卑怯者のザース
リックはスケベな妖怪ハンターです。
でも、もうすぐ降板だと思う地の文です。
「やめて欲しいにゃん!」
全力全開で地の文に懇願するリックです。
しかし、地の文にはそんな権限はないのです。
「どういう事にゃん!?」
支離滅裂な地の文に切れるリックです。
リックの前説が終わったところで、続きです。
イナガンヒ王国の宰相であるザースは、本当は豚の配下です。
『何度も言わせるな! 余は豚ではない! 魔王ジュカブだ!』
どこかで律儀に切れるジュカブです。本当は優しい豚のようです。
『だから豚ではない!』
更に切れるジュカブです。でも、モデルはいないと念押ししておく地の文です。
「どこまでも惚けた女子だ。だが、もし私の申し出を拒絶するのであれば、コーミの家族がどうなるかわからぬぞ?」
ザースはニヤリとして告げました。ベカサク帝国の皇妃で、元魔王の配下のコーミは蒼ざめました。
「そんな……」
コーミはすがるような目でサーギナを見ました。
「脅しは通用しないよ」
いきなりまともな発言をしたサーギナを驚いて見る美人幼妻の遊魔に取り憑いている猫神の魔遊です。
(この女子、全く理解不能だ……)
嫌な汗が出る魔遊です。
「何だと? 脅しではないぞ! 言う事を聞かなければ、家族の命はないという事だ」
ザースは一瞬ビビりましたが、すぐに言い返しました。サーギナは、
「強がり言ってもダメだって」
肩を竦めて言いました。ザースはムッとして、
「強がりではない! 本当に命はないのだぞ!」
サーギナは目を細めてザースを見ると、
「あんたの言ってる事、論理が破綻してるよ」
「はあ!?」
ザースと魔遊は異口同音に叫びました。
「家族を殺したりしたら、コーミさんは言う事を絶対に聞かないでしょ? だったら、殺せないじゃない」
サーギナの反論にギョッとするザースです。
(全くの正論だ)
苦笑いする魔遊です。




