酒とかき氷、のち酒盛り
誤字脱字の指摘、ありがとうございます。
俺はリビングのソファーにもたれて高い天井を眺めていた。
「今日は飲むかな」
夕食時に冷えたエールを飲んだのだが、ちょっと物足りない。
俺の前にあるテーブルに収納カバンからロックグラス(と言っても俺が勝手に呼んでいるだけだが)と火酒の小瓶を出した。魔力で丸氷を作ってグラスに入れると火酒をグラスに注ぐ。トクトクという音とともに透明な火酒が氷の上を滑り落ちていった。
ふと見るとエリスが俺の前で不思議そうにグラスを見ている。
「火酒が珍しいか?」
「違うの、丸い氷を初めて見たの」
「だったら、こんなのはどうだい?」
俺は魔力を集中すると、粉雪のような細かな氷が現れ宙を舞う。その氷は明かりに照らされキラキラ光った。
「マサヨシさん綺麗……」
ふむ……。
「エリス、向こう行ってスプーンを貰ってくるといい。いいモノ作ってやるから」
俺は調理場を指す。
「うん」
エリスはスプーンを取りに調理場へ行った。
俺は火酒をチビリとやると収納カバンからもう一つグラスを出す。そして中に細かい氷をてんこ盛りに入れると蜂蜜をたっぷりかけた。
「んー、シロップが無いから仕方ないかなぁ。果実水って手もあるが、氷が溶けて薄まりそうだ。再考の余地ありだな。」
出来栄えに文句を言っていると、エリスがスプーンを持って帰ってきた。
「持ってきたよ」
「おう、これ食べてみな」
かき氷風なものをエリスに差し出す。
「氷と蜂蜜を掬うようにして食べれば冷たくて美味しいぞ……多分」
「多分って言うのは?」
エリスは首を傾げ聞いてきた。
「本当はシロップって言う甘い汁をかけるんだけど、蜂蜜で代用したからね。ちょっと不安なんだ」
「食べてみるね」
エリスがスプーンで氷を掬いシャクリと食べると
「あまーい! 冷たくて美味しい!」
「そりゃ良かった」
ホッとした俺はソファーに座ると再び飲み始めた。
そこにアイナが通りかかる。かき氷の入ったグラスを見て。
「何?」
と聞いてきた。
「かき氷だ、アイナも要るか?」
コクリと頷く。
「スプーン取ってきな」
アイナが調理場に行っている間にさっさとかき氷作った。
「ん、美味しい」
そう言うとアイナは無言で食べ始める。
火酒を飲む俺とその横でシャクシャクとかき氷を食べるエリスとアイナ。
「何々?」
俺たちの姿を見つけたクリスが不思議そうにリビングにやってくる。
「アイナ、何食べてるの?」
「マサヨシが作ってくれた冷たい奴」
「ちょっと頂戴」
「ん」
アイナがスプーンで氷を掬うとクリスに食べさせる。
「えっ何これ! 美味しい」
クリスの細い目が丸くなる。そして
「マサヨシぃ、私には?」
甘えたような声を出す。
「お前に作ったら、皆に作らなきゃいけなくなるだろ?」
「作ればいいじゃない……ね?もうみんな来てるんだから」
「「「はい」」」
マールはすでに入れ物とスプーンを準備している。
エリスとアイナで気づいたかな?
まあ、皆が集まっているのは気づいていたんだがね……。
「わかった、ちょっと待ってろ」
そう言うと俺はマールが準備した器に残りの人数分のかき氷を作った。
「主よ、これは美味しいのじゃ。じゃが我には火酒をちょっと垂らしてほしいのう。」
リードラがそう言っているので、小瓶から火酒を少し垂らす。
「我はこっちの方が好みじゃな」
そんなことをリードラと話していると。
「マサヨシ様、頭が痛いのです。キーンってします」
フィナが頭を押さえる。
「フィナ、それはかき氷を食べ過ぎたせいだ。少し待ってれば治る」
「ハイなのです」
定番の症状が出たようだ。
「私もリードラのように火酒を垂らしてもらおうかしら」
「マサヨシ様私も火酒が欲しいですね」
クリスとマールが火酒を欲しがる。
「面倒だからそっちでやってくれ」
と火酒が入った小瓶を渡した。
ん? マールはいそいそと調理場に向かいグラスを四つ取ってくる。
「氷ください」
と俺に丸氷を要求してきた。
「お前ら、それをかき氷にかけるんじゃなかったのか?」
フィナとリードラも懇願するように俺をじっと見る。
結局飲みたいのね……。
「ハイハイ、それ一本だけな」
そう言うと、グラスに丸氷を入れた。
成人女性たちの飲み会が始まる。
今は酔っていないが、後々面倒そうだな。
「アイナ、エリスを連れて風呂入って寝た方がいいかもな。今は静かだが後でうるさくなりそうだ」
「わかった。エリスとお風呂に入る」
「マサヨシさん、お風呂出たら髪を乾かしてくれる?」
エリスが聞いてきたので俺は、
「ああ、いいぞ」
と返す。
「やたっ」
と言って、エリスは嬉しいのか跳び跳ねた。その後
「行こっ」
「うん」
アイナとエリスは二人で風呂へ向かった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




