朝起きたら……
誤字脱字の指摘、ありがとうございます。
何事もなく風呂が終わりベッドに入って妻のことを考えた。今までのことを振り返ったと言うほうが正解かもしれない。ただ、結論としては……、
「妻よ、お前には『私を忘れろ』と言われたが俺にできるはずもないだろ? だから片隅に置いておくぞ」
そんな独り言を言って目を瞑ると、疲れていたのか知らない間に寝ていた。
そして何事もなく夜が明ける。奴隷やカリーネの襲撃も無く気持ちのいい朝だった。
ここに来なかったということは、リビングでずっと酒盛りやっていたのかね。
普段着に着替えてリビングに行くとリードラが一人で飲んでいた。
「おはようさん、リードラ」
「ああ主か、おはようなのじゃ。潰れた者は部屋に戻しておいたぞ」
そう言うとリードラが俺の方を振り向いて固まる。
「……誰じゃ?」
「誰って俺だろ?」
「漂う魔力は同じなんじゃが、格好が違う。こう、もっと丸かった気がするのじゃが……ああ、呪いが解けたのか」
「ん?」
俺は洗面台の鏡へ向かい、自分の姿を見ると
「お久しぶり二十代の俺」
メタボ検診に引っかかることのない若き日の俺が映っていた。そういや着替える時になんか違うなって思ったんだよね……。
「本当に呪いが解けたのか……知らなかった。これじゃ誰も俺ってわからないよな。精霊たちはどうなのかね?」
俺は精霊を見る。
「痩せた姿で俺ってわかる?」
コクリコクリと火も水も頷いた。
「どっちがいいと思う? 前と今」
興味が無いようで「わからない」って感じで首を傾げた。
「お前らの力で、俺を元の姿にできる?」
精霊たちが同時に俺に纏わりつくと、体脂肪の少なかった俺の体がみるみる元のメタボな姿に戻った。
「やるねぇ精霊たち」
そう言うと俺の頭に声が聞こえた。
「「やるでしょ? 私(僕)たち」」
「誰、お前」
俺に声かけた者へ聞いた。
「私は水の精霊ですぅ」
ちょっと甘え声な水の精霊。
「僕は炎の精霊」
僕っ子?
「火じゃねえの?」
「はい、僕は炎の精霊です」
「今まで何で話しかけなかった?」
「『話せるかな?』と思ったのは、最近ですね。二回目に魔力を貰った時。魔力を貰ったことでマサヨシさんとの繋がりが強くなったのかもしれません」
炎の精霊が言う。そして
「私もあんなに濃厚な魔力は今まで貰ったことないですぅ。マサヨシさんの体形を戻したいって話だったので協力したわけですぅ。今マサヨシさんに触れて魔力を貰っていますから、余計に繋がっているのかもしれないですぅ」
水の精霊が言った。
「現在絶賛魔力を頂いているわけで……と言うかこんなに吸って大丈夫ですか?」
炎の精霊が心配そうに聞くが、
「どんなだろ?」
ってことで
「ステータスオープン」
見るとステータスの魔力は上限で減っていない。
「魔力の回復量の方が上回ってるから問題なし」
「これだけ魔力を貰ったら、そのうち実体化するかもしれないですぅ」
変なフラグを立てるな……。
「ああそれと名前を付けるぞ? 炎の精霊お前は『エン』。水の精霊お前は『スイ』な」
ただの漢字の音読みである。
「僕はエン」
「私はスイ」
戸惑ったように自分の名を呼ぶ。
「どうした?」
「精霊に名が付くなど聞いたことが無いので……」
「炎の精霊と水の精霊って言うのも言い辛いだろ? その名で呼ぶからよろしく」
「「はい(ですぅ)」」
「まあ、とりあえずこの格好でリードラの所帰ってみるか。反応がどうなるのやら……」
元のメタボな体形でリードラの所に戻った。
リードラが目を細めて俺を見る。
「主よ、精霊で誤魔化したのじゃな」
一発でバレた。
「わかるのか?」
「主の周りに精霊の魔力を感じるからの」
当然という顔でリードラが言った。
「俺が痩せてるってバレるかね?」
「クリスやマールなら気付くかもしれん。二人は精霊が見えるからの」
身内になら仕方ないか……。
「人なら、まず気付かれんじゃろうな。それでもエルフや精霊を感じる少数の者には気付かれるかもしれん。まあ、バレるにしろバレないにしろ。まずは皆に言っておいたほうが良いぞ? 気付かれないからと痩せているのを隠すのはいい趣味ではないのじゃ」
「だよね。飯が終わってからでも披露するよ」
「わかったのじゃ。それまでは黙っておこう。そのほうが面白そうじゃからな」
そう言ってリードラはニヤリと笑った。
リードラもいい趣味ではない気がするがね……。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




