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指名依頼。

誤字脱字の指摘、ありがとうございます。

 ギルドへの呼び出しから一週間が経ち、女騎士にやらかした件についての追及がやっと下火になった。お陰でリビングのソファーに座りのんびりとしていたのだが……。


 バタン、タッタッタッタ……。

 ああ、カリーネだ。

「マサヨシ、貴方へのギルドマスターとしての指名依頼よ。ここから馬車で六日分の距離を今からすぐに行ける?」

「リードラが居れば行けると思うぞ? にしてもどうしたんだ?」

「魔族の国の国境付近にヒューホルムという町があるんだけど、そこでゴブリンが大発生し、それが町に向けて動き始めたって報告があったの。ゴブリンの討伐依頼は出ていたみたいだけど、敵が弱いからって冒険者が放置していたみたい。ゴブリンって繁殖力が凄いからその間に増加したのね。冒険者が確認しただけでも数千匹。もっと居る可能性もある。上位種の可能性もある。一番困るのはイングリッド・レーヴェンヒェルム殿下がそろそろヒューホルムに到着するのよ。だから、殿下の護衛とゴブリンの殲滅を依頼したいの」

 懇願するような目。

「カリーネからの依頼じゃ断れないだろ? 行くよ」

「報酬は私じゃダメ?」

「急いでる時に、バカなことを言わない!」

 そう言うと俺はソファーから立ち上がった。 


「おーい、ちょっとみんなも集まって!」

 俺が大きな声で呼びかけると、

「何じゃ(ぬし)よ」

 皆が二階の部屋から降りてきた。

「ちょっとギルドマスターのカリーネ様からの依頼だ。ここから六日ほど馬車で行った所にある町、ヒューホルムに居るであろう王女様の護衛とゴブリンの殲滅。数千匹は居るらしい。とりあえず、俺とリードラ、後アイナで行こう」

「で、私たちは?」

 クリスが聞いてきた。

「走ってヒューホルムまで来てくれ、お前らの速さなら数時間でたどり着けるだろ?」

「扉は使わないので?」

 マールが聞いてきたが、

「どちらにしろ一度その場所に行かなければ扉は使えない。王女と騎士団に扉を見せていいのかどうかも迷うところだ。それにお前らにはゴブリンを狩りながらヒューホルムに来てほしい。ゴブリンならお前らで瞬殺だろ? ただ上位種が居る可能性がある。危なかったら逃げてもいいからな三人のリーダーはクリスに任せた」

「わかった、任せて」

 クリスは胸を張る。


 俺たちは出動の準備を終わらせた。と言っても俺たちはかかって数十分、クリスたちが数時間程度の旅だ。装備を着け水を準備する程度である。十分程度で終わる。

「カリーネ行ってきます」

「気を付けてね」

 カリーネの言葉に見送られ、例の扉を出しゼファードの外に出た。

 そして、人目につかない場所を探す。

「じゃあリードラ、ドラゴンに戻ってくれるか?」

「わかったのじゃ」

 そう言うと陰で服を脱ぎ純白のドラゴンに戻る。手にはヒヒイロカネのガントレット。

「おお、カッコいい」

 ガントレットを誉めると、

「じゃろう? (ぬし)に貰ったものじゃ、悪いわけがない」

 と口角を上げる。

 リードラは俺とアイナを背に乗せ上空でホバリングする。

「じゃあ、行くぞ。ヒューホルムでな」

 俺は地上組へ大きな声で話しかける。

「ええ、向こうでね」

「はい、急いで行きます」

「マサヨシ様、待っててくださいね」

 クリス、フィナ、マールが手を振って答えた。

「さあ行こうか、ヒューホルムへ」

 リードラは翼を一度羽ばたかせると、一気に加速した。


 ヒューホルムに向け直線で移動である。カリーネとの会話で俺のマップ上にヒューホルムは表示されていた。

「もっと早く行けるか?」

(ぬし)よ任せろ!」

 翼を畳み加速する。加速感を感じるが、特に問題はない。アイナも問題ないようだ。

 速度が上がったせいかリードラの後方に飛行機雲を引く。


 あれよという間に外壁に囲まれた町が見えてきた。

 ここは円形なんだな。外壁の高さは五メートル程度だろうか防御するにはちょっと貧弱に見えた。

「マサヨシ、あれ」

 アイナが指差す先に、砂糖に群がる蟻のようにゴブリンが町を囲んでいた。小さな点が無数に見える。レーダーを確認すると、一面が魔物を表す黄色だった。町に誰が居るのかなんてわかりはしない。

「これがゴブリン。数千と聞いていたが万単位で要るんじゃないのか?」

「マサヨシ、あれでは耐えられないのじゃ」

 ヒューホルムの外壁の周りに無数のゴブリンが張り付いている。中には梯子を持っているやつもいる。

(ぬし)よゴブリンは旨くない。焼き殺すのが一番じゃ」

 そう言うと、リードラは高度を下げ特大のブレスをゴブリンの中に放つ。放たれた火球は着弾すると炎と共に衝撃波が広がりゴブリンをなぎ倒した。


「やるねえ」

「当然! (われ)(ぬし)のドラゴンじゃからの、強くなければならんのじゃ」

「後で甘えてよし!」

「やったのじゃ」

 嬉しげにリードラが言った。

「だったら、私も!」

 アイナに気合いが入る。アイナが前に出るのは珍しい。

「シールド」

 そう言うと町が外壁に沿ってドーム状の殻に覆われる。

 境界線上にいたゴブリンは真っ二つになった。外壁とシールドの間にいるゴブリンは、数もそう多くないうえに混乱している。町の防衛部隊でもなんとかなるだろう。

「凄い?」

「ハイハイ、凄い。後で甘えてもいいよ」

「ん、当然」

 胸を張るアイナだった。


「さて、俺の番かな? リードラは上空から適宜ブレスで攻撃。アイナはリードラの背にいてシールドの維持」

「わかったのじゃ」

「ん」

「俺はここから飛び降りてゴブリン退治。弓持ってるやつもいるから、リードラはアイナ守ってね。じゃあ、いってきまーす」

 そう言うと、リードラの背から飛び降りる。

 ゴブリンのど真ん中だ。どこを向いてもゴブリンだらけ、ちっちゃいピ○コロやデスラ○みたいな顔が回りを囲む。

 んー。お友だちになれそうにない。

 高速移動を開始すると

「エン、ちっちゃいファイヤボールな」

「はい」

 マシンガンをイメージしエンに助けてもらってファイヤボールを連射した。

 おう、ボトム○。

 白いローブを靡かせながら城壁周辺にいるゴブリンを倒していく。上位種は見かけられず、一発当たれば爆風により穴が開き倒れていった。


 ゴブリンはアイナのシールドにより攻めあぐね、その間に何百と言うゴブリンがリードラのブレスや俺のマシンガンで数を減らす。

「ウォーーーーッ、ウォーーーー」

 何かの叫び声が聞こえる。合図だろうか?

 ゴブリンたちはビクリと震えると、森がある方向へ逃げ出した。

 ふう、一段落かな。地面には黒こげたゴブリンが無数に散らばる。


 ふと見ると見覚えのある馬車の残骸。中には白い光点が一つ。

 そして護衛の騎士の死体。その中に女騎士の死体がない。ちょっと離れたところで白い光点が動いていた。

「あいつ捕まったかな? お前のかける迷惑はこれじゃないだろうに」

 俺はまず壊れた馬車の中から王女様を見つけ出した。鍵がかかっていたが無理やり壊す。

「お怪我は?」

「マサヨシさん助けに来てくれたのですね」

「カリーネからの依頼です」

「それでも嬉しい」

 王女様は俺に抱きついてくる。

「ラウラさんは?」

「私を馬車に隠すと、馬車の扉に鍵をかけ戦いに出られました。囮になったのかもしれません」

 騎士だからって自己犠牲も程々にしろ。

 

 王女様は俺に抱きつき震えている。

 これじゃ、女騎士を助けに行けないな。

「リードラ、降りてきてくれ」

 呼ぶとすぐに俺のところに来てくれた。当然アイナと一緒だ。

「王女様はこのアイナと一緒にドラゴンに乗って上空待機してください。こいつらといれば大丈夫。私は捕まったラウラさんを追います」

「わかりました、やはりドラゴンライダーはマサヨシさんだったのですね」

王女様はにこりと笑う。

「リードラ、クリスたちが来たら一緒に町に入れ。ドラゴンのままでいい。アイナは怪我人が居たら治療してやってくれ。町に入ってからでいいから」

 リードラとアイナは頷く。

 アイナに促され王女様がリードラの背に乗ったのを確認すると、全力で走りだした。まあ、リードラに勝てるゴブリンなんて居ないだろうから安心だ。

 さあ、女騎士様を助けに行きますかね。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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