リック、助けられる
リックは古今無双のスケベな妖怪ハンターでした。
でも今は、只の役立たずなスケベです。
「うるさいにゃん!」
結界が張られた地下牢に閉じ込められたため、一切の術が使えないリックです。
この物語もこれでおしまいだと思う地の文です。
「ダメにゃん、僕がカッコよくここを脱出して、遊魔を華麗に助けて、めでたしめでたしで更に続くにゃん!」
閉所に長時間いたために妄想が酷くなったリックが逆上しました。
「ううう……」
絶望のあまり、地面に膝を着き、項垂れるリックです。その時でした。
「にゃあおん」
一匹の三毛猫がリックが閉じ込められている牢屋の前に来ました。
「おお!」
それに気づき、号泣するリックです。
「遊魔にゃんね? 助けに来てくれたにゃんね?」
鼻水まで垂らして感激するリックです。
(僕が長い間、結界の中に閉じ込められていて、遊魔に妖力が届かなくなったせいで、遊魔が元の三毛猫に戻ったにゃん)
遊魔の秘密を自分で解説してしまうリックです。作品としては失敗だと思う地の文です。
「自爆のような発言をしちゃダメにゃん!」
自虐ネタを放り込んできた地の文を諌めるリックです。
「遊魔、鍵を取ってきて欲しいにゃん! そうすれば、ここから出られるにゃん!」
リックは遊魔に言いました。
「にゃあ」
ところが、三毛猫は牢屋に近づいてきました。
「違うにゃん! 鍵は兵士の一人が持っているにゃん! 一番大きい奴だったにゃん! そいつから奪ってきて欲しいにゃん!」
必死に説明するリックですが、
「にゃあ」
三毛猫が牢屋の扉をあっさり開いたので、顎も外れんばかりに驚きました。
「か、鍵がかかっていなかったのかにゃん……?」
あまりの衝撃に固まるリックです。三毛猫は牢屋の中に入り、遊魔に戻りました。
「お前様、お会いしとうございました!」
遊魔は涙ぐんでリックに抱きつきました。
(今夜もハッスルするにゃん)
ニヤけるリックです。




