貴族を潰す計画を立てよう
誤字脱字の指摘、ありがとうございます。
俺はラウラとバストル家の中に入ると、オヤジさんを探す。
レーダーでは二階かな?
ラウラがメイドさんに場所を聞いていた。
「ヘルゲ様は部屋に居られたかと」
「やはり、二階か」
「なぜ、父上の場所が?」
「ああ、俺周囲探査できるから。常駐の魔法でね……」
レーダーと言っても分かるまい。
「誰かと会ってるみたいだな、二人……オヤジさんを込みで三人」
「誰でしょう、誰もヘルゲ様のところに通してはいないのですが……」
メイドが言った。
「まあ、父上の部屋へ行ってみればわかるのではないでしょうか?」
「そだね、行ってみようか。ありがとね、メイドさん」
俺はメイドさんに礼を言うと、二階へ上がりオヤジさんの部屋へ向かった。
「コンコン」
ラウラがノックすると、
「誰だ」
オヤジさんの声がした。
「ラウラです、マサヨシ殿も居ます。少し話がしたくてここに来ました」
「入れ」
ラウラを先頭に俺はオヤジさんの部屋に入る。
おっと、誰も居ない。オヤジさん一人だ。
「なんだ? 結婚式の話か?」
「いいえ、そういう話ではありません」
「では何だ?」
光点の数は変わらない。中で話をしているはずなのに。
位置関係の問題かな?
「ヘルゲ様、他に誰か居ますか?」
俺はフウに周囲の捜査を頼む。
緩やかな風が吹いた。フウが周囲を確認するために移動したのだ
「いや、儂一人だが?」
「天井裏に二人、黒い服を着た者が居ます。あそこの辺りですね」」
フウは指差した。そして報告が終わると俺に纏わりつく。
黒装束って……。
「あのあたりに人の気配が……天井裏に二人ですか?」
オヤジさんの眉がピクリと動く。それだけだった。
「よく気付いたな」
オヤジさんは天井を見ると
「降りて来い」
と命令した。
黒い影が二つ天井から降りてくる。
おっと、フウが言った通り、黒い服? ああ黒装束ね。
「こいつらは秘密は守る。儂の手足だ」
「子飼いの密偵って奴ですか」
「そういう事になるな。で、結婚式の話ではないとすると何だ?」
オヤジさんが聞いてくる。
「ラウラが貴族を潰す方法を聞くなら、ヘルゲ様だって言ってたもので……ご教授をお願いしたいと」
「ほう、物騒だな」
チラリとラウラを見る。
「で、潰したい貴族というのは?」
「オークレーン侯爵」
オヤジさんの目が鋭くなった。
「ほう、大物だ。この王国のゴミに目をつけるとは……」
「ヘルゲ様がゴミだというのなら、相当なんでしょう」
「まあ、爵位が高いことを理由に色々やってるからな。あいつのために泣いている奴は多い」
「俺の奴隷の一人も指を飛ばされ、顔を傷つけられていた。一応伴侶候補」
「息子もクソだ。だから儂は王都騎士団に入れた。監視できるからな。ミスラは苦労しているようだが……あの程度を何とかできねば団長など務まらん。で、女のためか?」
「そう、俺の女のため。ついでと言っちゃなんだけどミスラ……一応兄さんと呼んでおくか、ミスラ兄さんのためもあるかな? ほんのちょっとだけどね」
「一応兄さんか……。儂にはお前の方がミスラよりかなり歳は上に見えるがね……。さて、侯爵家を潰すなら、それ相応の事をやったという証拠が必要になる。証拠を手に入れ表に出したとしても、貴族ってのは自分の領土と軍隊を持っている。その軍隊を無力化しオークレーン侯爵本人を捕らえる。大衆の面前で裁判、死罪にして断頭だな。まあ、その後の始末は儂がするとしてどうする? 不正の証拠は儂も手に入れてないぞ?」
ヘルゲ様もお手上げと言った感じか……。
魔族の国との不正?
心当たりは……あるな……。まあ、王女様に聞いてみないと分からないが……。
「んー、イングリッドに聞いてみますね、こっちの貴族と魔族の貴族が不正してた証拠を持っているらしいので……。オークレーン侯爵が絡んでるまでは聞いていないので確認しないと……」
「お前、それ儂が手に入れる予定だったやつじゃ……。そういえば、密偵の一人が殺された時、近くに魔族が居たと聞いたが、それか……」
「どっちにしろ、確認が必要なので、一度ドロアーテの家に戻ります」
「えっ」という顔をするオヤジさん。
「お前、ここから一か月かかるぞ?」
「ああ、すぐに帰れますから」
「父上、使えるのはマサヨシ殿限定ですが便利な魔道具もお持ちなのです」
俺は扉を出しリビングと繋ぎ扉を開く。
「まあ、こういう事です。ちょっと行ってきますね」
リビングに戻ると、
「おーい、イングリッドいる?」
声をかける。
「はい、ここに」
二階からイングリッドが降りてきた。
二日酔いは無いらしい。
「一つ聞きたい」
「何でしょうか?」
「お前、魔族側の不正の証拠って持ってるよな。王様に渡すって言うやつ。その中にオークレーン侯爵って名前は出なかったか?」
「はい、確かオークレーン侯爵の名は出ていました」
少し考えてイングリッドは言った。
「その証拠を見せてもらうわけには?」
「私が一緒に行って見せるという事ならいいですよ? そこに見たい人が居るんでしょ?」
扉の向こうを指差すイングリッド。
「でも、何で?」
「マールを切り刻んだやつを潰してやりたくてね」
「わかりました。私と同じくマサヨシさんの妻になろうという人を切り刻んだ貴族を潰すためですね。手伝わせていただきます」
「助かるよ、まあ、まずは機密文章に強い人に見てもらうかね」
俺はイングリッドと共にオヤジさんの部屋へ戻った。
「ただいま戻りました」
「殿下、お久しぶりです」
「ええ、オークレーン侯爵を潰す算段だと聞きました。これが証拠になります。使えるかどうかわかりませんが……」
「これが……」
オヤジさんは、証拠を漁るように見る。
「禁止品の密貿易、貿易品の中抜き、殺人、どんだけあるんだ? 全部か? 外された封蝋に押されている印璽は間違いなくオークレーン侯爵のものだ」
「その証拠で魔王国のノルデン侯爵を失脚させるつもりです。それが終わってから貸し出しという形でよろしいでしょうか」
「それは問題ないが、どのくらいかかる?」
「そうですね、明日には我が王都オセーレには行けますから。そこからノルデン侯爵を失脚させる。反抗すれば討伐、全てが終わるには時間がかかりそうですが、証拠自体はそんなに必要ないと思われます。証拠を突き付けてノルデン侯爵領に逃げた後は最悪写しでもいいと思いますので。」
「証拠を持ってくるのはお前なのか?」
俺のほうを見るオヤジさん
「まあ、そういう事なんでしょう。オセーレまで一度行けば、この部屋まですぐ戻れますから」
「わかった、その証拠をもって王へ進言するのは、魔族側のゴタゴタが終わってからにする。ノルデン侯爵の失脚の報告がこのオウルに入る前に、お前から証拠が届くという事になる。驚く姿が目に浮かぶ」
ニヤリと笑うオヤジさん。悪い顔だ。
「途中経過はこちらから連絡するようにします」
「ああ、よろしく頼む」
「ヘルゲ様それでは失礼します。じゃあ、ラウラ、イングリッド、ちょっとラウラの部屋に寄って帰るぞ」
「「はい」」
ラウラの部屋に入るとイングリッドが
「可愛い部屋」
ニコリと笑う。
ギャップを気にしているのか、ラウラの顔が赤い。
「女の子って可愛いものを好むものだろ? 別にいいんじゃないのか?」
「マサヨシ殿がそう言うのなら気にはしない。ところで、なぜ私の部屋へ? イングリッド殿下に見せるためではないでしょう?」
「ああ、転移の扉を作るんだ。ラウラは騎士団辞めないんだろ?」
「辞めてもいいが、辞めなくてもいいのならそのままで居たい」
俺は、家具屋で手に入れた赤い扉を邪魔にならないところに置く。ゴブリンの上位種の魔石の中で程々の物を選び俺の家の扉を置いた部屋の座標とラウラの部屋の座標を魔力と一緒に流し込む。それが終わると扉へ魔石を取り付けた。
「出来たかな?」
俺が扉を開けると、ドロアーテの木漏れ日亭行きとゼファードのカリーネんち行きが並んでいた。一度、扉を通って家に戻り、蓄魔池に魔石の線を繋ぐ。
これで、魔力が少なくても扉が使える。
「後は登録だね」
扉を閉じ、俺はラウラの手を持つと扉のノブに触った。
「これで、ラウラはこの扉を使えるようになった。使ってみ」
ラウラが恐る恐る扉を開けると、転移の扉の部屋につながる。
「ん、使えるね。これで騎士団辞めなくても通えるでしょう?」
「ありがとう、マサヨシ殿」
イングリッドにじーっと見られる俺……。
「ああ、イングリッドにもちゃんと作るから。お前の場合はまだ家にも行ってないだろ?」
「考えているならいいのです」
大体終わったかな?
「さてと、帰るか。どっちにしろ、イングリッド側の事を終わらせないと進まない」
「わかりました」
「次は私の番ですね」
ラウラとイングリッドが答える。
俺は扉を出し、三人でリビングに戻るのだった。
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