リック、決断する
リックはスケベな妖怪ハンターです。
岩山に減り込んだリックを助けてくれたのは、銀髪の美女でした。
リックはすぐにその美女に惚れてしまいました。
早速、美人幼妻の遊魔に報告しようと思う地の文です。
「余計な事はしなくていいにゃん!」
揉め事が見たくて仕方がない地の文に切れるリックです。
「あの、手を放していただけませんか? 食事をお持ちしたいので」
銀髪の美女は顔を引きつらせて言いました。
「はいにゃん」
リックはスッと手を引っ込めました。
「僕はリック。貴女は?」
リックは今世紀最高の気取り顔になって尋ねました。美女は食事を載せたトレイを運んで来て、
「私はテンコと申します」
微笑んで言いました。
「え?」
リックはその名を聞いた途端、嫌な過去を思い出しました。
(凄く怖い狐のお姉さんと同じ名前にゃん)
リックは以前の旅で「天狐」という千里眼を持つ狐と会った事があるのです。
背中を冷たい汗が流れるのを感じるリックです。
「リックさんはどうしてこの最果ての大陸にいらしたのですか?」
テンコが尋ねました。リックは目を見開いて、
「ここは最果ての大陸にゃんですか?」
テンコは悲しそうな顔になり、
「はい。元は楽園のようなところでしたが、魔王ジュカブがやって来て、男達は奴隷として連れて行かれ、女達はジュカブの側室として拘束されました」
「にゃんですと!?」
魔王が羨ましいと思ってしまう外道なリックです。
「そんな事、思ってないにゃん!」
地の文の的を射た突っ込みに動揺が隠し切れないリックです。
「テンコさんはどうして大丈夫なんですか?」
リックが尋ねました。するとテンコはもっと悲しそうな顔になり、
「姉さんが私を庇って、連れて行かれたのです……」
泣き出してしまいました。リックはトレイを脇にどけて立ち上がり、
「僕に任せておくにゃん! 魔王なんて、退治してやるにゃん!」
やる気満々のスケベです。




