リリー逃亡
リックはスケベな妖怪ハンターです。
紅蓮の炎を身に纏ったリックは、お姫様抱っこをしていた遊魔をゆっくりと地面に寝かせると、
「僕は女の子と戦いたくはないにゃんけど、お前だけは許せないにゃん、リリー」
いつになく冷たい目をしたリックです。気持ち悪くて背筋がゾッとしてしまった地の文です。
「うるさいにゃん!」
一世一代の名台詞を言ったのに、あっさりケチをつける地の文に切れるリックです。
「は、随分と上から言ってくれるね、リック? あたいを許さないって? 笑わせてくれるね!」
リリーは鬼の形相になり、次々に小振りな氷柱を作り出し、リックに放ちました。
「無駄にゃん、リリー」
リックの周りの炎がリックを守るように広がり、氷柱を全て溶かしてしまいました。
「これならどうだい!?」
リリーはリックの頭上から何千年も齢を重ねた大木のような太さの氷柱を落下させました。
「うお!」
リックがその氷柱の下敷きになったので、皇帝のケスウヨリが叫びました。
それに対して、皇妃のコーミはニヤリとほくそ笑みました。
「やった!」
イナガンヒ王国の国王であるネールはガッツポーズをしました。
「あははは、呆気なさ過ぎるよ、リック。もうちょっと粘ってほしかったかなあ」
リリーは腹を抱えて笑っていましたが、氷柱が下から見る見るうちに溶け出して、蒸発していくのに気づき、顔を引きつらせました。
「残念にゃん、リリー。僕の勝ちにゃん」
蒸発した氷柱の向こうから姿を見せたリックがそう言った時、
「おねいさーん!」
遊魔の胸当ての中からたくさんの子猫が飛び出しました。
「ひい!」
リリーは子猫に飛びつかれ、銀色の装束を剥ぎ取られて丸裸にされた上、表現できない事をされました。
「ぬおお!」
それを見て、色めき立つ皇帝と国王です。
「覚えていろ!」
手垢のついた捨て台詞を吐き、リリーは消えました。




