そして、帰宅。
誤字脱字の指摘、ありがとうございます。
あー体痛ぇ。あんまり寝られなかったなぁ……。
前から後ろからってのは語弊があるが、アイナと少女が体重を預けていたせいで、寝辛かった……。
二人は寝ていたので、起こさないように起き上がる。三つの焚火がリードラのお陰で適度に燃えていた。
「おはようなのじゃ、主よ」
起こさないようにリードラも小さな声で俺に声をかける。
「ああ、おはようさん。そんで、ありがとな」
リードラは俺に近づき体を預けてきた。
「まだ甘えておらんのでな」
「んー、もうちょっと我慢してもらえるかな? 甘えるなら、俺のベッドの上のほうがいいだろう? 周りにアイナたちも居るし」
「そうじゃのう、我は気にせんのだがアイナに注意されそうじゃの。わかった、家に帰ってからじゃ」
ふう、何とかなった……。リードラはなぜかアイナに弱い。
「ゴブリンがせしめた装備を見に行こうかと思うんだ。一緒に来るか?」
「暇じゃから付き合うぞ」
俺とリードラはゴブリン達が集めた物を館の中に見に行った。
無造作に積み上げられた剣、槍、こん棒、斧、弓等の様々な武器。そして皮、金属等のいろいろな種類の防具。その中に見覚えのある剣があった。
「こんなところにあったのか……」
俺は見覚えのあるレイピアを手に取る。
「主よ、それは女騎士に渡した剣じゃな。返すのか?」
「そういうこと」
「マメじゃのう。あの女騎士も候補になるのか?」
「んーそのつもりはないんだけど、そんな流れになってるねぇ」
クリスが言っていたオチってこっちのこと? それとも王女様のこと?
残った装備を置いていても仕方ないので、一応収納カバンに入れておいた。
何か魔法のかかったようなものは無いかと思ったが、特には無かったようだ。
金貨や銀貨もあったが価値がわからなかったのか無造作に置いてあった。
ん? 手紙?
更に興味が無かったのか何通かの手紙、いい趣味ではないが見てしまった。恋人への手紙や家族への手紙、そして商売の手紙。ただその中に蝋で封がされた手紙を見つけた。封を切り中身を見た。
あーこれ、王女様の殺害計画じゃん。「オースプリング王国側の護衛と入れ替わったあと、王女を亡き者にしろ」って感じで書いてある。 ああ、ゴブリンに殺されて、計画が履行されなかったのね。
何々? ノルデン侯爵?
王女様にとってゴブリンの発生が良かったのか悪かったのか……。これも収納カバン行きだな。一応王女に見せるってことで……。
あとは……無いな。
「特になさそうだから、たき火の方に戻るか?」
「人の目が無いのじゃから、甘えておけばよかったかのう」
「家まで待つってことで」
「仕方ないのう」
その後、近辺に居るゴブリンの上位種あと頭から魔石を抜いておく。
それが終わるとさっさとたき火の方へ戻った。
二時間ほどだったとは思うが周囲は明るくなっている。
女性たちは起き……てないな。少女とアイナは寝ていた。
マールとフィナは起きてるな。
「アイナ、起きろ」
「ん、おはよう」
目をこすりながらアイナが起きる。地面で寝たせいで体が汚れていた。
「お前も起きろ」
少女の体をゆする。
少女は目を開けキョトンとする。
顔を洗う代わりにアイナと少女に洗浄魔法をかけると、すっきりしたのか二人とも気持ちよさそうにしていた。
「パンしかないがこれで我慢してくれ」
再び女性たちにパンを配る。
「ゴブリンの死骸を漁りに魔物が来てもおかしくない。ゴブリンの残党もまだ徘徊している。だから食べ終わったら移動ってことで」
その声を聞いた女性たちは、急いてパンを食べだした。魔物とゴブリンの話を恐れたのだろう。まあ、ゴブリンに襲われた当事者だから余計か……。
後は冒険者ギルドに投げてしまうかな。
パンを食べ終わるとヒューホルムに向け歩く。
少女はリードラが背負った。
まあ、レーダーで確認しながらの移動だ。魔物に襲われることもなく順調に進む。
ただ長い。行きは数分、帰りは三時間か……便利な道具に慣らされた結果か非常に長く感じてしまった。
歩くのが当たり前なんだよな。
そして遠くにヒューホルムの入口が見えてくると
「ああ、町だわ。家族に会える」
「帰ってきたのね」
喜びの声が上がる。
安堵からか涙を流す者も居た。
街の中に入ると、女性をぞろぞろと連れたメタボな男が注目される。
人買いじゃないぞ?
その俺の後ろを歩く女性たちが、どういう者なのか住民たちが気付き始めた。
「行方不明になってた娘たちじゃない?」
「そうだよあの子はエーミルのところの娘じゃないか! 少し前からい居なくなったんだって嘆いていた」
「あの子もそうだ!」
住民たちは口々に声を上げる。
冒険者ギルドに入ると、ギルドマスターが俺に気付いた。
「まさか、討伐完了か?」
「後は、散らばったゴブリンたちを潰せば終わるかな? その辺は俺がやっとく。それで、この女性たちのことを任せようと思ってね」
「女性たちを?」
「ゴブリンに捕まっていた女性たちだ。この辺の村かこの街の出身だろう。まだ手を出されていない。だから、家へ帰してやってもらいたいんだ。俺のゴブリンの討伐報酬があるならそれを使ってもらってもいいからね」
「わかった、この女性たちはヒューホルムの冒険者ギルドで引き受ける。報酬も出すさ。あのバカ町長を蹴り上げてでもな」
おお、ギルドマスター強気ですな。
「まあ、報酬はどうでもいいが、女性たちのことはよろしく。じゃあ、このギルドマスター様が君たちの世話をしてくれるので頼るように」
色々聞かれるのも面倒だ、早く出るほうがいいだろう。
俺たちが外に出ようとすると、既に、女性たちの家族らしき人が冒険者ギルドの外で待っていた。
そして俺についてくる女性が奴隷たち以外に三人。
「俺んちに来るんだったよね? んー誰だっけ?」
「エトラです。そこに居る背が高いのが剣士のフリーダ、向こうの小さいのがシーフのドーガ」
「じゃあ、エトラって呼ばせてもらうな。そっちは適当に呼んでくれ。名前はマサヨシだ。で、エトラたちは俺たちと来るってことで良かったんだよな?」
「マサヨシさんと呼ばせてもらいますね。我々はマサヨシさんのところに行くつもりです」
「じゃあ、一つ契約を。俺たちの秘密を口外しないって契約でね」
「秘密ですか?」
不思議そうな顔をするエトラたち。
「ああ俺たちの秘密だ。俺は魔法使いでな、魔法関係で秘密にしていることが多い。仲間もそれに準じる部分がある。だからそういう秘密をばらされないように契約がしたいんだ。お前たちがゴブリンに囚われていたことも口外できないことになるな」
三人はしばらく相談をすると、
「契約します! 安定した生活ができるんですよね?」
「ああ、何をしてもらうかは考えていないが、衣食住は保証する」
「「「だったらお願いします」」」
「それじゃ、一度家に戻るかな?」
「今からですか?」
「ああ、今からだ」
人気のない裏通りに入ると例の扉を出す。
「何ですかこれは?」
フリーダに聞かれた。
「ああ、どこでも行ける扉。『一度行ったことがあるところなら』っていう制限が付くけど便利なんだ。あっ、これも秘密だぞ」
そして扉を開けると、向こう側には俺んちの庭が現れた。
「それじゃみんな向こうへ行こうか」
俺と奴隷たちが家の方へ渡ると、きょろきょろしながら冒険者三人組も扉を越えて庭へやってくるのだった。
「じゃあ、早速契約だ。守られなかった場合……考えてなかった。まあ、俺の言うことを何でも聞いてもらうってことにしておくか」
俺は契約専用の用紙に「マサヨシとその仲間の秘密を口外しない。口外した場合はマサヨシの言うことを聞く」という内容で契約書を三枚書いた。そして契約台を出す。
「それじゃ、エトラから来てもらえるかな? 契約台に手を置いて」
俺は魔力を通し契約が成立した。
「はい、コレで契約が完了。この契約書持っておいて」
フリーダ、ドーガに対しても同様に契約を行う。
そんなことをしていると、仕事も終わり暇そうなテロフが俺たちを見ていた。視線は……ああ、あのエルフの少女か……。美人だからなぁ。お前もイケメンだぞ?
「テロフ、ちょっと来い」
「何ですか?」
「あの女の子とそこの三人の世話をしてもらえないか?」
「えっ僕がですか? なぜ?」
「お前がそこに居たから」
「居なかったら?」
「んー、居なくてもお前になったかなぁ」
「どっちにしろ、一緒じゃないですか!」
「でも、あの子のこと気になったんだろ? 世話をするには女性も必要だ」
俺はエルフの少女を指差す。
あ、ちょっと赤くなったかな?
「まあ、そういうわけでお前に任せる。部屋は使用人用の部屋が余っていただろう? あ、これ渡しておくな。服とか寝具とか必要なものに使え。余ったらお前が管理しろ。俺が三人の仕事を思いつくまではお前直属な」
「えー、面倒ですよ」
お金の受け取りを拒否しようとするが無理やり持たせた。
「俺も面倒だからお前に丸投げだ。サラでもよかったんだが、お前の方が女性の扱いは上手いだろ?」
「いやいや、マサヨシさんには負けますよ」
「はいはい」
軽く流す。
「じゃあ、任せたぞ」
渋々ながら納得したようだった。
テロフは三人を呼ぶと、
「ここの居候のテロフです。マサヨシさんに無理やり押し付けられたわけですが、とりあえず上司らしいので、あなたたちより年下ですがよろしくお願いします」
そんな感じで自己紹介をして、少女を連れ四人を連れて買い出しに出かけた。
あの子、テロフを嫌がらなかったな。
まあ、あとはテロフにお任せで……。
「それじゃ、もう一度ヒューホルムへ向かうか。ゴブリンの残党の始末だ」
「主よ忙しいな」
「今回は仕方ないかな? カリーネに頼まれたからね。皆は家に居てもいいぞ? もう、ゴブリンを見つけて狩るだけだ」
「我はついてゆくぞ?」
「ん、私も行く」
「私も行きます」
「マサヨシ様、私もです」
皆ついていくと言う。
「そうだね、でもアイナとフィナ、マールは家に居て」
「何でですか?」
「マールには食事を作ってほしいんだ。美味しいものをね。あの冒険者とエルフの少女、後はフィナかな?お腹が空いていると思うから食べさせてもらえるか? これ使って……」
俺は収納カバンからコカトリスの卵とオーククイーンのブロック肉を出した。
「フィナは腹が減っていたんだろ? 一緒に食べろ」
真っ赤になるフィナ。
「あとはアイナは寝ろ。寝てはいたがベッドにはかなわない。いくらアイナが路上で寝てたとは言っても疲れが溜まっているんだろ? 目の下にクマがあるぞ」
アイナが目元を押さえる。
「うー、わかった。でも早く帰ってきてね」
「おう、急ぐぞ」
アイナの頭を撫でながら言った。
「リードラ、悪いがもう少し手伝ってもらえるか」
「任せておくのじゃ」
俺は再び扉を使いゴブリンの館付近に向かった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




