どっちでもいいらしい。
誤字脱字の指摘、助かっております。
「おう、サラおはようさん」
食事を作るサラは早起きだ。もう、我が家の台所を任せるに問題ないレベルに達している。
「おはようございますマサヨシ様。マール様は?」
「酔い潰れているんじゃないかな? まあ、寝かせておいてやって、今日は俺も手伝うから」
「はい」
「何か気付かない?」
俺が聞くと、
「何かあるんですか?」
サラが首を傾げる。
「ちょっと待ってね……」
俺は精霊による擬態を解除した。
「えっ、マサヨシ様が痩せました」
サラが俺を見て驚いたが……。
「そんだけ?」
「そうですね、リアクションとしてはそれだけですね。まあ『細くなったかな?』って程度です」
そんな話をしていると、
「二人で何を騒いでおるのじゃ?」
そう言ってリードラがやってくる。
「マサヨシ様が痩せました」
「ああ、サラよそれは呪いが解けたのじゃ。マサヨシは呪いで太っておったのじゃ」
「それは知っていたのですが、反応が薄いことにマサヨシ様が不満な様子で……」
「期待するほど驚かなかったことが不満か? 皆お前を毎日見ているのじゃ、声音や雰囲気、体型が変わっても変わらぬものもあるからの、この家の者は間違えんじゃろうて」
「リードラ『誰じゃ!』って言っただろ?」
「言うたが魔力と雰囲気は一緒じゃから、主だとわかったぞ? それに呪いが解けたことに気付いたじゃろう? そのあと『気付かない』と言うたのは、主の太っておった時に擬態した姿であって、今の姿じゃないしのう。主が勝手に勘違いで、今の痩せた姿で誰も気付かないと思っただけではないのか?」
「うっ、なにも言えない」
その通りだ。
すると階段からクリスが降りてきた。俺とサラ、そしてリードラの話がうるさかったのかもしれない。
「どうしたの? 頭痛いんだから静かにしてよ!」
そして俺を見て
「ああ、呪いが解けたのね……。精悍になったけどあまり変わらない」
と言った。
「わかるのか?」
「わかるわよ! わからないと思ってるの?」
思ってましたすみません。
「凄いな」
「だって……ねえ。あなたのこといつも見てるから」
クリスが俺をじっと見る。
「おっおお……」
そんなこと言われたら照れるだろうに……。
騒ぎのせいで目が覚めたのかエリスとアイナも起きてくる。
「えっ、誰? ああマサヨシさんか、おはようございます」
俺を見て一瞬驚いたが、普通に挨拶してくるエリス。
「あれ? マサヨシでしょ? おはよう、呪い解けたの? 細くなってる……残念。私は前のマサヨシのほうがいい」
アイナがいつも通りに話してくる。
するとフィナも降りてきた。
「マサヨシ様、おはようです。飲み過ぎたせいで頭が痛いのです」
「おう、おはよう」
フィナは二日酔いのようだ。
「あっ、呪い解けたんですね。細くなってカッコいいです! 抱き心地は前のほうが多分いいです」
やっぱり普通に返してくる……
「あっすみません。遅くなりました」
マールの白髪が珍しく跳ねている。
「マサヨシ様おはようございます。呪いが解けたのですね、おめでとうございます」
「大丈夫か? 髪が跳ねているじゃないか」
「ちょっと昨日やりすぎましたね……起きられませんでした。急いで準備したらこんな感じです」
テヘヘな感じでマールは答えた。
「あれ? カリーネは?」
「カリーネが最後まで我と飲んで残っておったからのう……まだ寝てると思うぞ?」
リードラが答える。
「仕方ない、寝かせておくか」
そんな話をしていると、カリーネが起きてくる。
「ああ、マサヨシ、呪いが解けたの? そんな格好になっちゃったんだ。どっちもいいわね」
「わかるのか?」
「わかるでしょ? 雰囲気が一緒だし」
そんなもんかねぇ……。
「主よ、結局皆気づいたであろう?」
リードラがしたり顔だ。
「そうだな、皆に気づかれてしまった。精霊による擬態は、まあ体型が変えられるだけでも良しとするか……」
ふと思う……。
「今の俺と前の俺どっちがいい? 今の人?」
えっ誰も挙げない?
「前の人」
「サッ」と全員が手を挙げる。サラやエリスまでも……。
仕方ないのでエンとスイにもとの姿にしてもらうと、
「あー落ち着く。マサヨシはこうじゃなきゃ」
クリスに言われた。
皆が「ウンウン」と頷く。
「でも、どっちでもマサヨシ様はマサヨシ様です」
フィナが言う。
「そうね、私達にとって結局マサヨシの体型なんてどうでもいいのよ、太ってようが痩せてようが……」
「そうじゃな、それが究極じゃな」
リードラが言う。
「呪いが解けマサヨシ様が痩せたことよりも、マサヨシ様の枷がなくなったことが嬉しいのです。我々もマサヨシ様も前に進めるのですから」
嬉しそうにマールが言う。
「色々解決して私をマサヨシの妻にする」
アイナが一歩前に出てニヤリとする。
願望が漏れてるぞアイナ。
「はいはい了解しました。今あることを解決して前に進むようにするよ。ただ、まずは朝飯食べない? あっその前に、アイナ、キュアーを……。二日酔いばっかりだからね」
「ん」
そう言うとアイナは二日酔いの面々にキュアーを唱える。面倒臭いのか複数一度にキュアーを使っていた。
「ふースッキリ、ありがとアイナ」
「気持ちいいです、ありがとうアイナ」
「我は酔うておらんがの」
「これで、メイドの仕事ができます。ありがとうアイナ様」
「ありがとう、アイナちゃん。これで誰かさんが増やした仕事がはかどるわ」
口々にアイナに礼を言った。
二日酔いが回復した成人女性も手伝って朝ごはんを作る。そしてみんな揃って食べたのだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




