サリア、切れる
リックはスケベな妖怪ハンターです。
敵のモンスターのサリアが実は男なのを見抜いたリックは、容赦のない炎の攻撃で彼女(?)を燃やしました。
「あんたを八つ裂きにする前に訊いておきたい事があるわ」
サリアはドスの利いた声で言いました。
まるで、は○な愛みたいだと思う地の文です。リックはフッと笑い、
「お前が顔を近づけた時にゃん」
「顔を近づけた時?」
サリアは眉をひそめました。リックは、
「加齢臭が漂って来たんだにゃん。あれは中年のおっさんの臭いだったにゃん」
鼻を摘んで顔をしかめました。
「何ですって!?」
サリアは目を吊り上げ、口と鼻から加齢臭を放って激怒しました。
「加齢臭じゃねえよ、妖気だよ!」
適当な描写をした地の文に切れるおっさんです。
「私は乙女よ!」
中途半端に可愛い声で抗議するサリアです。
「許さない! 純情な乙女の心を傷つけたお前を許さない! 八つ裂きにして、地獄の番犬のエサにしてやるわ!」
サリアは更にヒートアップして怒鳴り散らしました。声はすっかりおっさんです。
「地獄の番犬なんて、怖くないにゃん!」
リックは言い返しました。リックが一番怖いのは美人幼妻の遊魔です。
「そんな事ないにゃん! 嘘はいけないにゃん!」
尋常ではない程動揺し、身体から水分がなくなってしまうくらい汗を噴き出すリックです。
「そうなんですかあ」
でも、まだサリアの術が解けていない遊魔は笑顔全開です。ホッとするリックです。
「安心しな、あんたの奥方も一緒にエサになるんだからね」
サリアは目を血走らせて言い放ちました。そして、けたたましい鳴き声を出しました。
「な、何にゃん?」
あまりにも大音量なので、リックは耳を塞ぎました。
「あれえ、お空が真っ暗になったよ」
呑気な魔法使いのサーギナが笑いながら言いました。
「え?」
リックが上を見ると、一面を覆い尽くす程のインコが飛来していました。
蒼ざめるリックです。




