追いつめられたリック
リックはスケベな妖怪ハンターです。
巨大な氷柱に囲まれたリックと美人幼妻の遊魔は急激に下がる気温に身体が凍てつきそうです。
「み、水使いじゃ、な、なかったのか、にゃん?」
震えながら呟くリックです。するとそれを聞きつけたリリーは高笑いをして、
「バカな男だね、あんたは。水使いは水蒸気から氷までを扱えるんだよ。あんたみたいに、バカの一つ覚えの炎使いとは格が違うのさ」
「ううう!」
悔しくて仕方がないリックですが、あまりの寒さに術が使えません。
そんなリックを気遣って、遊魔が更にギュッとリックに抱きつきました。
「遊魔……」
遊魔の優しさに ジンとしたリックは、目を潤ませました。
「お前様はお強い方です。頑張ってください」
遊魔はそう言うと、リックに口づけしました。
「にゃん!」
リックはびっくりして目を見開きました。
「遊魔、僕は頑張るにゃん」
遊魔の口づけで身体に暖かさが戻って来たリックは、全力全開で炎を生み出しました。
「無駄さ。あんたの周囲の空気も全部凍らせてやるよ!」
リリーが妖力を強め、氷柱を太くしたので、リックと遊魔は氷と直接肌が触れ合ってしまいました。
「ふひい!」
リックはその冷たさに集中力が途切れ、炎が消えました。
「お前様……」
遊魔も寒さに堪え切れなくなり、眠ってしまいました。
「遊魔、ダメにゃん、眠っちゃ死んじゃうにゃん!」
リックは必死に遊魔を揺り動かしましたが、遊魔は目を覚ましません。
「そのまま、凍りついちまいな、おバカさん!」
リリーが狡猾な笑みを浮かべて言い放ちました。
「遊魔ー!」
リックの雄叫びが辺りに木霊しました。
「逝ったか?」
リリーがニヤリとした時でした。
氷柱が一瞬にして溶け、その向こうから、炎を身に纏い、遊魔をお姫様抱っこしたリックが現れました。
リリーは呆気に取られました。
「今度は僕の番にゃん、リリー」
リックはリリーを睨みつけました。




