リック、最果ての大陸に旅立つ
リックはスケベな妖怪ハンターです。
豚の居場所がわかったので、いよいよ出発です。
「余は豚ではない! 魔王ジュカブだ!」
どこかで地の文に切れるジュカブです。
「私は同行はできぬが、これをお持ちくだされ」
皇帝ケスウヨリが、たくさんの魔法のお札をリックに手渡しました。
「我が国には高名な魔法使いがたくさんいるのです。その者達が作ってくれた呪符です。これを使えば、最果ての大陸にいるモンスターもそれほど難儀せずに倒せましょう」
不吉な事を笑顔で告げる皇帝にリックは顔を引きつらせて、
「そうにゃんですか」
某お師匠様の口癖で応じました。
「おお、そうだ」
皇帝はわざとらしい仕草でポンと手を叩き、
「魔法使いの中に、同行してくれる者があります。その者と合流して行けば、まさに河童の川流れ」
ちょっと間違った諺をぶち込んで来ました。ますます気が重くなるリックです。
「その魔法使いはどこにいるにゃん?」
役に立たない予感がするリックですが、一応苦笑いして尋ねました。
「この城から北へ三百ケスウヨリ進んだ森の中です」
「三百ケスウヨリ?」
聞き慣れないようでそうでもない単位に首を傾げるリックです。
「私の身長の三百倍です」
何故か誇らしそうに告げる皇帝です。
「なるほど」
更に苦笑いするリックです。ケスウヨリはリックに近づき、
「これは遊魔様にも魔遊にも内緒ですが、美人でスタイル抜群ですぞ」
「おお!」
俄然、会う気満々になるスケベです。遊魔に教えましょう。
「やめて欲しいにゃん!」
チクり魔の地の文に切れるリックです。
「名前は何て言うにゃん?」
リックは鼻の下を顎の下まで伸ばして尋ねました。皇帝はニヤッとし、
「リージュです」
「え?」
何となく嫌な予感がしてしまうリックです。
(どこかで聞いた事がありそうな気がするにゃんけど、きっと僕の思い過ごしにゃん)
嫌な汗を掻くリックです。




