王都再び。
誤字脱字の指摘、ありがとうございます。
「というわけで急遽王都へ行きたいと思います」
「えっ」という顔をするラウラ。
「鎧あったほうがいいだろ? やっぱ、女騎士と言えば……鎧。あと『くっころ』だな」
「『くっころ』とは?」
「んー、ある状況で起こる会話の一言なんだけど、状況は内緒で……」
説明しづらい。なんで俺『くっころ』言ったんだ?
「で、ラウラ、鎧要る? その格好で家帰れる? 俺的には、その服の方が固さが抜けていい感じだと思うが」
「くっころ」は消し去ろう。
「正直に助けられたといえば問題ない。模擬戦に負け、ゴブリンから助けられたのは間違いないのだから……」
ラウラはちょっと回想中? 遠い目をしていた。
「今から行っても大丈夫かね?」
「この時間、父上は朝の鍛錬をしている。いきなり行って相手をしてくれるかどうか……」
「相手をしてくれる状況に持ち込めばいいのな?」
「可能なのですか?」
「失礼に当たることでいいのなら、方法はある」
俺は扉を出し、王都オウルへ繋ぐ。
「えっ、王都?」
「じゃあ、行こうか」
俺はラウラの手を引き、オウルの街へ行った。
ガントさんの店の前についた訳だが。
「おう、久しぶりだな。俺に何か用か?」
朝の体操をしているガントさんに出会ってしまった。
「いいや、こっちの野暮用でね」
隣にいるラウラを指差すと、
「お前も忙しそうだなぁ。まあ、奴隷に関してだけだが、何かあったら俺に連絡すればいい」
「ありがと、ガントさん」
そんな会話をして店の前から離れた。
「ラウラ、お前んちってどこ?」
「私の家、バストル家の屋敷はここからすぐ。しばらく歩けば見えてきます」
ラウラが家の場所の説明をすると、俺のマップに場所が表示された。
「ん、わかった。さて行こうか」
俺は、ラウラを抱き上げる
「えっ」というラウラの声が聞こえたが、気にせずラウラの家の方へ走った。朝っぱらから女を抱えて凄い速さで走るデブを見て驚く住民たち。
人さらいと勘違いされなければいいんだが……。
そのお陰か、あっという間に屋敷の場所までたどり着いた。
高さ メートルほどの壁にかこまれている。何なら壁の上に槍っぽい飾りもある。
「父ちゃんの鍛錬の場所ってどこ?」
「そこの壁の裏あたりかと……」
「それじゃ……」
ラウラを抱いたまま、ステータスに物を言わせて飛び越える。すると、おっさんと若者が居た。
剣を構える二人。
オッサンはラウラの父ちゃん。若いのは……どっかで見たぞ?
若者も首を傾げ、
「マサヨシ様、何で壁を飛び越えるなどという方法でわが家へ? ラウラ、お前も何でマサヨシ様に抱かれているんだ?」
と問いかけてきた。
んー、思い出せない。
「ラウラ、あれ誰?」
「私の兄です。バストル家、現当主です」
「んー、どっかで会った事あるよな」
「ミスラ兄さまを知っているので?」
「ミスラ? んー覚えてない」
すると、若者は俺に近づき、俺の耳元で「卵、卵」と囁く。
「卵?」
俺が声を出すと、
「シー」と静かにするように促す。
ああ、バレちゃいかんのね
「卵」をヒントに考える。
「コカトリスの卵?」
「そうそう」って感じでジェスチャーをする若者。
「若者とコカトリスの卵……ああ、俺んちに襲いに来たバカ貴族か?」
「シー、シー」誤魔化そうとするが、オッサンの方に怒りジワが現れる。
「マサヨシ殿そんな事があったのですか?」
「ああ、コカトリスの卵欲しさに、軍隊を動かしたんだよ。迷惑な話だ」
「そう言えば、あの家にはコカトリスが居ましたね」
真っ青になった若者、というかミスラ兄さん?
「そんな話は儂は聞いておらん。王の落とし種を探すためにドロアーテに行き、見つけることができなかったのは聞いておるが……」
おっさんがミスラ兄さん? に聞いた。
しどろもどろになり、オヤジさんと話をしている。
自業自得。
「ラウラ、オヤジさんの名前は?」
「ヘルゲです」
「爵位は?」
「伯爵。正確には伯爵でしたと言うのが正しいかと。」
うわっ、伯爵って結構爵位高くなかったっけ?
「結構偉いさんっぽいな」
「王都の警備を取りまとめていました。兄が跡を継ぎましたが、今でも父上の影響は大きいですね」
「オヤジさんには頭が上がらないと……」
「そうですね、あんな風に頭が上がりません」
説教受けているミスラ兄さん? を指差す。
俺はラウラを抱いたまま、説教されるミスラ兄さん? を見ていた。
おっ、説教終わり?
「父上、私の伴侶となる殿方をお連れしました」
「ふむ、まずはミスラが迷惑をかけたようだ。申しわけない」
ヘルゲ様は俺に頭を下げた。
「俺みたいなのに頭を下げていいので?」
「迷惑をかけたのはこちらだ、謝るのが筋だろう?」
「それはそうですね」
どこの馬の骨ともわからない俺に頭を下げるヘルゲ様に好感を持った。
「ところで、ラウラがそんな格好で男に抱かれているのは初めて見るのだが?」
真っ赤になるラウラ。
「そうですか、私の前ではいつもこんな感じなのですが……」
「この朝早くにこの場所へ乗り込んでくるというのは、理由が有ろう?」
「はい、手合わせをお願いしたく思いまして。少々強引ですが、先触れなしで会うためにこのような手段を使いました」
「なぜじゃ?」
「ラウラから聞いたのです。ラウラが私の家で住むためには、あなたと戦って勝つ必要があると……」
「別に、ラウラがお主の家に住むのは気にせんが? ただのう、騎士団一と言われたラウラがそこまでお主に惚れておるのが気になる。ラウラが惚れる者と言えば自分より強い者だ。最近は居なかったんじゃなかったかな?」
ヘルゲ様はラウラを見た。
ラウラは下を向き恥ずかそうにする。
「では、手合わせなしで、許可を頂けると?」
「いや、手合わせはする。儂も強さを見たいでの」
そう言いながら、木剣を二本出し、俺に一本投げた。
「それで良いか?」
「私は、魔法使いですから剣は少々しか使えませんが、お相手しましょう」
ラウラを降ろす。
ヘルゲ様は前振りなしで俺に切りつけてきた。ヘルゲ様は不意をついたつもりなんだろうが正直遅い。軽く避ける。
んー、本気のほうがいいのかね?
ラウラを見ると、俺の動きを見て驚いていた。
あれ? 手合わせしていたんだからわかるだろうに。外から見たほうがわかるって事?
何度もヘルゲ様は俺に切りつけてきたが、ギリギリでかわす。
イライラしてきたかな? 少し大振りになってきた。
さあ、どうやって終わらすか……。
大振りで切りつけてきた剣を親指と人差し指で挟みつまむ。そのまま動かないように固定した。
「ん!」ヘルゲ様が木剣を外そうとするがピクリとも動かない、俺も動かさない。
ヘルゲ様の額から汗が流れ、呼吸が早くなる。
「大丈夫ですか? もうこれ以上やっても……」
「儂の負けだな、お主の力には勝てんようだ」
「では、許可はいただけると?」
「好きにすればいい。もういい大人だからな。すでに行き遅れとも言われておる」
「父上それは……」
「そうじゃろう?もう子をなしておる幼なじみもおるだろ?」
ラウラはなにも言い返せないようだ。
「貴族は貴族同士と聞いたことがあります。俺はただの冒険者で利点などない男ですが……」
「お主には利点がある。儂よりも強い。それに鋼鉄の処女を手懐けた男だぞ? それだけで十分だ」
「それでは、私の伴侶候補でよろしいので? 私には伴侶候補が多いのですが……」
「強い男に女が集まるのは世の常だ、気にせんよ」
「では、俺の家に連れて帰ります。ただ、一つお願いがあります。事情は後程話しますが、ラウラは騎士団を続ける予定なので、この館のラウラの部屋を使わせてもらいたいのです」
「元々ラウラの部屋だ、好きにしろ」
「ありがとうございます」
ヘルゲ様はミスラの首根っこを掴み、屋敷の方へ戻った。
御愁傷様。
「ラウラの部屋を使っていいらしいから、部屋を教えてくれないか?」
「こっちです」
俺はラウラに連れられ館に入る。
館のメイドや下男は「なぜラウラ様が?」という顔をしていたが、俺は気にしない。
二階に上がり一番奥のちょっと小綺麗な扉をラウラが開ける。
「ここが私の部屋だ」
ラウラに連れられて中に入った。
意外と可愛い部屋だった。ぬいぐるみやクッションが並ぶ。
「お前、結構かわいいのな」
「ボッ」という音がしそうなぐらいにラウラが真っ赤になった。
「これで、ここまでの扉ができる。気兼ねなく騎士団に出勤できるようにしてやるからな」
あとは扉を手に入れたらここまでの転移の扉ができる。せっかく王都に居るんだ、扉を探してみるかな?
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




