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美人姉妹の意地

 リックはスケベな妖怪ハンターです。


 七体の悪魔のリーダー格のブリーザーが恐ろしい選択を迫りました。


 大きな葛篭つづらか、小さな葛篭か、選べと言うのです。


「違う! 全然違う!」


 話を根本的に取り違えている地の文に切れるブリーザーです。


 失礼しました。


 この場で凍りつくか、魔王の配下となって世界征服を手伝うか、選べと言うのです。


 いずれにしても、よくない未来が待っている予感がしたリックは、答えを出しかねていました。


 するとその時です。


「どちらも選ばぬ! 我らはお前達を倒し、前へ進むのみだ!」


 美人姉妹の姉のコーミが叫びました。


「よくぞ言った、コーミよ!」


 ベカサク帝国の皇帝でコーミの夫であるケスウヨリが涙ぐんで拍手をします。


「何!?」


 ブリーザー以下、七体の悪魔が一斉にコーミを睨みました。


(何て事言うにゃん、コーミしゃん!)


 逃げる算段をしていた元主役のリックは心の中で叫びました。


「元主役じゃないにゃん、現在も主役にゃん!」


 先読みした地の文に切れるリックです。


 逃げようとする主役はもはや主役ではないと思う地の文です。


「織田信長だって、何度も逃げているにゃん!」


 戦国の魔王と呼ばれた男の名を出して言い訳をするリックですが、リックがいた時代(七世紀頃)では、まだ信長は登場していないのは内緒です。


「内緒にしといて欲しいにゃん!」


 時々生真面目になる地の文に血の涙を流して抗議するリックです。


「お姉様の言う通り! 悪魔に従う道理はない!」


 妹のユーミはブリーザーを睨み返しました。


「ならば、其方そなた達の母と妹に死んでもらうまでだ」


 ブリーザーが狡猾な笑みを浮かべて言い放ちました。


「卑怯な!」


 コーミとユーミは歯軋りして悔しがりました。


「お待ちどう様」


 すると、大神官のサーギナが二人の女性を連れて現れました。


「母上、サーミ!」


 仰天するコーミとユーミです。


 目が点になる悪魔達です。

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