敵の名はリリー
リックはスケベな妖怪ハンターです。
ベカサク軍とイナガンヒ軍が放った矢を紅蓮の炎で焼き尽くそうとしたリックでしたが、それを阻んだ者がいました。
「おおお!」
思わず身を乗り出すリックです。
「お待ちィ」
現れたのは、銀色の装束を着た美女です。しかも、毛並みや顔つきから、猫族のようです。
「おおお!」
更にその上、巨乳で、ウエストは締まり、お尻はプリンプリンしています。
「むうう」
美人幼妻の遊魔は、リックのだらしない顔を見て頬を膨らませました。
「は!」
リックは遊魔の「異変」に気づき、素早く顔を引き締めました。
「あんたが炎使いかい? 結構いい男だねえ。私とイイコトしない?」
いきなりリックを誘惑して来る美女です。遊魔はますます剥れました。
「ぼ、僕をたらし込もうとしても無駄にゃん。僕には愛する妻がいるにゃん」
これ以上はないというくらいの棒読みで告げるリックです。
某元総理の孫もびっくりするくらい下手な台詞読みだと思う地の文です。
「確かにいい女だな」
皇帝ケスウヨリは不用意な事を呟き、皇妃のコーミに肘鉄を食らいました。
「私は猫神様の方が好きだ」
妙なところで自分をアピールする国王ネールです。
「強がり言ってもダメだよ、お兄さん。あたいの名はリリー。あんたの隣にいるお子ちゃまより、ずっといい仕事するわよん」
「い、いい仕事?」
リックはビクッとしました。
(しかも、リリーって、ある人と名前が似ているにゃん……)
リックは某お師匠様のお姉さんを思い出しました。
「お前様!」
遊魔が怒りに任せて、リックの二の腕を抓りました。
「痛いにゃん!」
リックが涙ぐんで遊魔を見ると、遊魔も目を潤ませています。
「ごめんにゃん、遊魔」
リックは真顔になりました。
「リリーしゃん、悪いけど、君が遊魔よりいい仕事をするとは思えないにゃん。だから、僕を誘惑しても無駄にゃん」
大見得を切るリックです。




