強敵現れる
リックはスケベな妖怪ハンターです。
作戦を台無しにされた皇妃のコーミとイナガンヒ王国の国王のネールは、意思疎通はしていませんが、同じ事を考えていました。
「あの小癪な猫に全ての矢を射かけよ!」
両軍の弓矢が一斉にリックに向けられました。
「お前様、狙われているみたいですよ」
遊魔が言いました。ところがリックは、
「平気にゃん。僕の紅蓮の炎の前には、弓矢なんて、何の役にも立たないにゃん」
すでに天狗も裸足で逃げ出す程の鼻高ぶりです。
痛い目に遭った方がいいと思う地の文です。
「うるさいにゃん!」
率直な意見を言っただけの地の文に切れるリックです。
「放てー!」
コーミとネールが異口同音に叫びました。雨のような数の矢がリックと遊魔に向かいました。
「燃え尽きるにゃん!」
リックは再び業火を繰り出し、襲いかかる矢を次々に焼失させました。
「おのれー!」
コーミとネールは申し合わせたように同時に地団駄を踏みました。
『コーミよ、今、そちらに頼もしい味方が向かっておる。後は其奴に任せよ』
豚の鳴き声が聞こえました。
『誰が豚じゃ! 余は魔王ジュカブじゃ!』
地の文のボケに突っ込む魔王です。ああ、メカブでしたっけ?
『違う! ジュカブじゃ!』
更にボケる地の文に的確に突っ込むジュカブです。
「もう一度放て!」
コーミとネールは三たび矢を射かけました。
「無駄にゃん!」
リックはフッと笑って紅蓮の炎を出しました。
「そうはいかないね!」
素っ頓狂な声が聞こえ、滝のような水が天から降り注ぎ、炎を消しました。
「わわわ!」
そのせいで燃えなかった矢がリックに降り注ぎました。
「お前様!」
遊魔はリックを楯にして矢をかわしました。
「誰にゃん、邪魔をしたのは!?」
リックが叫びました。すると、不意に銀色の装束を身に纏った女が現れました。
(いい女にゃん)
こんな時にもスケベなリックです。




