非道な魔王ジュカブ
リックはスケベな妖怪ハンターです。
掟破りのサーギナの攻撃に尻尾を巻いて逃げ出したモンスター軍団の団長は、軍団の者達に合わせる顔がないので、そのまま、自分の生まれ故郷の最果ての村に向かいました。
最果ての村は、リック達が向かっている最果ての大陸のちょうど真逆に位置しています。
最果ての大陸は永久凍土が覆い尽くす寒い大陸ですが、最果ての村は、貧しいモンスター達が肩を寄せ合って暮らしている懐が寒い場所です。
このお話には似合わない重い現実が待っている団長です。
(母ちゃん、元気かな?)
目を潤ませて走る団長です。ところがその時、
『おおねずみよ、其方は何処へ向かうつもりか?』
しばらくぶりに豚の声が聞こえたと思う地の文です。
『余は魔王ジュカブだ! 豚ではない!』
地の文の鉄板ボケに切れる心が狭い豚です。
『だから、豚ではない!』
更に切れるジュカブです。
「ひい、魔王様!」
団長は恐ろしさのあまり腰を抜かしてしまいました。
でも、リックのように漏らしたりはしませんでした。
「そこで僕を引き合いに出さないで欲しいにゃん!」
再び最果ての大陸に向かい始めたリックが、弱みに付け込むのを生きがいにしている地の文に切れました。
『おおねずみよ、裏切り者の末路は存じておろうな?』
ジュカブが言いました。団長の顔色が当社比三倍に蒼くなりました。
「どうかお許しを!」
団長は土下座をして懇願しました。しかし、ジュカブは、
『ならん! 其方を絶望の淵に追い落としてくれる』
「ひい!」
天から突然雷が落ち、団長を直撃しました。哀れ団長は感電死したのでした。
『違う! そのような生温い罰ですますほど、余は優しくない!』
ジュカブは先走った地の文に抗議しました。
「にゃあ」
団長は猫にされてしまいました。
『ねずみの天敵の猫となって生涯暮らすがいい!』
確かに酷い罰だと思う地の文です。




