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ヒューホルム冒険者ギルド

誤字脱字の指摘、ありがとうございます。

 ヒューホルムの冒険者ギルドに到着すると中から大きな声が聞こえる。

「領主様には連絡は取ったのか?」

「はい、ギルドマスター、冒険者のパーティーを向かわせています」

「他の冒険者たちは?」

「魔法や弓で遠距離攻撃できる者は外壁で、近接攻撃の者は入口の扉を守るように配置してあります。ただ、戦力差が大きく。このままではこの町が制圧されても仕方ありません」

「何でこんなところにゴブリンの群れが……」

 ギルドマスターと数人の職員が居る小さなギルドだったようで、ゴブリンの攻撃に対処しきれていない様子だった。


 俺を押し退けるように、一人の小柄な男がギルドに入る。

「ギルドマスター! この街の防衛はなんとかなりそうなのかね」

 頭に響く甲高い声で捲し立てるように言う。

「町長、そんなことわかるはずがないでしょ? さっきの襲撃だって、どうやって防げたのかもわからないのに……」

 あの小柄な男が町長ですか……。

「ドラゴンライダーが出たと言っていたが、探せばなんとかなるんじゃないのか? ドラゴンは町の広場に居るという話ではないか。ドラゴンの周りにいる女どももドラゴンライダーの仲間ではないのか?」

「すでに聞きましたが教えてもらえませんでした。居るかどうかわからないドラゴンライダーを探すよりは、防衛を少しでも強化するほうが重要です。そのために多くない冒険者を出して冒険者ギルドも手伝っているんです」

 あっ、俺のこと?

「その冒険者たちが早めにゴブリンを退治しておけば、こうはならなかったのだ」

「今はそんなことを言い争っている場合ではありません。何とか今の対策を……」

 結果の出ない話が続く……。


「お邪魔しても?」

 俺はギルドマスターと言われた男に声をかけた。

「お前は何者だ?」

 それを町長が遮る。

「私はゼファードの冒険者ギルド、ギルドマスターに指名依頼を受けてこのヒューホルムへ来た冒険者です」

「ランクは?」

「Cランクになります」

 外見はいつも通りのメタボルックである。

「今さら、Cランクパーティーが一組助けに来たと言っても手遅れじゃわい!」

 町長が憎まれ口を叩く。

 町長結構鬱陶しいぞ。

「私の依頼は、イングリット殿下の護衛とゴブリンの殲滅ですから町は関係ないんですけどね」

「お前のようなCランクの者がイングリット殿下の護衛とは、ゼファードもよっぽど人材不足なのだな。ああ、そういえばあそこのギルドマスターは女だったな、だから女ってやつは……」

 やっぱり鬱陶しい。カリーネのことをバカにされたようでイラっとする。

「あんたのようなものが町長やってるこのヒューホルムも人材不足だろうに……」

「なっ、お前、この町長である私になんてことを……」

 顔が赤くなる町長。

「俺はゼファードのギルドマスターからの指名依頼を断れなくて来ただけです。町長様がおっしゃる通りの所詮Cランクの冒険者ですから、俺はこの町と関係なく動きますね。このクソみたいな町長のために動くなんて、まっぴらだ!」

 手をヒラヒラさせながら外へ出ていこうとする。その時ギルドマスターが何かに気付いたようだった。


「ちょっと待ってくれ! 名前を教えてくれないか?」

 ギルドマスターの声が聞こえる。

「何でです? ちんけなCランクの冒険者の名前なんて聞く必要が無いのでは?」

「いや、知りたい。昨日入った情報だがゼファードのダンジョンを攻略した者が居ると聞く……その者は黒のクロースアーマーを着た男とその女のパーティーだ」

 そういえばローブは女騎士に渡したままだったかな?

 俺の黒のクロースアーマーが目立つ。

「それに、綺麗な女を連れていることが多い」

 クリスも目立つよなぁ……。

「あと、太っている」

 これは精霊さんに頼んだ姿なんだが……今の姿はメタボだ。

「だから?」

「お前はマサヨシじゃないのか?」

「そうだけど、だから何?」

「だったら、町を守るのを手伝ってくれないか! 見ての通り人手が足りない。今のままでは町が終わる……」

 縋るように俺を見るギルドマスター。

「えっお前、あのダンジョンを攻略したのか?」

 驚く町長。

 町長は無視だな。


「俺はそこのクソみたいな町長のために動くつもりは無いよ。ただ、イングリット殿下がこの町に居るから守るしかないってのが本音かな」

 更に赤くなる町長。

「だったら、手伝ってもいいだろう?」

 俺は頭を掻く。

「んー、元々手伝うつもりだったんだけど、町長にあんな風に言われたら嫌になると思わない? だから、俺たちなりに勝手に町を守るために動くよ」

 そう言って冒険者ギルドの外に出た。

 情報欲しかったんだが自分で何とかしないとな。


 クリスが俺の横に立つと

「結局助けるんじゃない。素直じゃないのね」

 耳元で囁いた。

「素直になれる雰囲気じゃなかっただろ?」

「そうね」

「まあ、勝手に動くって宣言したんだ、せいぜい勝手に動かせてもらうさ」

 俺はリードラのもとへ戻った。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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