リック、一足先に旅を進める
リックはスケベな妖怪ハンターです。
行動が全く読めない賢者になったらしいサーギナの突然のボディアタックにより、リックの身体は宙を舞い、大きな放物線を描いて落下しました。
(このまま地面に落ちたら確実に死ぬにゃん!)
リックは迫り来るゴツゴツとした岩山を見て想像しました。
それ以前に、そんな凄い距離を飛ばされる程の力で跳ね飛ばされたら、その時点で即死していると思う地の文です。
「そういう事は言ったらダメなんだにゃん!」
物語の性質上の演出を揶揄した地の文に抗議するリックです。
確かに、物理学的な事をあれこれ言い出すと、リックは何度死んでいるかわかりませんね。
「そうにゃん、このお話はもっとユルっと考えないといけないにゃん」
そんな余裕をかましていたせいで、リックは岩山に激突しました。
「ミギャー!」
雄叫びを上げて、岩山に減り込むリックです。
「何やら、嫌な予感がするぞ」
再び、美人幼妻の遊魔と入れ替わった猫神の魔遊が呟きました。
「え? 洋館なんて、どこにも見えないけど?」
呑気なサーギナが辺りを見渡して言いました。
「其方には悩みがなさそうで羨ましいぞ」
半目になって告げる魔遊ですが、
「私にだって、悩みくらいあるよ」
サーギナが口を尖らせて言いました。
「ほお、どんな悩みぞ?」
魔遊は意外に思って尋ねました。するとサーギナは、
「今日のお昼ごはんは何にすればいいかな、とかさ」
魔遊は、
(訊かなければよかった)
心の底からそう思いました。
リックはフカフカなベッドの上で目を覚ましました。
「気がつきましたか?」
リックはボンヤリする目で声の主を見ました。
「おお!」
それは銀色の髪を長く伸ばし、真っ白な毛皮のコートを着た美しい女性でした。
「貴女が僕を助けてくれたのですね?」
ムクッと起き上がり、女性の手を握りしめるリックです。
「あ、はい」
女性は顔を引きつらせました。




