オセーレへの道筋。
誤字脱字の指摘、助かっております。
外でキングやタロスと話をして時間を潰す。
俺が家の外に出てくるとキングが俺を見てニヤリとしたのが印象的だった。
同類って事か? まあ、もう否定できないけどな。
そろそろほとぼりも冷めたかな?
「じゃあ、戻るよ」
「マサヨシもキングと一緒で大変だな。まあ、頑張って」
ねぎらいの言葉をかけてくれるタロス。そしてキングもニヤリと笑う、ちょっと影があるのが気になるが……。そして、クイーンたちの方へ駆けていった。
ん?
よく見ると何か増えてる。そういう事か……お互い頑張ろうな。
リビングに戻るとリードラが一人。
「皆は?」
「皆、色々考えることがあるのじゃろうそれぞれの部屋へ帰って言ったぞ」
「そうか、ありがとう。リードラ今日空いてるか?」
「特にすることは無いな。オセーレに行くのか?」
鋭いな。
「そういう事。一度行かないと扉は使えないからね」
「主マメじゃの。たまにはゆっくりせんといかんぞ?」
「まあ、イングリッドの事もあるし、マールの事もある。ついでにラウラの兄貴の分かな。元々サラリーマンだから働くのは働くぞ?」
「サラリーマン?」
「ああ、社長という君主のために働く兵隊だな。能力が低いとマメに働くしかないんだ。その癖が抜けない」
「難儀じゃな」
「そう難儀だ」
「まあ、マメじゃないとこんなに集まらんじゃろうがね」
リードラはクスリと笑う。
「それを言われると辛いな。リードラはマメじゃないほうがいいのか?」
不意打ちだったのかちょっとキョトンとするリードラ。
「時と場合じゃな。人にマメなのは嫌じゃが、我にマメな場合はいいのう」
「それはただの我儘だ」
「そうじゃ我は我儘なのじゃ」
リードラは俺を見てニヤリと笑うのだった。
朝食を終え、ヒューホルムのゴブリンの館だった所へ扉で移動する。リードラにドラゴンになってもらい、その背に乗った。
「それじゃ行くかの」
「おう、頼む。この方向だ」
リードラは俺が指差す方向に飛び出した。
「最近、体が快調での、早く飛べるようになったようじゃ」
そう言うと翼を畳み速度を上げた。
ゼファードから約一か月かかると言う魔族王都オセーレへの距離をリードラは一時間ほどで飛ぶ。
城門から少し離れたところでリードラに人化してもらい城門へ向かった。
城門には魔族の王都と言う事もあり魔族がずらりと並んでいた。
その中にいる人族は少なく俺たちは目立つ。リードラのスタイルがいいので更に目立つ。
数人の男たちから声をかけられた。
あっ定番だ。
「そこのお姉さん。なんでこんなデブと一緒なんだ?」
ニヤニヤしながらリーダーらしき男が声をかけてくる。
「強いからじゃよ」
リードラが普通に答えた。
俺って強く見えないんだろうか……。メタボって強く見えないんだろうか? デブ〇ンに出てたサモ〇ン強かったぞ?
「そのデブが強いのか? ああ、魔法使いなのか。魔法でこの女を落としたんだな? だがな、魔族に魔法は効き辛いんだ」
「だから何なのじゃ?」
「俺たちがそのデブより強いって事気付かせてやるよ!そこのデブ。俺たちと勝負して俺たちが勝ったらその女は貰う」
何だその方程式。聞いたことないぞ?
「わかったのじゃ、おぬしらがこのマサヨシに勝てたら、我はおぬしらに付いていくことにしよう」
リードラが断言した。
あーあ、勝手に決めて……。
周りで賭けが始まる。
「デブ、デブは居ないか? 一口銀貨一枚。男たちばかりじゃ賭けにならない」
どう見ても俺は負ける設定らしい。
「我が金貨一枚、マサヨシに賭けるぞ」
リードラが金貨一枚を出す。
「まだ足りないな」
急遽胴元をしている男が言った。
「儂もデブにかけてやろう。これで賭けは成立するか?」
胴元の横にふらりと白い馬が現れる。俺より背の高い高貴そうなオッサンが赤いマントを翻し乗っていた。紫色の顔は魔族ですな。さあ誰でしょね?
オッサンが親指で金貨を一枚胴元に飛ばす。
「国王がデブに賭けたぞ!ほかに居ないか! 締め切るぞ!」
ああ、国王……イングリッドのオヤジさんだったのね。
賭けが締め切られる。そして知らない間に男たちと俺たちは観客に囲まれていた。国王は馬から降りずに頭一つ高い所から眺めていた。
胴元が男たちに詰め寄る。
俺を指差しニヤニヤしている。
ああ……胴元とグルだったのね。まあ、条件もそっちのほうがいいしなぁ。
「いち、にい、さん、し、ご、ろく、なな、七人じゃな。十数える間でどうじゃ?」
リードラが俺に聞いてきた。
「十数える間で倒したら、何かあるの?」
「我を主が自由にできる」
「今更だろ? 俺が『自由にさせろ』って言ったら何でもさせてくれるくせに」
「まっまあ、そうじゃが……」
「だったら賭けにならないだろ? 俺がお前を襲う理由付けか?」
「そういうことじゃ」
「そういや甘えさせてやるって言ったけど、甘えさせてもないしな。今晩ここに泊まるか?」
「いいのか?」
リードラの体がピクリと動く。意表をついた?
「んー、約束守るためって事で通してみましょう。あっでもアイナが怒りそうだ……」
「アイナは言うじゃろうな。ほっぺを膨らませそうじゃ」
その顔を思い浮かべ二人で笑った。
「何、勝手に話をしている。デブ、早くここに来い!」
男たちを無視して話していたのが気に入らなかったのか口調が荒い。
おっと、会話に集中して放っておいたな。
「はいはい行きますよ……」
既に男たちはそれぞれの剣や斧、槍などの武器をもっていた。
早々に胴元が俺の間に立つ。
「では、私の号令とともに始めてください。はじめ!」
えっ、俺の準備は? まあいいけど……。
「いーち、にー……」
号令と共にリードラが数え始める。
男たちは俺を囲むように攻撃をしてきた。全周囲攻撃? 逃げ場なし?
一瞬で距離を詰め全員に当て身を行う。
「フウ、吹き飛ばせ」
小さな声で言うと風が弾けた。
男たちはその風に吹き飛ばされ転がりそして動かなくなるのだった。
「三じゃったな。早すぎじゃ」
速い事に文句を言っているが顔は嬉しそうだ。
「我のために戦ってくれて嬉しいぞ」
「そんなもの? リードラでも一緒だろ?」
「そんなものじゃ。好いた男が戦ってくれる。それがいいのじゃ」
「はいはい」
胴元が逃げようとしているな。話をしているうちに逃げるつもりかな?
「そこの者、儂に配当が無いぞ?」
オッサン……おっと国王が剣を抜き胴元の首に添える。
「こっ国王様、こっこちらです」
「おお、儂の金貨が二枚になった。国王とはいえ自分で使える小遣いは少なくてな。そこの男のお陰で大儲けだ」
おっと「カッカッカッカッカ……」って笑ってる。水戸黄門的な笑い方を初めて見た。
「リードラももらって来いよ」
「そうじゃな、胴元よ、配当を貰えるかの?」
「ううっ……」
財布から銀貨がこぼれる。
ああ、国王の金貨二枚はリードラの分と国王の分だったのね。
「二百枚にはちと足りんがまあ許してやろう」
リードラが数を数え袋を持つと戻ってきた。
さあ、もう定番も無いだろう。
「リードラ、入街手続きをして中に入るぞ? 宿も決めたい」
「おぬし今日泊まる場所はあるのか?」
おっさん……いや国王が俺に近寄ってきた。
「いや? 特にはないけど?」
「儂の所に来んか? 何日でも良いぞ? 我が城に泊まるがいい」
「何であんたは俺たちの世話をする?」
「そうだな、金貨のお礼だな。それよりも儂の目に狂いが無かったことが嬉しいのだ。おぬしの強さに気付けたことが嬉しいのだ。それに、配当は金貨二枚には足りなかったのじゃろ? その差額の分、儂の城に泊まらぬか?」
どうしても俺を城に泊めたいらしい。
どうする? って感じで見てくるリードラ。
いいんじゃない? どうせ話もしなきゃならんだろうしお世話になりましょう。
「リードラ、この列を待つのも面倒だ。王様について中に入らせてもらおう」
「そうじゃな」
俺たちはおっさん……おっと国王についてオセーレの中に入った。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




