リック、活躍する
リックはスケベな妖怪ハンターです。
皇妃のコーミが実は豚の配下なのを知っている皇帝ケスウヨリは、一計を案じ、リックと美人幼妻の遊魔を城の外に出しました。
「誰が豚だ! 余は魔王ジュカブだ!」
太り過ぎの魔王がどこかで叫びました。無視する地の文です。
この展開に驚愕したのは、コーミとイナガンヒ王国の国王であるネールです。
ケスウヨリがリックを匿ったままで抵抗し、一気に開戦という誰もそんな見え透いた手には乗らないぞ的な作戦を呆気なく打ち砕かれたからです。
「何をしているのです、陛下!? 猫神様を引き渡したりしたら、イナガンヒ王国の思う壷ですよ」
焦ったコーミは鬼の形相で皇帝に詰め寄りました。
「いや、あれは猫神ではないぞ、コーミよ」
かつて、猫神の魔遊とあんな事やそんな事を飽きる程した事がある皇帝は言いました。
「そういう事はここで言わんでくれ!」
何でも話してしまう某茨城県出身の芸能人のように口が軽い地の文に抗議するケスウヨリです。
「ええい、何をしている! イナガンヒ王国の領土侵略の意図は明白! 矢を射かけよ!」
コーミが独断で兵達に命令しました。
「ははー!」
コーミの呪術である「魅了」をかけられた兵達は言われるがままに矢を放ちました。
「あわわ!」
台の上にいたネールは転げ落ちるように逃げ、
「射返せ!」
こうして、双方が弓矢で戦い始めてしまいました。
「お前様、何とかしてください」
遊魔がリックに言いました。するとリックはフッと笑い、
「勇者は最後に力を発揮するものにゃんよ、遊魔。見ているにゃん!」
得意の炎の術で、飛び交う矢を全て焼き尽くしてしまいました。
「素敵です、お前様」
遊魔が目をキラキラさせてリックを見ています。リックは胸を張り、
「ザッとこんなもんにゃん」
ドヤ顔になりました。
(おのれ、猫風情が!)
コーミとネールは歯軋りしました。




