていなようだ。

「だから言っただろ? 気を抜いちゃいかんのだ」

「すみません」

 イングリッドはシュンとした。

「すみませんついでなのですが、一人ではこのドレスは着れないのです。背中のボタンを留めてもらえませんか?」

 そういやドレスってコルセットとか面倒なんだよな。

 後ろに回りボタンを留める。

「凄いですね、数人のメイドたちで絞め込んで留めるのですが……」

 王女様装備を取り付け終えたイングリッド。

「じゃあ、イングリッド。あの気を失っている兄貴を起こしてやってくれないか。できれば、戸を開けた瞬間にコケて気絶したとかいう事にして……」

「わかりました」


「兄様、お兄様」

 イングリッドは軽くゆする。

「んっ、あー何があった? えっお前イングリッドか?」

「お兄様、ただいま帰りました」

「デカくなったな、成長期が来たのか?」

「はい、オウルで成長期が来てしまい大変でした」

「で、お前何でこいつらの部屋に?」

 イングリッドの兄貴は俺たちを見た後にイングリッドを見る。

「彼らは私の護衛ですから。一緒に居てもおかしくないでしょ?」

「それはそうだが、いつの間にこの部屋へ?」

「それは、マサヨシさんの魔法です。姿を消して入場させてもらいました」

 若干嘘が入ったな。

 イングリッドの兄貴は、俺が魔法使いだという事が信用できないのだろう、

「えっ、あの者は魔法使いなのか? 城の外で男たちを当身で倒したと聞いたが……」

 イングリッドに聞き直した。

「間違いなく魔法使いですよ? 色々な魔法や魔道具をお持ちです」

「しかし、お前がここへ帰るには早すぎないか?」

「それもマサヨシ様の魔法です。素早く移動する魔法を持っています。このマサヨシさんは昨年パルティーモで賊に襲われてた時、オセーレへの道中フォランカへ入る前盗賊団に襲われた時、そして、ゴブリンに襲われた時、三度も私の命を助けていただいた信用できる方です」

 俺とリードラをイングリッドの兄貴は見た。

 今更だが一応会釈をしておく。

「でも、早く帰る理由にはならない」

「それは父の前でお話します。お兄様、父との渡りをつけていただけませんか? 今の私はここに帰ってきていないことになっています。私が帰っていることがわかる前に内密に会いたいのです。なるべく早く、出来れば今日」

「わかった、ここで待っていろ」

 イングリッドの兄貴は出ていった。


「で、今更なんだけど、イングリッドのオヤジさんと兄貴の名前は? さすがに『オッサン』と『兄貴』じゃいかんのでな」

「えっ、ああ、言ってませんでしたね、父の名はランヴァルド・レーヴェンヒェルム。兄の名はウルフ・レーヴェンヒェルムになります。しかしマサヨシさんはこの国の国王、そして魔王たるお父様を『オッサン』呼ばわりしていたのですね」

 イングリッドはクスリと笑った。

 わざと、仰々しく言ったな。

「ああ、『オッサン』と呼んだぞ? 意外と許してくれたがね」

「それは、父上がマサヨシ様を気に入ったのでしょう。ところで、どうやってお父様と出会われたので?」

 俺とリードラが国王に出会った顛末を話した。

「お父様はお喜びになられたでしょうね。自分の目に狂いが無い事が証明できたのですから」

 イングリッドはニコニコしている。

「これで、マサヨシさんのあの家に行けそうですね」

「それはまだ難しいんじゃない? 所詮一冒険者だぞ? 実績がない」

「マサヨシさんがお父様に気に入られていることが重要なのです。実績は私が報告すればいいのですから」

「そんなもんかね……」

「はい、そんなものなのです」


 扉の前に光点二つ。赤いね……敵対心有り。

「コンコン」ノックが響く。

 何のためらいもなくイングリッドが扉へ近づくが、俺は身をもってそれを阻止した。

 俺の体に槍が刺さりそうになった……穂先が曲がる。

 痛いのは痛いんだよな。

 俺が扉ごと殴ると、扉は蝶番ごと外れて飛ぶ。扉の向こうに居た刺客は挟まれ気絶していた。

「リードラ、イングリッドの護衛を頼む。このまま王様の部屋に行こう。多分ノルデン侯爵が気付いたのだろう。ウルフ様? んー面倒、ウルフがノルデン侯爵かその系統の貴族にお前が帰ったことを話したみたいだな。まあ事情を知らないから仕方ないか」

「言っておいたほうが良かったのでしょうか?」

「その辺のことはわからんよ、まあそれよりも刺客の対処だね」


「スイ、フウお前ら敵が来たら窒息で倒せ。スイは顔を水で覆え! フウは顔の周りの酸素を抜け! お前らならできる。殺すなよ……」

 精霊に指示を出すと、精霊たちは飛び出した。

「マサヨシ、私は?」

「お前は下手に手を出したら殺しちゃうから。最後の切り札で偽装待機」

「切り札なのですね、わかりました」

 おお、納得してくれたか。

 俺も窒息で盗賊団を殺したことはある。だが気絶と言うと自信がない……その点微妙な調整ができる精霊のほうがいいのだ。


 イングリッドの誘導で王城内を走る。

 する数十人の騎士たちが壁を作るところに出た。

「イングリッド様、手紙を返していただければ、私はあなたに危害を加えるつもりはありませんぞ」

 圧倒的多数に余裕を持つノルデン侯爵

 おぉ、デブ。親近感あるね。俺もあんなかったのかね。言ってることは嘘っぽいけど。

「マサヨシさん、あれがノルデン侯爵です。ここを通らねば父上の部屋へは行けません。マサヨシさん、あの数の騎士をどうにかできるのですか?」

 イングリッドは諦めたような声を出していた。

「イングリッド、マサヨシを信用できんのかの? あの程度ならマサヨシが手を出すこともなかろうて。精霊たちが手伝っておる」

 いつも通りのリードラが説明する。

「精霊?」

 あっ、精霊たちの自動攻撃開始。

 精霊たちが騎士の意識を奪っていく。

 俺も騎士の中に飛び込み当身で意識を奪っていった。

 おぉ、フルプレートに俺に拳の跡が付くね……。

 数瞬の後、

「はい終わり」

 イングリッドに向かって余裕をもってにっこりと笑った。

 安心したのだろう。涙目だったイングリッドが笑う。


「ひぃ、バケモノ!」

 逃げるデブ。

 バケモノとは失礼な。

 リードラが近寄り首根っこを掴んだ。そのまま片手でノルデン侯爵を持ち上げる。

「丁度良かったのう。この男を捕まえておけば、王の前で確認できるぞ?」

 リードラがノルデン侯爵を見ながらニヤリとする。

「イングリッド、王様の部屋は?」

「はい、すぐそこです」

 俺たちとノルデン侯爵を連れ、魔王ことレーヴェンヒェルム様の部屋へ向かうのだった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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