悲しき戦い
リックはスケベな妖怪ハンターです。
コーミとユーミの美人姉妹は、まさに戦いを始めようとしていました。
「さあ、仕掛けて来なさい、ユーミ。貴女の手口は全て知り尽くしているのだから」
コーミは余裕の笑みで挑発しましたが、
「それはお互い様よ、お姉様」
ユーミも負けずに言い返します。そして、
「でも、お姉様はジュカブ様を裏切ったから、ジュカブ様のご加護は受けていない。だから、私が勝つ!」
妖気を身体中から噴き出し、増幅しました。
「ユーミ……」
コーミはそれを悲しそうに見ていましたが、
「魔族の加護など何の役にも立たないという事を教えて上げるわ!」
呪文を唱え始めました。
「小賢しい! ジュカブ様に忠誠を誓う前に付け焼き刃で得た光の呪文など、私の妖気の前では意味をなさないわ、お姉様!」
ユーミの妖気はまるで粘土のように厚みを増し、禍々しさを強くしました。
(ユーミ、この一撃で昔の貴女を取り戻して!)
コーミは祈るように目を閉じ、光の呪文を放ちました。
「ホーリーブレス!」
すると光のカーテンがユーミに迫りました。
「笑止!」
ユーミはせせら笑って何もしません。光のカーテンはユーミの直前まで進みましたが、突如として現れた幾人ものジュカブの幻影がそれを消滅させました。
「そんな……」
コーミは呪文を弾かれた事よりも、ユーミが予想以上にジュカブに取り込まれている事に衝撃を受けました。
スタスタ歩いていた美人幼妻の遊魔が突然立ち止まり、振り返りました。
「ど、どうしたにゃん、遊魔?」
ギクッとして恐る恐る尋ねるリックです。すると遊魔はフッと笑い、
「安心致せ、我じゃ」
遊魔に取り憑いている猫神の魔遊が表に出て来ました。
「魔遊しゃん、会いたかったにゃん!」
大喜びするリックですが、魔遊は真顔で、
「コーミが危うい。しばし戻ろうかの」
リックはハッとしました。




