マールの決意
誤字脱字の指摘、助かっています。
そういえば、色々あって添い寝の順番など関係なくなってるな。まあ、増えたのもあるし、飲んで潰れるのも多いし……。
順番が消えかけていることで、俺は一人寝ができて助かっていた。
しかし今日は誰か来たようだ、気配を消している。
すっと扉が開き影が入ってきた。
「起きておられましたか」
「いいや寝てたがって……」
「だって、私のためにオークレーン侯爵を……」
薄明りの中、浮かぶマールのシルエット。女性らしい曲線が目立つ。そして白髪がその姿を彩っていた。
「お前のためだけじゃないよ。それに上手くいくとは限らない」
「でも、嬉しいんです」
そのまま俺のベッドへダイブして抱きついてくる。
目の前で乳房が揺れた。
「だからって全裸で来る必要はないだろ?」
「私はあなたの物だから……好きにしてもらいたくて……」
「いやいや、『好きにして』って言ってもなあ」
「もう、あなたの元妻の縛りもないはずです」
「うん、まあ、そうなんだが……」
「だったら、抱いてくれてもいいはずです」
「それはそうだが……」
押されてる。
「ではなぜ」
マールは心を決めてきているのだろう真剣な目で俺を見る。
「俺はまだ何もマールにできていない。マールを痛めつけた相手、オークレーン侯爵はのうのうとしている」
「私は助けていただいただけで十分です」
「そうだなぁ、さっきデートの話が出ただろ? デートでオークレーン侯爵に出会って普段通り笑えるか? 思い出さないか?」
「ずるいです。傷つけられたことを、売れ残りの部屋の事を思い出さないわけありません」
マールは苦い顔をして目を伏せる。
「別に侯爵だろうが国だろうがいいんだ。身内がやられて黙っている気はない。条件が整って潰せるなら潰す。マールが忘れられるなら、一緒に笑えるならね」
「でも、人を殺すことも……」
「罪は俺が被ればいいだろ? なかなか死ねない体らしいから、少々恨まれて刺されても大丈夫」
「マサヨシ様……でも私にはこの体しか……」
マールは膝立ちになり体を見せる。
やっぱ奇麗だよな。
「ただ、今はまだだって思うから。だから今日は俺の抱き枕になってもらえるかな? 服は着てくれよ? でないと困る」
「わかりました、着替えてきます」
ふう、妥協案で何とかなった。
そう言うと、一度部屋を出ていった。
「お前もおさまれよ……まあ、お前の仕事はそっちだからなぁ。歳も若くなってるし」
息子を見て独り言。
暫くすると、マールが再び俺の部屋に入ってくる。
ん? ネグリジェって奴ですか? いやベビードール?
んー見えそうで見えない、ダメな奴じゃないですか……。
「それどこで手に入れた?」
「紅茶を買った店のおばちゃんがくれました。『コレで誘えばイチコロ』って言ってました」
あのおばちゃん余計なことを……。
「んー、イチコロではないが破壊力は有るな。まあいいや寝るぞ」
「はい!」
出来るだけマールの体を見ないようにしてベッドに入れる。
マールの人肌が気持ちいいのだが、結局、俺は眠れぬ夜を過ごすことになるのだった。
「ふわー、眠い」
眠っているマールをそのまま残しリビングへ行くと、リードラがすでに起きていた。
「主よ、昨夜はお楽しみじゃったかな?」
何だ? その聞いたことがあるようなセリフ。
「あんなの抱いて眠れるか! 寝不足だよ。リードラ、お前も絡んでいるのか?」
「マールが皆にお願いしていたのだ。侯爵の件のお礼がしたいと言うておった」
だから、真剣な目をしていたのか……。
「我もマールが主の牙城を崩して手を出せば、なし崩し的にと思うたがね」
「まあ、牙城は崩れなかったという事で……」
「残念じゃのう」
「そうだったの? カリーネもダメだったって言ってたけど、マールでもダメだったんだ」
女性陣(成人)で情報共有はされているらしい。
必要かコレ?
「えっ、マールさんダメだったんですか?」
フィナ登場。
「ダメだったのですか?」
「マサヨシ殿はまだ」
イングリッド、ラウラ、お前らもか。
「あーあ、ダメだったのね」
カリーネ……。
「ヨシ!マサヨシ、信じてた」
アイナがガッツポーズ。
えっ、女性陣(成人)だけの情報共有じゃないの?
「さては、お前ら、マールの事が気になって眠れなかったな?」
一斉に視線を逸らせる女性陣。
「ところで、マサヨシ様の一番は誰なんでしょう?」
フィナの一言。
ピキリ……空気が変わる。
さて、この場には居ないほうがいいかな。
俺の中で警戒警報が発令される。
「俺、キングたち見てくるよ」
フィナの一言が聞こえないふりをして外に逃げた。
なんかキングの気持ちがわかる気がする……責任は自分にあるんだけどね。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




