ゴブリンの群れ。
誤字脱字の指摘、助かっております。
俺はリードラから飛び降りると地面を転がり衝撃を和らげる。
目の前に落ちてくる人の男にゴブリンたちは唖然としていた。その間にカバンから地割の剣を取り出し攻撃を始めるのだった。
「悪いな、援護を頼む」
エンとスイが俺のメタボ偽装を解くとエンとスイが飛び出す。
「マサヨシさん、僕にお任せを」
「くっついていたから、お腹いっぱいなんですぅ」
エンはファイヤーボールを、スイはウォーターカッターを次々と放ち始めた。
「俺も頑張るかなぁ」
身長ほどもある地割れの剣を振り回す。素早く振るうと先端が音速を超えるのか「ドン」という音がして衝撃波が飛び出した。
その衝撃波がゴブリンと共に木々をなぎ倒す。
騒ぎに気付いたゴブリンたちが次々と俺の周りに集まってきたが、剣を振るう度ゴブリンたちが切れる。血が舞い霧のようになった。
赤い霧ならまだしも緑色の霧ってのはなあ……毒霧みたいで見た目がよくないね。
霧の奥からファイヤーボールらしき魔法が俺の目の前に飛んできたがエンが掴んで投げ返す。
奥の方で光球が弾けるのが見えた。
「ありがと、エン」
エンは俺のほうを見て笑うと再び攻撃に戻った。
遠くに大きな火球が見える。
おぉ、リードラやってるねぇ。黄色一色のレーダーに巨大な穴が開く。
ってやりすぎじゃね? 気にしていないふうだったが、ストレス溜めていたのかもしれないねぇ
リードラのブレスが弾ける度に衝撃波が俺を揺さぶる。
リードラは体重があるから大丈夫かもしれないが、俺はリードラに比べて体重が無いから揺さぶられるのだ。
「炎のことしか言ってなかったからなぁ」
仕方ないので放っておく。
エンのファイヤーボールとスイのウォーターカッターと俺の剣と……? 気付かなかったが何かの攻撃。しばらく攻撃している間に周囲からゴブリンの気配は無くなった。
「エン、スイちょっと来い」
「えっ、何ですか?」
「マサヨシさん、なんでしょう?」
エンとスイが集まってきた。
「指くわえて見てるけど、アレ何だ? 精霊っぽいが」
白い髪に白いゆったりとしたローブのような服。見た目はフィナぐらいの年齢、精霊は基本的に美形……ちょっと幼さが残る外見だった。
「あれは、風の精霊ですね、僕と同じ高位ですよ」
「何で手伝う?」
「多分、私たちが魔力で満たされているから羨ましいのですぅ。わたしたちもマサヨシさんに会うまではお腹が空いていたのですぅ。だから、魔力を得るために自分に合った場所、私なら川に住んでいたのですぅ」
「僕は早くからマサヨシさんに目をつけていたんだ。多すぎる魔力がこぼれていたからね。近づかないようにして魔力を吸っていた。マサヨシさんが僕を見えるようになって、魔力をくれるようになったら初めてお腹いっぱいになったんだ」
エンがそう言っていると、ジリジリと近寄ってくる風の精霊。そしてエンの耳元で何かを囁いた。
「この子、僕たちの仲間になりたいんだって。魔力もそうだけど魔力無しで剣の先から出る衝撃波がエアブレイドに似ていて惚れたんだって」
「力業に惚れるってどういうこと?」
「私はマサヨシさんの魔力に惚れました」
スイが抱き着いてくる。
ついでに魔力を吸ってるな……。
「この子は風を司る精霊ですから、風の現象を力業で行ったマサヨシさんに惚れたのかもしれませんね」
エンがそう言うと、うんうんと頷く風の精霊。
「で、仲間になりたいと」
再び頷く風の精霊。
「働いてくれるならいいぞ? 魔力を吸えるのはメタボな体に擬態している時だけな」
契約内容? を話すと。パーッと風の精霊の表情が明るくなる。
「擬態の仕方はそこの二人に聞いておいて。俺はわからん。んー、お前の名前はフウ。風の精霊って呼び辛いからこれで呼ぶぞ」
コクリと風の精霊は頷いた。
「この辺は終わったみたいだから元に戻るか」
そう言うと、フウを連れエンとスイが俺に纏わりついた。メタボ復活である。
ゴブリンを狩りながら群れの中心へと走る。リードラの攻撃は円で俺と精霊たちの攻撃は帯状に光点が消えていった。そして中心部に近づくにつれゴブリンたちの体格が良くなるのを感じる。魔法や弓が飛び交うのを感じ。ただ、精霊たちの攻撃力は高く俺自体のステータスもあり、俺が剣を振るうとゴブリンたちの血が舞うことに変わりはなかった。
どのくらい時間が経っただろう。レーダーに映る光点の塊は数匹程度の小さな塊になり全体に散らばる。 この程度の集団なら街の冒険者でも何とかできるだろう。
中央に大きな塊があるが、最初の大きさに比べると十分の一に満たない大きさのものが残るだけになっていた。
ただ、この集団が一番厄介なのだろうな。
集団に近づくにつれ今までにない大きさの炎の塊や、バリスタかと見まごう太い矢が多数飛んでくるようになる。炎はエンが打ち返し、弓はフウが逸らす。スイは確実にゴブリンの首を飛ばし、俺は向かってくるゴブリンだけを狩ればよかった。
ただ、デカいねこいつら。俺の倍ぐらいある。
「主よ、こっちはほぼ終わったのう」
空爆を終えたリードラが上から舞い降りてきた。
「お疲れさん」
俺は首を撫でる。
「上から見たのじゃが、みすぼらしいが館のような場所がある。あそこでゴブリンが産まれておるようじゃ。さしずめ工房かの? 周囲には柵と堀。入口の前に主の三倍はあろうかというゴブリン。あれがこの群れの頭じゃろう。それでも主の方が強そうじゃがの」
「そう?」
「そうじゃ、雰囲気が違う。強さで言えば、オーククイーンぐらいかの?」
「そう言われてもな、あれ瞬殺だったし……魔法で倒したしね」
「母様を倒したであろう? それに比べれば比較にならないほど弱いじゃろうて」
「そうだなあ、やってみるかね」
ふと気づくリードラ。
「主よ、精霊が増えておるが……」
「気にするな。それで、リードラはどうする。着替えぐらいはあるが?」
「そうじゃのう、人型で主と戦うのも面白いかも知れぬの。それにドラゴンの体じゃちと大きすぎて少々雑になっていかん」
リードラが人化し、美しい裸体が現れる。
「ほい、着替えだ」
リードラは俺が出した着替えを受け取ると、余裕を持った感じで服を着替える。
凄いよな。普通は恥じらうだろうに……。
「見せつけておるのじゃよ、主にのう」
ニヤリと笑うリードラ。
まあ、精霊たちと俺で十分対応できるので、安心して余裕を持っているのもあるようだ。
十匹以上のゴブリンが裸体に興奮して飛び出してきたが、エンとスイそしてフウに瞬殺されていた。
「準備できたのじゃ」
リードラはガンガンとガントレット同士をぶつけて戦う意思を表に出す。
「さあ、もう一仕事だ」
リードラと俺は精霊を連れ館の攻略に向かった。
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