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ヒューホルム到着。

誤字脱字の指摘、ありがとうございます。

 俺は女騎士を背負ったままヒューホルムの入口から中に入ると、そこにはクリス以外の奴隷たちが集まっていた。

 中央の広場にはドラゴンのままのリードラが……。

 大きな魔獣が居ることで住民が怯えているようだった。

 俺はリードラに近づく。

「悪いリードラ、損な役回りで……」

 リードラは首を伸ばし俺の耳元で、

(われ)には(ぬし)がおるからの……いいのじゃ」

 口角を上げ小さな声で言う。

 おっと、女騎士に聞かれたかな? 

 女騎士の目が大きく見開かれていた。

 俺がリードラの喉を軽く撫でると気持ちいいのか目を細める。


 俺がリードラを相手しているところを見つけ、アイナたちが近寄ってくる。

「ん、お疲れ。マサヨシ」

「アイナ、そっちは?」

「クリスたちはゴブリンを狩りながら無事ここに到着。私たちは合流してこの町に降りた」

「そっちもお疲れさんだな」

 俺はアイナの頭を撫でる。

「私も頑張りました」

「マサヨシ様、私もです」

「お疲れさん」

 フィナとマールの頭も撫でた。気持ちよさそうにする二人。

 背負われている女騎士を見て、三人の奴隷たちはあまりいい顔をしていないようだ。

 そう言えば皆フォランカで面識があるんだよな。あの時は高圧的だったからいいイメージは無さそうだが。


 三人に見られ居辛くなったのか、

「そろそろ降ろしてもらいたい……」

 背中から小さな声が聞こえてきた。

「ああ、悪い」

 俺が背に回していた手を離すと女騎士はするりと俺の背から降りる。

 柔らかい感覚が無くなった。

 役得終了。

 俺の前に来ると

「マサヨシ殿、助けてもらってありがとう」

 と礼を言ってきた。

「たまたまだよ、たまたま。俺の手の届くところにお前が居ただけだ」

 女騎士は腰に手を当て沈んだ顔をする。

「せっかくもらった剣を失ってしまった」

「あれはいいんだ。元々俺のものじゃないしな。気にするな」

 女騎士の頭にポンと手を置いた。

 ありゃ? 三人にジト目で見られてる? 


「アイナ、王女様は?」

「あの宿屋に居てもらってる。面識があるから……何もないとは思うけど話し相手兼護衛」

 アイナが指差す先にはレンガ造りの二階建ての建物があった。

「ちょっと王女様のところ行ってくる。お前たちも来るか?」

「私は行かない。リードラが可哀想」

「そうです、私もここに居ます」

「マサヨシ様、リードラが住人と何かあってもいけませんから、私たちはここで待ってます」

 アイナ、フィナ、マールはリードラの方へ向かった。

 俺と女騎士だけが残る。

「お前は行くんだろ?」

「ああ、報告があるからな」

「じゃあ、行くか」

 俺と女騎士は宿屋へと向かった。


 宿屋の受付で王女様の部屋を聞く。二階の階段を上がって左手一番奥らしい。

 教えられるまま部屋に行き、ドアをノックする。

「マサヨシだ、開けてくれ」

「あっ待って!」

 クリスの声が聞こえると、パタパタと小走りな足音が近づき急に扉が開いた。

「マサヨシさん、ご無事だったのですね!」

「この通りです」

 俺は胸を張って元気なところをアピール。

「ラウラさんも、私のために……」

 王女様は女騎士を見ると目を伏せ悲しげな顔をする。

「イングリッド殿下、それが私の仕事です。殿下以外の者を守りきれず申し訳ありません」

「謝ることはありません。まずはお互いに生き残れたことを喜びましょう」

 そう言って王女は女騎士を部屋に導き入れた。

 俺は女騎士に続き王女の部屋に入る。

 シングルベッドが二つ並び、収納できる棚がいくつかある程度のシンプルな部屋だった。

 俺とクリス、女騎士と王女様でベッドに座る。

「マサヨシ、これからどうするの?」

「そうだなぁクリス。とりあえず、ゴブリン達の殲滅かな? それが依頼だからね。ただ、数が多い」

「上位種は居なかったけど、私たちもここに来るまで百近くは倒したと思うわ」

「その辺はここのギルドに聞こう、何か情報を持ってるかもしれない」

 一度ギルドに行くか。


「マサヨシさん、私は?」

 王女様が聞いてくる。

「王女様はここで待機ですね。表立って戦う事も無いと思いますが?」

「わたしも魔法が使えます。クリス様が戦っているのに。私が戦わないわけには……」

「クリス様? ああ、そういえばクリスは王女だったんだよな?」

「また忘れてたでしょ?」

「すまん、忘れてた。王女って感じで付き合っていないからな。『クリス殿下』のほうがいいなら変えるけど?」

「嫌よ! かたっ苦しい王城から逃げるために冒険者になったのに、今更『殿下』なんて呼ばれたら体が痒くなる」

「ずっと『クリス』だから呼び方を変えろって言われても面倒だ」

「あなたにはそのままで呼んでほしい」

「ゴホン」王女様の咳払い一つ。

「仲がよろしいようで」

 こんな時にイチャイチャするなって? 

 若干ジト目の王女様。

「ああ、クリスは俺の奴隷だから」

「えっ、クリス様はエルフの王女だったはず」

 そりゃ驚くだろうな。

「奴隷にされて困っていたところをマサヨシに助けてもらったの。それからの縁……」

 クリスが説明をする。

「詳細はゴブリンを殲滅してからってことで……。とにかく王女様はこの場で待機。ラウラさん? だったっけ?」

「はい!」

 俺に呼ばれて返事をする女騎士。

「王女様の護衛を頼むよ。剣はミスリルじゃないがこれで……」

 収納カバンにあった鉄のレイピアを女騎士に渡した。

「ありがとう。これで殿下の護衛ができる」


 女騎士が手を上げる。

「何?」

「私たちはここで魔族側の護衛と入れ替わる予定でした」

「来ないと思っていた方がいいんじゃないかな。魔族の騎士がどの程度の強さかは知らないがゴブリンに数で潰されている可能性は高いと思う」

「魔族側とは今日交代の予定でしたから、マサヨシ殿の言う通りなのかもしれません」

 女騎士は俯く。

「この部屋は王女様とラウラさんで使ってください。今後のこともあるので私はクリスと冒険者ギルドへ行ってきます」

「わかりました。よろしくお願いします」

 そう言う王女様の声を背に俺とクリスは部屋を出た。

「クリス、一部屋確保しておくか」

「そうね、扉を使うにしろ部屋があったほうが便利だと思うわ」

 宿の受付で空きを聞くと隣に部屋があるということでそこを使わせてもらうことにする。

「情報収集に冒険者ギルドへ向かいますか」

 俺とクリスは宿屋を出て冒険者ギルドへ向かった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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