魔王ジュカブの罠
リックはスケベな妖怪ハンターです。
銀髪の美女のテンコに大見得を切って出発したリックですが、勝算がありません。
(どうすればいいにゃん?)
顔を引きつらせて遥か彼方に見える真っ黒な壁の巨大な城を見上げるリックです。
(今から道を戻って、遊魔達の到着を待てばいいにゃん)
早速ズルを決め込み、振り返るリックですが、
「お気をつけて!」
テンコが笑顔で手を振っているのを見て、慌てて手を振り返し、また道を進み始めました。
(ダメにゃん、もう戻れないにゃん。行くしかないにゃん!)
またテンコとテンコの姉との三人のあんな事やそんな事を妄想し、嫌らしい顔になるリックです。
そうしていないと頭がおかしくなりそうなのです。
元々おかしいのは言わない事にした地の文です。
「僕はおかしくないにゃん!」
リックは地の文に切れました。
リックが城に向かっているのを魔王ジュカブは配下の者達からの情報で知りました。
「余は豚ではないぞ!」
何も言っていない地の文に過敏に反応してしまうジュカブです。
実は豚に失礼だろうと言うくらい太っているのは内緒です。
「うるさい!」
地の文がこそっと言った言葉すら聞き漏らさない自意識過剰のジュカブです。
「あの猫の弱点はすでに把握している。早く来い、愚か者め」
ジュカブは誰も聞いていないのに言いました。危ないと思う地の文です。
「更にうるさい!」
正当な事を言っただけの地の文に切れるジュカブです。
(お前が向かっている館は、お前にとっては罠そのものよ。存分に我が魔力を思い知るがいい、猫め)
ジュカブはニヤリとしました。そして、
「もう一人の愚か者は捕えたか?」
傍らに跪いている美女に尋ねました。
「はい。いつでもお仕置きできます、陛下」
その美女は切れ長の目を細めて応じました。ジュカブはチラッと美女を見て、
「それは楽しみだよ、ユーミ」
高笑いをしました。




