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ゴブリンの森へ。

誤字脱字の指摘、助かっております。

「ああ、マサヨシ様どうでしたか?」

 マールが俺を見つけて聞いてきた。

「ああ、王女様は落ち着いていた。女騎士はクリスと入れ変わりで王女様の護衛だ」

「そのあと冒険者ギルドに行ったんだけど、収穫なしよね……マサヨシ」

「そうだなクリス。まあ、あの町長じゃギルドマスターも大変そうだ。とりあえず『自由にゴブリン討伐をする』と言っておいたから勝手に動いても大丈夫だろう」


 リードラが巨体を引きずり俺の前に来る。フィナとアイナが続く。

(ぬし)よ気付いておるか?」

「ゴブリンのこと? 斥候が偵察に来ているみたいだね。遠くから覗いてる」

 レーダーに数個の光点が見えた。森に面した方向に居る。距離にして百メートルぐらいだろうか? 

「気付いておるならよいのじゃ」

「マサヨシ、斥候たちを私とマールで狙撃しようか?」

 クリスが言ってきた。

「斥候を倒し続けたら、向こうは困るかね?」

「マサヨシ様、情報が入らないのですから足止めにはなるでしょう」

 マールが言った。

「でもな、攻撃してこないのはいいが、あまり放っておいてはさらに数が増える」


 ゴブリンは繁殖力が高い。生殖行為をした後、一か月もすれば子供が生まれる。成人するまでが三か月、子供は平均二人程度産まれるので、四か月で倍化する計算になる。雄雌が同等に産まれるわけではないが、単純計算で(つがい)が居れば一年でゴブリン十六匹になる計算だ。

 ゴブリンは比較的オスのほうが多く生まれる。(つがい)になれないゴブリンは人や亜人の女を襲い自分の相手を探す。そして生殖行為を行う。そして母がゴブリンでなくても生まれ出た子はゴブリンとなる。大きな群れになれば知恵のある上位種が女を組織的に捕らえ子を産む道具にしているらしい。生殖のための建物さえ作る。そうなると余計に増殖率が上がり、十匹程度のゴブリンの群れが二年もすれば千を軽く超える数になる可能性もあるのだ。つまり遅くなるほど敵は増えるわけである。

 ただ、増えれば増えるほど食べるものが足りなくなる。同族同士で強い者が弱い者を食べる。生まれた子さえも食べるらしい。数が増えなくはなるが強い者が生き残る。ある意味、蠱毒を作る過程に似ているような気がした。そうやって生き残った者が上位種になるのかもしれない。


「クリス、マールは壁に上がって狙撃してくれるか?」

「いいわよ」

「わかりました」

「フィナは二人の護衛。アイナは、危なくなったら町ごとシールドな」

「了解です!」

「ん」

(われ)は?」

「リードラは俺とゴブリン狩りだ。ゴブリンたちが動かないうちに潰す」

「任せるのじゃ」

 それぞれが頷く。


 俺はリードラの背に乗った。

 すると、

「ドラゴンライダーが居る」

「本当に居たんだ……」

 住民たちが俺を指差し口々に言った。

「目立ってしまうな……仕方ないか」

(ぬし)よ今の姿なれば目立つだろうが、(ぬし)には別の姿があろう?」

「上手く使い分けろって?」

「そういうことじゃ」

「へいへい」

 まあ、ちょっと知っている程度じゃ痩せた俺とメタボな俺が同一人物だとは気付くまい。近しい者には全バレだったが……。

「じゃあ、ゴブリンの居る森に行きますか」

 リードラは翼を一度はばたくと高度を上げ森へと向かった。


 ゴブリンの斥候の光が消える。

 さすがだねぇお二人さん。

 俺が手を振ると、居残り組の四人は俺に両手を振った。

 レーダーの端に映る光点。近づくにつれ点であった敵が面で光るようになる。

「冒険者ギルド、手を抜きすぎだろ……。人手が足りないとはいえこれは多いぞ」

 森の木の隙間から見えるのはゴブリンのみ、気付かれているのだろう、下から矢や魔法が飛んでくる。

「リードラ、ゴブリンを見つけたらブレスぶっ放してくれ。ただ、建物は置いておいて。人が居るかもしれない。俺は精霊たちのお陰で炎耐性あるから遠慮しなくていいからな」

「了解なのじゃ」

「それじゃ降りるから高度下げてもらえるか?」

 そう言うと、リードラは森の木々のすれすれを飛ぶ。

「じゃ、行ってくる」

「気をつけるのじゃぞ」

「そっちもな」

 俺はリードラの背から飛び降りた。

 

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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