忘れてた訳じゃないぞ?
誤字脱字の指摘感謝です。
「クリス、こっちに来い」
「何?」
「契約しとかないとな。俺の奴隷になる言い訳作っとかないとオヤジさんに合わせる顔も無いだろ?」
「国王にオヤジって……。普通は言わないわよ? でも覚えててくれたんだ」
クリスは驚いたように答えた。
「そりゃな。妻にするって言ったし……」
「忘れているのかと思ってた」
「すまんね、遅くなった」
「覚えていたのならいいの」
ちょっと安心してもらえたかな?
久々に出す契約台。信号機たちの契約以来か……。
そして契約専用用紙を出し契約内容を書く。
「『俺がダンジョンを攻略したら奴隷になる』って契約書だ。同意してくれるか?」
「今更でしょ?」
そう言うとクリスが進み出て自分から契約台に手を置く。
「じゃあやるな」
俺が契約台に手を置き魔力を通すと、その上にある契約書が光る。
「ホイ、終了。これで俺がダンジョンをクリアすれば契約が実行される。晴れて悪者の俺がお前を奴隷にしたって証拠ができるわけだ」
「今と変わらないでしょ?」
「まあ、それはそうだがね、一歩進んだ感じがするだろ?」
「まっまあね」
お待たせしました。
「契約書は俺が持っておくな」
そう言うと収納カバンに契約書を入れた。
「一つ気になることがあるんだけど」
クリスがぼそりと言ってきた。
「ん? なんだ?」
「カリーネに指輪渡した?」
「渡してないけど……」
「なんで? 渡さないの?」
おっと怒られた。
「物はあるぞ? ただタイミングだよ、なかなかいいタイミングが無くてな」
「だったらいいの、気にしてたみたいだから」
「皆にあるものが無いのは気になるか……のけ者にしたつもりはないんだけどね。今日にでも渡しておくよ。気にしてくれてありがとうな」
「別にいいのよ、気になっただけだから」
なんだかんだと皆のことを気にするクリス。やっぱ、こん中では長女っぽいんだよな。
これもいいタイミングかね。クリスに言われたからってのも癪だが……。
「カリーネ、ちょっと来い」
周りに人が居なくなったのを確認してカリーネを呼んだ。
「ん? どうしたの?」
不思議そうな顔をしてカリーネがやってきた。
「ほい、これ」
防御の指輪を差し出す。
「えっ、これって……」
「渡してなかっただろ?」
「いいの? 貰っても」
「今更だろうに。手出せ」
俺は強引に左手を持った。さっと防御の指輪をつける。ピタッと嵌った。
「もっとムードを考えてほしいけど、これでもいいかな」
「悪い、俺はムードなんて考えられるほど器用ではない」
そこに何かが……って何だ?
エリスがタタタと俺たちに近寄って、カリーネを見てニーッと笑って、
「お母さま良かったね」
そう言うとササっと去った。
どこで覗いていたんだ?
「大人をからかって……」
そう言いながら嬉しそうに指輪を撫でるカリーネが居た。
もっと早く渡しときゃ良かったかな?
ここまで読んでいただきありがとうございました。




