ゆっくりさせてもらえないらしい。
誤字脱字の指摘、ありがとうございます。
隣で成人女性が酒盛りをしている中、俺は風呂から出てきたアイナとエリスの髪を乾かしていた。
エリスが終わり、アイナの髪を乾かしている時、
「お母さま遅いね」
エリスが心配そうに言う。
「そういや、早く帰るって言ってたんだがな」
「バタン」
転移の扉がある部屋から大きな音が聞こえる。
「タッタッタッタ……」
走る音が近づくとカリーネが現れた。「噂をすれば」というやつか?
「おうお帰りカリーネ。そんなに急いでどうした?」
カリーネは、火酒のグラスを持つと一気飲みして、
「キッツいわねこのお酒。で、あなた何やったの?」
と言った。
「はぁ? いきなり何だ? 何かしたとは?」
「フォランカからあなたの身柄を確保しろという早馬がきたの」
心当たりは……大いにあるな。
「ああ、俺は何かしたつもりはないんだけど、向こうはどう思うかだよな」
「向こうとは?」
「王都騎士団」
「何したの?」
「んー、高圧的に言われたから、高圧的に返したってトコかな?」
「もう、どうするのよ」
「向こうが来るまでにはまだ時間があるし、俺が旅立ったことにすれば? どうせ、この家までは来れないだろ?」
腕を組み考えるカリーネ。
「それでもいいけど」
ああ、カリーネには立場があったか。
「悪い、お前のこと考えてなかった。ギルドマスターとしてはあまりよろしくないよな。一応身柄を確保したってことにしておいてくれ。行くから」
「嫌じゃないの?」
「だってお前が困るだろ?」
「困るけど……。あなたが嫌だと言ったら仕方ないかなと思って……」
心配してくれているのか?
「ギルドマスターとしてのカリーネで指示を出せばいいよ。気にするな」
「ごめん……だったら命じます。三日後の午前中にゼファード冒険者ギルドに出てくること!」
「おう、承った。心配しなくても行くからな」
俺はカリーネに言った。
「ごめんね」
寂し気に俺を見るカリーネ。
「ん? 何でだ?」
「私がギルドマスターとかじゃなかったら、こんなことにはならないのに」
「ああ、俺もお前にいろいろ手を尽くしてもらってるからな。ちなみにダンジョンから直接ギルドマスターの部屋に戻ったから揉み消しお願いします」
俺はカリーネに頭を下げて依頼し、
「結局俺はカリーネと持ちつ持たれつだと思ってる。だから、カリーネが困ってるんなら気にせず俺に言えばいい。ちゃんとカリーネのために動くぞ?」
俺は笑いながら言った。
「ありがと……」
そう言うと俺の頬にカリーネがキスをする。
「じー」っと、飲酒軍団から視線が飛んだ。
「「「「「うらやましい(のです)」」」」」
成人女性の飲酒軍団が細い目をして言う。
「いいじゃない、たまにはスキンシップは必要でしょ?」
カリーネが胸を張って言う。大人だねぇ。
「私も入れて、今日は飲みたい気分なの」
そう言って、飲酒軍団の中に入る。ああ、カリーネも飲むのね。
んー、ここは離れたほうがいい気がする。
「エリス、髪が乾いたからアイナと寝てろ」
「うん」
エリスが頷く。
「アイナ、任せたぞ?」
「わかった、マサヨシも気を付けてね」
雰囲気を感じ心配するアイナ。
「おう、俺もさっさと風呂に入って寝るさ」
「わかった」
そう言うと、アイナとエリスは二人でアイナの部屋に向かった。
俺は火酒の小瓶をもう一本テーブルにそっと置く。
「俺風呂に入るから後は任せたよ」
と言って、風呂へ行った(逃げた)。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




