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扉探し

誤字脱字の指摘、助かっております

「ラウラ、家具職人が居そうな場所を知らないか? 家具を売ってる店でもいい」

「マサヨシ殿、私はそのような場所に詳しくはない」

申し訳なさそうにラウラが言ってきた。

「武器屋は知ってるか?」

「ああ任せろ。私の家の御用達がある」

役に立つことが嬉しかったのか、武器屋まで俺の手を引っ張っていった。


「店主よ居るか?」

「これはラウラ様、どのようなご用でしょうか?」

「ここに居るマサヨシ殿が、武器屋に用事があると言うことだ」

「このフルプレートをラウラに合わせてもらいたいんだが……」

俺は収納鞄から、赤く輝くフルプレートを出した。

店主はビックリした顔になる。驚いたのはカバンに? それとも鎧に? 

もともと、鎧をなくしたラウラには、ダンジョンで手にいれた防具を渡すつもりだった。ラウラと言えばフルプレート。

ただ、女性用に限定するとこの鎧と、本当に普通のフルプレートしかなかったのだ。防御を考えるとこの鎧のほうが高いため、この鎧に決めた。ド派手だがね。

鎧を見て驚くラウラ。

「これは、かなりの逸品なんじゃないのか?」

「持っている中では中の上位の防具、どうせ拾った物だから気にしなくてもいいぞ」

急に店主が語りだす

「ローズシルバー……この鎧を目にすることができるとは……儀礼用に作られてはいますが、物理、魔法ともにバランスよく防御できる逸品です」

店主の手が震えていた。

鎧に驚いていたのね。

「お客様、マサヨシ様と言いましたか。これをどこで?」

「ゼファードのダンジョンで」

「そうですか……。ああ、この鎧には調整の魔法がかかっていますから、ラウラ様が着ればそれに合わせた大きさになります。ただ、売ってもらうわけには? さる王族から捜索を依頼されておりまして……」

「これはラウラのって決めてるから。ダメだね」

「そうですか……」

「じゃあ鎧下を頼むよ。通気性のいい動きやすいやつで……」

ふと店主が俺の黒いクロースアーマーを見る。見た目はほぼスーツなんだが。わかる人にはわかるようだ。

店主が急にクロースアーマーに手をだそうとしたので避けた。

再び手を震わせ。

「それはマジックワームの服、マジックワームは乱獲で居なくなり、服など何十年も聞いたことがない」

「ああ、懇意にしている武器屋に売ってもらったんだ。値段は内緒だけどね」

「それも売っていただく………」

「だからダメだって」

俺は食い気味に否定した。


しぶしぶ店主は仕事に戻る。

「ラウラ様、鎧下は合わせますか?」

「できれば」

ラウラは答えた。

店主がパンパンと手を叩くと、女性の従業員が出てくる。そしてラウラを奥に連れていった。試着室でもあるのだろう。

「ところで、マサヨシ様。他にもなにかお持ちなのでは?」

店主がまだ食いついてくる。

「ん、特にはないかな。ここに来たのはラウラの家の御用達だから。あっそういえば、この辺で扉だけを売ってくれるところはないか?」

「そうですねえ、場所はわかりかねますが、この通りの先に家具屋がありますので、そこで聞いてみては?」

「ありがとう、探してみるよ」

しばらく、俺が持っている装備の詮索をされながら待っていると、袋を持ったラウラが現れた。

「気に入ったのはあったか?」

「ああ、ちょうどいいのがあった。でも少々高いのだが……」

「店主、いくら?」

「金貨八枚になります」

揉み手の店主。

「じゃあ、これで」

俺は金貨を八枚出し、カウンターに置いた。

ラウラがニコニコである。

「それじゃ、失礼しますね」

そう言うと俺は店を出るのだった。

んー、この店には来ない………そう思った。


俺とラウラは、通りを進む。

「この先に家具屋があると聞いたんだが……」

「あれじゃないですか?」

ラウラが指差す。

もう少し先に、タンスを表した看板を下げた店があった。

中に入ると、

「いらっしゃいませ!」

と声がかかる。そして奥から女性が現れた。店員かな? 

「どのような用件でしょう?」

「扉がほしいんだ。部屋につけたい、木枠つきで嵌め込むようにできるかな?」

「扉を嵌め込むとは珍しいですね。でも、大丈夫。お好みの扉を選んでいただければ、木枠をつけ開閉できるようにしておきます」

「ラウラ、どれがいい?」

扉の前をうろうろするラウラ。

時間はかかったが、決まったようだ。

「これで」

ラウラが指差したのは、シンプルな赤い扉だった。

「それじゃ、これに木枠を。木枠はこれみたいな明るい感じの木でお願いします」

俺はパイン材のような板を指差した。

「少々時間が……夕方までには仕上がると思います」

「ああ、いいよ。そのくらいにまた来る」

「銀貨二十枚ですが、前金でよろしいでしょうか?」

俺は銀貨二十枚を店員に渡すと、店員は引換証をすぐに作り俺に渡してくれた。

「その引換証をお持ちいただければ、扉と交換になります」

「ありがとう」

そう言うと俺たちは店を出た。


 んー、時間潰しどうしよっかなー……なんて思って通りを歩いていた。すると騎士風の男が三人、俺たちに近寄る。

「兄ちゃん、いい女連れてるじゃねえか」

「そうそう、俺たちにもおこぼれちょうだいな」

「ちょーっと、その子貸してくれたらいいから」

おっと、久々に絡まれたね。

「お嬢さん、こんなデブよりも俺たちみたいな鍛え上げられた体の方がいいって」

一人が前に出てポーズをとる。ちょっとキモい。というか、鎧を着ているのでわからない。

ふと、ラウラを見ると、背後にオーラを纏っていた。

明らかな殺気。

ラウラは前でポーズをとっている男に一瞬で近寄ると

「今日の私は機嫌がいい。見逃してやろう。ただ、これ以上付きまとうならば私が容赦しない」

と言った。

「お嬢さん、俺たちゃ王都騎士団だぜ、王都の治安を任されている。どうにでもなるんだよ」

ラウラに怒り筋が浮かぶ。

あっ、キレた。

一人の騎士に一瞬で近づき、顎を持って片手で持ち上げる。

残りの二人が剣に手を持っていこうとしたが、俺が剣を取り上げた。

「私の顔に見覚えはないかな?」

ラウラが怒り低くなった声が響く。

三人はじっとラウラを見ている。

「!」

気づいたかな? 

「鋼鉄の処女!こんな所に居るはずが……」

悪名を言う騎士の勇気が素晴らしい。

ラウラは持ち上げていた一人を投げ飛ばした。

それを追うように逃げる二人の騎士。

二人の騎士は投げ飛ばされた仲間を両脇から抱えると逃げていった。

よく考えれば、ラウラはまだイングリットの護衛任務中な訳で。

「すまん、気遣いが足りなかった。別の町にしてもよかったのにな」

「いいや、私は楽しかった。鎧を着てなくてよかったと思う。普通の娘として王都を歩けた」

ラウラは本当に楽しそうに話す。

「確かに鎧を着てたらすぐにバレそうだ」

「あのような騎士に出会ってしまったのが失敗だな」

「だなあ。ただ、ラウラが綺麗だから俺たちに絡んできたのだろうね」

「そっ……そうか?」

ラウラは顔を伏せる。

恥ずかしいのかな? 

「腕組むか?」

「うっ……うん」

モジモジしながら、俺の左腕に腕を回す。

おっと、頭を預けてきた。

顔が真っ赤だね。

扉ができる夕方まで、二人で食事と買い物をして時間を潰したのだった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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