更に後始末
誤字脱字の指摘、有難うございます。
ゴブリンの館に着くとリードラにドラゴンに戻ってもらって俺は空を舞う。そしてブレスで館を焼き尽くした。
レーダーで魔物の様子を確認すると、数百匹の塊が一つ、数十匹の塊が数個見つかる。
大分倒したと思ったんだが結構残ってるねぇ、数が多かったせいかね。
「リードラ、目の前右にデカい集団が居るだろ。とりあえずそれからだな」
「確認した。ブレスで良いかの?」
「とりあえずやってみる? 特大で……」
「おお、我のできる最大でいいというわけじゃな」
リードラは胸いっぱいに息を吸い込み一発ブレスを撃った。
おぉ、きのこ雲。そして衝撃波。
こりゃヒューホルムからも見えるな……。
レーダーからもゴブリンの集団が消えていた。
「ブレスでやると、仕事が粗くなるな」
「そうなのじゃ、数は減らせるのじゃが粗くなっての。取りこぼしも多かったようじゃ」
「森林破壊も激しいしね。今更戻ってもらうのもリードラに申し訳ないから。エン! スイ! フウ! ゴブリンだけでいいから倒してもらえるかな?」
すっと俺のメタボ偽装が消え、三体の精霊が森へ散った。
レーダーを確認すると光点が一体また一体と消えていく。
自動攻撃って今更ながら便利だよね。
「主よ、精霊が三体も付いた者など聞いたことが無いのう」
「そっ、そう?」
「精霊の居る所は栄えると聞く。主が治める場所があれば面白いのじゃがな」
そこ、変なフラグを立てない
「たっだいまー」
「終わったですぅ」
「終了」
レーダーから集団が消えている。ポツポツと魔物の光点が見えるがゴブリンじゃないんだろう。
「お疲れ様、ありがとな。お陰でこの町の住人は安心して暮らせる。俺も依頼が一つ終わった」
「褒められるって嬉しいね。僕、マサヨシさんに褒められると次も頑張ろうって思うんだ」
エンが俺を見上げながら言う。
「私もですぅ」
同意するスイ。
「褒められたことが無い。でも褒められて嬉しい」
ボソリというフウ。
精霊って褒められるって無いんだろうな。
「でしょう? だから頑張る。それに魔力美味しいし」
「美味しいのですぅ」
「美味しい」
「お疲れさんってことで、偽装してくれ」
「あいあいさー」
どこで覚えたその言葉?
エンがそう言うと精霊たちは纏わりつき、俺はメタボ体形に戻る。
「さ、町に戻るか。ドラゴンに戻るか? それとも人型で行くか?」
「主はどう思う?」
「俺はドラゴンのリードラはカッコいいし人型のリードラは美人だ。どっちでもいい。ただな、人型のほうが傍にいる感じがしていいな」
「じゃったら、人型じゃろう」
早々にリードラは地面に降りると、人化をする。周りは森、誰も居なかった。木漏れ日に照らされるリードラの裸体。
「我は魔物じゃ。魔物らしく、こういう所で甘えたほうがいいのかのう?」
「いいや、リードラは俺のパートナーの一人だろ? それに俺は人だ、ベッドで甘えてほしいかな? ホイ、着替えろ、俺の息子が親離れする」
「我の裸に反応するのなら満足じゃ」
ニヤニヤ笑いながらリードラは服を着た。
なんか負けた感があるな。
何かモヤモヤするが、例の扉で宿屋の部屋に飛んだ。
そのまま、王女の部屋に行きノックする。
「クリス、来たぞ」
「あっ、ダメ」
クリスの声が聞こえ、勢いよくドアが開いた。
ガン!
「イテテテテ」
あまり痛くはないんだけど、リアクションは必要かな?
王女様が焦ってる。開けたら人が居て頭をぶつける。ドラマでよくあるパターン。
「マサヨシさん、すみません!」
「あぁ、大丈夫、結構頑丈なんで……。報告があるので中に入っても?」
「あのー後ろの方は?」
リードラが俺の後ろに居る。美女だし気になるのかな?
「ああ、俺が乗ってたドラゴンです」
「リードラじゃ、よろしゅうな」
「えっ、あっ、はい。よろしくお願いします」
人化したドラゴンなど見たことが無いのだろう、じっとリードラを見ていた。
「じゃあ、お邪魔します」
俺とリードラは王女の部屋の中に入った。
「マサヨシ、お疲れさま」
「クリス、とりあえずゴブリン関係は終わった」
「そう」
ふと思い出す。
「そうだ……ほい、これ返しておくな」
女騎士にミスリルのレイピアを差し出した。
「えっ、これは」
「ゴブリンの館で見つけた、ゴブリンに武器として回収されていたようだね」
「私が使っても?」
「お前のだろ?」
「大切にする」
女騎士はミスリルのレイピアを大事そうに抱きしめた。
「マメよね」
「マメじゃのう」
二人の小声が聞こえる。
元に戻しただけなんだからいいだろ?
それをじっと見ている王女様。 ん? そういえば……。
「王女様にもお土産が……」
お土産と聞いて嬉しそうにする王女様。
「ノルデン侯爵って知ってる?」
「はい、我が国の有力貴族になります。なぜその名前を?」
「ゴブリンの館からその貴族の手紙を見つけたんだ。読む? 結構衝撃的だけど」
「よろしければ……」
「ハイこれ」
王女様に手紙を渡す。そして沈黙が訪れた。
まあ、自分を殺す依頼の手紙を見るんだ、あまり気持ちのいいものじゃないだろう。
「やはりですか、私を亡き者にしようとした黒幕はノルデン侯爵でしたか」
ちらりと俺を見る。
「ん?」
「私が王都に戻り、父にこの手紙を見せるまで護衛していただけないでしょうか?」
「カリーネから王女様の護衛は依頼されているから、魔族の王都までは連れていきますが」
「その後は?」
「その後は、何とかしてください。王女様にも派閥の者がおられるでしょう?」
「えっ、そこは『喜んでお手伝いします』ではないのですか?」
王女様が愕然とする。
「本当は『面倒臭そうだから嫌だ!』って言いたいんだけど。ただ、俺の伴侶候補が何か言いたそうなんだよな」
目を二人に向けると?
「そうね……たまたま助けられた私からしたら、たまたま困っている王女様を放っておくのはマサヨシらしくないわね」
「そうじゃのう、たまたま助けてもらった我もクリスと一緒の考えじゃのう」
「まあ、そういうことなので、手助けしますよ王女様」
「はい……ありがとうございます。本当にありがとうございます」
王女様は涙を浮かべ膝から崩れた。
不安だったんだろうね。やりすぎたかな?
「マサヨシ、回りくどいわよ?」
俺は頭を掻く。
「主よ、やりすぎじゃ」
「反省してます」
俺は王女様の前に行くと、片ひざをつき
「えーっと、改めて……王女様! いやイングリッド王女様! だったかな? 『あなたのために微力なれど尽力させていただきます』ってこれで良かったかな?」
「締まらないわね」
「締まらないのう」
「すんません」
俺はクリスとリードラに謝る。
「ぷっ」
王女様は噴き出したが、その後は口を押さえ、笑いをこらえていた。
「ありがとう、マサヨシさん。元気出ました。マサヨシさんって魔物には強いのに女性には弱いのね」
「そうですねぇ、特にこいつらには弱いですね」
つまり尻に敷かれているってわけだ。
「それでは王女様、今後のことを相談しますか?」
「はい」
「プラン的には、さっさと行って王様に手紙を見せるのが妥当だと思うんですけど」
「はい、それでいいと思います。手紙と一緒にノルデン侯爵の不正の証拠を父上に見せれば、相応の処置をすると思います」
「ああ、王女様がノルデン侯爵の証拠を持っているから狙われたってわけですね」
「そういう理由なんでしょうね。元々私がパルティーモや王都オウルに行ったのは人の国で勉強するという目的でした。しかし、たまたまなのですがオウルでノルデン侯爵の不正の証拠を手に入れてしまったのです。しばらくすると、素姓の分からないような者に襲われたりするようになりました。護衛が優秀でしたから、しっかり対処してくれましたが……」
王女様がちらりと女騎士のほうを見た。
女騎士も頑張ってたのね。
「じゃあ、明日にでも俺が魔族の王都まで行きますか? えーっと魔族の王都ってなんて言うの?」
「えっ? 知らないのですか?」
「えっ、有名なの?」
「マサヨシ、魔族の王都だから当然有名よ。殿下、マサヨシは色々あって、あまり都市の名前を知らないの。マサヨシ、魔族の王都はオセーレよ」
クリスが答えてくれた。
俺の地図上にオセーレの都市名が記される。
「オセーレね。明日そこまで行ってみるよ。王女様、別に人族の冒険者が街に入っても問題ない?」
「オセーレにも人族はいますから特に問題ないですね」
「それじゃあ、明日俺とリードラでオセーレに向かうかな。扉が使えるようにしておけば後が楽だろう」
「そうね、だったら、この宿屋に居る必要は無いわね。ここは引き払って家に帰る?」
クリスが提案してきた。
「確かに宿屋じゃ不自由だな。ゴブリンは討伐したから、もうここに居る必要もないな。家に帰るか?」
「家の方が気が楽じゃしな」
リードラも同じ意見のようだ。
「えっ、どういうことですか?」
王女様が聞いてくる。
「ああ、後でわかります」
俺たちは宿を引きはらう。
ドロアーテで買った服を着ているため、王女様と女騎士はちょっとお金持ちの家のお嬢さんってところかな?
王女様の服は、俺の収納カバンに入れておく。
当然、俺の着替えとホワイトドラゴンのローブは返してもらった。
そして宿の裏に行き、人が居ないのを確認すると例の扉を出し家に繋いだ。
「どうぞ我が家へ」
扉を開けると家のリビングなわけだが……。
王女様と女騎士は驚いて目を見開く。
「マサヨシ殿、これは?」
「どういうことですか?」
そして聞いてきた。
「この扉は俺専用のどこにでも行ける扉。ただ、一度行った所じゃないと行けないけどね。つまり、ここから俺の家まで繋いだからすぐに帰れるってわけだ」
「それじゃ、先行くわよ」
「ただいまなのじゃ」
クリスとリードラがリビングへ入ると、二人は唖然としてる。
「入らんの?」
「そういうわけじゃなくて……私が行っていいのかなと……」
王女様悩んでるねぇ……。
「私こそマサヨシ殿の家に行っていいのか?」
「部屋も余ってるから遠慮しなくていいぞ。ああ、何かあるような場所じゃないから、俺んちまで到達できる者を見てみたいかな? それにこのまま居ても変だから、とりあえず家に来てください」
俺はペコリと頭を下げ二人を引っ張ってリビングへ連れ込んだ。
うーん、俺のペコリはあまり可愛くない。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




